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とある王女の恋物語  作者: 藍田 恵
第二章 王都にて
21/111

8

作者の趣味がちょっぴり出ています。

 その日の夕食の準備は、ケイトに代わってサラが手伝うことになった。

 王様の料理を準備する場所だけあって、狩猟小屋の台所は大人数でも無駄なく動けるように造られており、村では滅多に見られない調味料が揃えられている。

 とりわけ種々の香草は初めて見るものばかりで、主に台所を取り仕切っているセレナの好奇心を満たすものばかりだった。

 今日はケイトの目がないことをいいことに、セレナはここぞとばかりにそれぞれの瓶の蓋を開けて匂いを嗅ぎ、サラに確かめてもらう。

「サラ、いつものスープに合う香草って、これ?」

 サラはセレナの差し出した瓶の匂いを嗅ぐと、見慣れた香草の瓶を手に取った。

「それはスープよりパンに入れた方がいいわ。スープはこっちの香草」

「パンに香草を?」

 ジェスが意外そうにそう言い、セレナから受け取った瓶をまじまじと見る。

「…いい考えかも。今夜のパンに入れてみようかしら」

「パイの生地にも合うと思うわ。甘くないの限定だけど」

「ねぇ、サラ。サラが前に作ってくれたお肉料理、シチューみたいにして作りたいんだけど、どうかしら?」

「シチューだったら、準備も楽ね。じゃあ、後はお芋を使って…」

「いつもの材料に、お芋ね。分かった」

 そう言ってセレナは食糧庫に向かった。城からは来賓用の食糧がいつもより少々多めに届いている。

 もともとエリーが城から頻繁に訪れるから、食料品に限らなくても従者に伝言を頼めば翌日には希望の品が届く。狩猟小屋と王城の間の連絡は緊密で、王様からの配慮もあって、困ることはほとんどなかった。

「使い易い台所ね」

「そう言えば、サラがここで料理するの、初めてね」

 普段はマイリの遊び相手が担当のサラだが、料理が出来ないわけではない。長の妻はサラにもエリーにも、献立に困らない程度の料理の手ほどきをしていた。

 とりわけサラは香草を使うのがとても上手く、洗練された味付けは長の妻さえ感心するほどだった。

「ねぇ、サラ。手伝って」

 パンの準備を始めたジェスに頼まれて、サラはパンに入れる香草の量を決める。

「パンに香草を入れること、どうやって思いついたの?」

「城下町のパン屋さんで見かけたのよ。ああいう使い方もするんだ、って驚いたわ。美味しそうだったから試してみたいと思っていたの」

「そういう訳ね。これ、刻んだ方がいいかしら?」

「そのままでも歯応えがあって美味しいと思うわ」

「半々で作ってみようかしら」

「それ、いいわね」

 香草を刻み始めたジェスに代わり、瓶を戸棚に仕舞ったサラはふぅ、と溜息をついた。

「すごい数の香草が揃っているわね。ひとつひとつの匂いを確かめるだけで、何日もかかりそう」

「でしょう? きっと全部、お肉料理に使う為のものだと思うけど。さすが王様の料理人が使うだけあるわね」

 生地を二つに分けて、ジェスは刻んだ香草と、そのままのものをそれぞれ加えて混ぜ込んだ。

「あら、さっそく香草のパンを作っているのね」

 野菜と芋を持って戻って来たセレナが、ジェスが作る生地の匂いを嗅ぐ。

「いい匂い。焼いたらもっといい匂いになりそう」

「シチューの時はこういうパンがちょうどいいわね。あの二人って、気持ちいいくらい食べてくれるから作り甲斐があるわ」

「そういえば、量が足りなかったんじゃないかってケイトが気にしていたわよ。これからはパンも多めに焼くようにしなくちゃね」

「じゃあ、何も入っていないパンも少しだけ作っておくわ」

 一応、娘達には王子をもてなす義務もある。エリーに内緒でなければ城の料理人が食事を作りに来るところだが、王子が身分を隠しているから料理人が来るのはまずい。結局、王子側からの要望もあり、食事は娘達と同じで良いことになった。

 しかし王宮のように豪勢な料理ではなくても、娘達が作る村の家庭料理はワイルダー公国の者にとっては王侯貴族並みの食事と言っても過言ではなかった。

「そんなに作って大丈夫? 昨夜はたまたま二人とも、お腹が空いていただけじゃないの? 長旅の後だったし」

「あら、サラ。男の人は普段でもあれくらい食べるわよ。昨夜はあれでも遠慮していたんじゃないかしら。だから、後で温め直して食べてもらえるように今夜は多めに作りたいの」

「それでも余ったら、翌朝パイにしても良さそうね。その時のパイ生地に、この香草を使ってみるわね」

 パンの生地を作り終えたジェスは、今度はセレナを手伝って芋の皮を剥く。サラも芋とナイフを手に取って、お客人の為に嬉々として料理する姉達の輪に加わった。

 妹同然のエリーの幸せを願ってのことなのは分かる。でも。

 サラは二人に気付かれないように、そっと溜息を吐いた。

 私はそんな風に、手放しでは喜べない。


サラ、完全に拗ねてます。


長の家は贅沢な方ですが、リブシャ王国では王族も国民も大体似たようなものを食べています。全体的に国が豊かなので、食生活にあまり貧富の差がない。

他国から見たら非常に羨まし〜い状況です。

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