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# 第20話 ## 「七夕の願いごと」

# 第20話


## 「七夕の願いごと」


七月七日。


夕方。


玄関を開けた瞬間、結愛が叫んだ。


「たなばたー!」


僕は笑う。


「よく覚えてたね」


「おほしさま!」


優月も嬉しそうに玄関へやってくる。


「今年も短冊書こうよ」


「うん!」


---


夕飯の前。


リビングには小さな笹が飾られていた。


色とりどりの短冊。


折り紙の星。


そして。


なぜか大量のペンギン。


結愛の仕業だった。


「ペンギンもたなばた!」


「ペンギンも願い事するの?」


「する!」


もう誰にも止められない。


---


まずは優月。


「何を書いたの?」


「秘密」


また秘密だった。


優月は短冊を笹の奥へ隠すように結んだ。


僕は少しだけ気になった。


でも。


無理に聞かないことにした。


---


次は唯ちゃん。


「私は……家族が健康でいられますように」


そう言って短冊を結ぶ。


僕は笑った。


「唯ちゃんらしいね」


「大事なことでしょ?」


「うん」


---


そして僕。


少し考えて。


短冊に書いた。


**『みんなの笑顔が、これからも続きますように』**


結愛が覗き込む。


「ぱぱ、ながい!」


「願い事だからいいの」


「ゆあは短いよ!」


そう言って結愛が自信満々に短冊を見せた。


---


そこには。


大きな字で。


**『ぷりんがまいにちたべられますように!』**


僕は吹き出した。


優月も笑う。


唯ちゃんも笑う。


「結愛らしいね」


「でしょ!」


胸を張っている。


---


夕飯のあと。


家族みんなでベランダへ出た。


空には星がたくさん見えていた。


「織姫と彦星、会えるかな」


優月が空を見上げる。


僕は答える。


「きっと会えるよ」


結愛も空を見上げる。


「じゃあ、ゆあたちも会える?」


「毎日会ってるでしょ」


「そっか!」


結愛は嬉しそうに笑った。


---


しばらくして。


優月がぽつりと言った。


「パパ」


「ん?」


「私の願い事ね」


「うん」


「みんなが、ずっと幸せでいられますようにって書いた」


僕は少し驚いた。


「教えてくれるの?」


「うん」


優月は恥ずかしそうに笑う。


「だって……」


空を見上げる。


「今が好きだから」


僕は何も言えなかった。


ただ。


優月の頭をそっと撫でた。


「ありがとう」


---


その時。


夜空に一筋の光が走った。


「あ!」


流れ星。


みんなで空を見る。


結愛が両手を合わせる。


「おねがいします!」


何を願っているのかは分からない。


でも。


その小さな背中を見ながら。


僕は思った。


きっと。


願い事は叶うとか叶わないとかだけじゃない。


願ったことを大切にして。


その願いに向かって歩いていく。


それだけでも。


きっと意味がある。


---


夜。


寝室へ向かう途中。


リビングの笹を見る。


短冊が揺れている。


僕。


唯ちゃん。


優月。


結愛。


四人分の願い。


どれも違う。


でも。


全部ひとつの場所につながっている気がした。


**家族で笑っていられること。**


それが。


僕たちにとって一番大切な願いなのかもしれない。


---


布団に入った結愛が言う。


「ぱぱ」


「ん?」


「ぷりんのねがい、かなうかな?」


僕は笑った。


「きっと叶うよ」


「やった!」


結愛は満足そうに目を閉じた。


数秒後。


「……あした、ぷりんたべたい」


「もう願いじゃなくて予定になってるよ」


優月の笑い声。


唯ちゃんの笑い声。


そして僕も笑う。


七夕の夜。


星空の下。


今日もまた。


僕たちは家族として、同じ時間を過ごしていた。


それだけで。


十分、幸せだった。


---


### 次回予告


**第21話「夏休みがやってきた!」**


待ちに待った夏休み。


優月は宿題の計画を立てる。


結愛は朝から遊ぶ気満々。


そしてパパには、唯ちゃんから突然の提案が――。


「今年の夏、家族で旅行に行かない?」


家族の夏が始まる。


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