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意外な繋がり

「あれ、舞翔まいとくんお出かけ?」


「うん、水萌みなもを迎えに行こうとしてたんだけど……」


 朝から可愛いレンを補給して、母さんの作る朝ごはんを食べた。


 そして水萌を連れて父さんのお墓参りに行こうと思って外に出ると、ちょうど水萌が居て、隣になぜか花宮はなみやも居た。


「まーくんおはよ」


「おはよう。なんで花宮も居るの?」


「言い方が酷い」


「訂正。どした?」


「あんまり変わってないけどいいや。森谷もりやさんがまーくんのおうちに行くって言ってたからついて来ちゃった」


 花宮が満面の笑みで答える。


 確かにこれは男だとわからなければ意識するかもしれない。


「浮気か?」


「花宮は……そっか」


 隣のレンがすごいジト目で睨んでくるが、レンはまだ花宮が男だということを知らないはずだ。


 ちょっと面白そうだから花宮が男だというのは隠しておくことにした。


「嫉妬した?」


「別に。サキは女友達が多すぎるだけで、そういう好きはオレと水萌にしかないの知ってるから」


「水萌にはいいんだ。それよりなんでサキ?」


 さっきは俺のことを『舞翔』と呼んでくれた。


 恋人になれたから呼び方を変えてくれたのかと思って喜んでいたけど、サキに戻ってしまった。


「さっきのは特別。それと別に水萌はいいわけでもないから」


「じゃあ俺が呼び方変える?」


「やだ。名前を嫌う理由が無くなったけど、サキには『レン』って呼んで欲しい」


「レンがそうして欲しいならそうする。でも呼び方変えたくなったら言ってね」


「気が向いたらな」


 レンがチラッと俺の方を見て、すぐに反対側を向く。


 水萌もだけど、やることがいちいち可愛いのは習性なのか。


「ところ構わずなんだね」


「二人だけだともっとだよ」


「森谷さんとまーくんみたいな?」


「私とは比べものにならないよ。多分だけど恋火れんかちゃんは昨日の夜に何かしたよ」


「何かって?」


「大人の階段を上ったんだよ……」


 水萌がどこか寂しそうに言うと、それを聞いた花宮が一気に顔を赤くする。


 多分あれは吹き込まれた。


 奴に。


「だから花宮と居るの?」


「なんのことかなー」


「わかりやすい嘘を。だけど水萌が文月ふみつきさんを頼るなんてどうしたの?」


「色々とあるのです。勘違いされないように言っておくけど、私は舞翔くんと恋火ちゃんを引き裂くつもりはないからね? ただ、二人がもしも別れちゃったら仲を取り持つこともしない」


 水萌が決意を固めた目で俺とレンに言う。


 要は俺とレンの関係の邪魔はしないけど、もしも俺達が自然崩壊したら修復せずに片方に付くということ。


 そして花宮は文月さんとの連絡係に使われたようだ。


「オレはそれでいいと思う。水萌に邪魔されたら普通にサキを奪われそうだし」


「だから俺はどんだけ信用ないんだよ」


「サキの信用っていうか、水萌が怖いってだけ。サキは絶対に浮気はしないんだろうけどさ、水萌にドキッとすることはあるわけで、それ自体は責められないじゃん。気持ちはわかるし」


 レンの言いたいことはわかる。


 俺と水萌もレンの可愛すぎる反応で二人して撃ち抜かれたことがある。


 レンも顔に出さないだけで俺と同じ気持ちになっているのかもしれない。


「だからオレは安心した。オレがサキに嫌われない限りは別れることがないわけだし」


「嫌うなんてないだろ」


「可能性の話。いざ付き合ってみたらなんか違うっていうのはよくある話だから」


「そうなんだ」


「まあオレも詳しく知らないけど」


 友達ならいいけど、恋人になると違うとはどういう感覚なのか。


 むしろ友達でもない相手といきなり付き合う方が『違う』と思いそうなものだけど。


「私達の場合はお互いのことをいっぱい知ってるからね」


「じゃあ大丈夫じゃん」


「そういう慢心が危ないんだよ」


「水萌はどっちの味方なの?」


「私はただ注意喚起してるだけだもん!」


 水萌がほっぺたを膨らませて拗ねたように言う。


 確かにそうなんだけど、文月さんの顔がチラつくせいか気になってしまう。


「ほんとに仲良いよね。それで、まーくんはなんで森谷さんを迎えに行こうとしてたの?」


「また本題を忘れてた。今日さ、俺の父さんの命日でお墓参り行くんだけど一緒に行くかなって」


 俺が聞くと、水萌と花宮が固まってしまった。


「サキ、いきなり話を重くするな」


「軽く話したつもりなんだけど」


「話し方が軽くても内容が重くちゃ意味無いだろ」


 レンにデコピンをされた。


 痛くはないけど反省はした。


「ごめん。だけどどう訂正すればいいのかわからない」


「実際、サキが当事者で一番辛いんだからサキが気にしてないようにしてるのにオレ達が気にしたらサキが気にするよな」


「そ、そうだよね。いきなりでびっくりしちゃって」


「うん、まーくんのお父さんとは一回しか会ってないけど、とっても優しくしてもらったし」


「え?」


 花宮の発言に今度は俺が固まる。


「まーくん?」


「父さんと会ったことあるの?」


「あるよ? 一回だけまーくんがお父さんと一緒にあの公園に来たから」


 花宮に嘘をついてる感じはないから真実なのだろう。


 母さんも俺が父さんと公園に行ってたと言っていたけど、全然思い出せない。


「それなら偶然にも全員サキのお父さんとは会ったことがあるんだな」


「私と恋火ちゃんは赤ちゃんの時で覚えてないけどね」


「まぁな。でも関係はあるんだからお墓参りは行くだろ?」


「もちろん。舞翔くんと出会わせてくれてありがとうございましたって言わなきゃ」


 それなら別にうちの仏壇でいいと思う、なんて野暮なことは言わない。


 なんとなく水萌とレンは触れないようにしてたのがわかるし。


「じゃあ行こうか。母さん呼んでくる」


「オレも行く」


「なら私も」


「一人はやだから僕も行っていい?」


「別にいいけど、なんか嫌な予感」


 なんだかわからないけど、全員を連れて行ったら母さんに何か言われる気がした。


 まあ気にしたところで意味はないし、特に悪いことにはならない気がしたからみんなで母さんを呼びに行った。


 そして俺達を見た母さんが少し間を置いて「ハーレム?」と案の定意味のわからないことを言い出した。


 俺がレンを好きなことも、レンと恋人なこともちゃんと説明したし、そもそも花宮は男なのになんでハーレムになるのか。


 意味はわからないけど「まあ舞翔だからいいのかしら?」と言って母さんが立ち上がった。


 母さんの自己完結が済むと、母さんは歩き出した。


 相変わらずの自由人な母さんの後に続いて俺達は家を出る。


 そして一年ぶりの父さんに会いに行く。

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