草原の町アイモーゼン②
ここは、領土が獣人の国と面していることもあって、頭にふさふさの耳、お尻には長いしっぽを生やした獣人たちが多い印象だ。
それに何かの作業でもしているのだろうか?
つなぎ姿の人達も居る。
建ち並ぶお店や住居は、とんがり帽子のような屋根をした赤煉瓦の建物だ。
町に入って、数分くらいだと思う。
見たことのない建物に目を奪われながらも、宿屋のある大通りへと向かっていると、噴水が見えてきた。
って、あれはなんだろう?
普通の噴水とは違って、神々しい真紅色をした羽の生えた魔物? の像がその真ん中で佇んでいた。
広大に広がる山々のバックにド派手な真紅色をした羽の生えた魔物の像。
一体どんなセンスの人がこの像を置いたのだろう。
正直、違和感しかない。
いや、むしろ浮いている。
「なんじゃ? あれが気になるのか?」
「いや、だって……あの魔物この場所に溶け込んでないよ?」
「ガハハハッ! それはそうじゃな! 違いない!!」
「でしょ? 誰かわかんないけど、あんなのを置くのはよくないと思う」
「ふふ、そうじゃな! じゃが、あれは魔物ではなくてはな――」
その指摘を聞いたじいちゃんは、お腹を抱えながら、町の景観を損なっている像について解説してくれた。
じいちゃんが言うには、遥か昔、町の後ろにある山々に燃え上がるような、赤い体をした不死鳥フェニックスという神獣が住んでいたという逸話があったようだ。
それを真に受けたシュタイナー公爵が、自分の家の家紋にしたらしい。
その上、町で一番目のつく噴水のど真ん中に、神々しく輝く真紅の像を設置したらしい。
なんというか、そんなことで自分の家紋を決めるなんて物好きな貴族の人もいたものだ。
きっと変わった人に違いない。
だけど、そんなことよりも気になることがあった。
それは、この町に入ってからずっと漂ってくる独特の香りだ。
これがじいちゃんの言っていた名物に違いない。
香りが流れてくる方に目を向ける。
なるほど……あっちに街の大通りがあるのか。
どうりでいい匂いが漂ってくるわけだ。
ん? なんだろう? 獣人の人たちが並んでいる。
「すごくいい匂いがする……」
僕は無意識に、その匂いを鼻で嗅いでいた。
それにじいちゃんが気付き「ニヤリ」と口角を上げながら見つめてくる。
「ふふっ、いい匂いじゃろー!」
「う、うん。いい匂いだね……」
「ん? なんじゃ? 匂いを嗅いでいたのがバレて恥ずかしがっておるのか?」
「い、いや……まぁ……その……うん」
「ガハハハッ! 大丈夫じゃ! あの匂いを前にしては縄張り争いをしている魔物ですら、その諍いを止めるとも言うくらいじゃ!」
「えっ!? そうなの?」
「ああ、じゃから細かいことは気にせず食いにいくぞ!」
じいちゃんは、恥ずかしがる僕の手を引き街の大通りに向かった。
☆☆☆
街中を進むこと五分ほど経っただろうか?
僕とじいちゃんは大通りを歩いていた。
お店へ近づくほどに実感する。
とんでもなくいい匂いだ。
じいちゃんの言う通り、縄張り争いをする魔物ですらその諍いを止めると言うのも納得できる。
この先にある食べ物は間違いなく美味しい。
でも、同時に思った。
シトリンゴートとは一体何なのだろうか?と。
いや、間違いなく魔物だとは思う。
だけど、もしそうなら――。
じいちゃんと一緒に獲るよくわからない緑色のしているヌルヌルした美味しくない魔物の肉という前例もある。
なので、この匂いだけでは判断はつかない。
あの魔物も焼いている時は、いい匂いがするんだよね。
念の為に聞こう。
「じいちゃん、そういえばシトリンゴートってなに?」
「ああ、シトリンゴートって言うのはじゃな、この土地特有の魔物でな――」
と言うと、じいちゃんはシトリンゴートについて教えてくれた。
じいちゃん曰く、この町は山が近いということもあり、シトリンゴートという山岳地帯のみ生息している魔物がいるようだ。
姿はもこもこした毛皮、決して当たっても、痛くない丸みを帯びた頭の両側から生える角があって、額には薄い黄色い魔石が輝いて、討伐する難易度Fランクと低い。
それに毛皮は衣服に、角は装飾品として加工できる。
だから、素材として買い取ってくれる部分が多いので、冒険者界隈では人気を博しているとのことだ。
それに何と言っても、その身は食すのに適していてとても柔らかいらしい。
ただシトリンゴートの主食が薬草な為、少し独特のニオイがあるようだ。
でも、それがこの町のもう一つの特産品である風味豊かな岩塩(町の裏にそびえる山々から採れる)と合わせると抜群に美味しくなるみたい。




