↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

1. 二人の母親

「ツンツンした優等生キャラが、クールなお姉さんに踏まれてわからされるのっていいよなぁ……」

 オレは思わず声に出して呟いていた。Twitter(現X)に流れてきた投稿を見ながら、次のノクターンノベルズに投稿する短編百合小説ネタを思いついたのだ。

 投稿は「か●や様は告らせたい」の伊●野ミコがI字バランスを取っている画像を四分割して、投稿をタップすると縦に並んで一枚の画像になるものだった。

 本来男を誘惑しているような画像なのだろうがオレには関係ない。伊●野ミコをわからせる女がいるとしたら誰がいいか、について考え始めた。

 親友の大仏こ●ちは勿論第一に思い浮かんだ。親友だと思っていた人物に踏まれて感じさせられた時の伊●野ミコの感情を考えると興奮モノだった。四宮か●やは、ちょっと関係性的に本気で嫌がりそうだったので微妙だな。

 もっとクールで大人なお姉さんでもありかなと思った。「か●や様は告らせたい」にはあまり年上でちょうどいい感じのキャラクターは登場していないが。

 まぁ二次創作じゃなくオリジナルなのでそれは別にいい。

「世界は現代にするか、異世界にするか……」

 オレは油断していた。仕事からの帰り道、いつも人通りのほとんどない道路で今日は道路工事を行っていた。細かく振動する機械でアスファルトの路面をドガガガガガと叩いている。

 車もほとんど通らない道だ。オレはいつも通り歩きスマホをしながら信号機のない横断歩道を渡ろうとした。

 普段なら気づけたかもしれない。しかし。

「股ぺんぺんもアリだな……」

 伊●野ミコのI字バランス画像に見入ってしまっていたオレの辞世の句は、こんな最低なものになった。

 10tトラックに跳ね飛ばされたオレはまだ生きていた。しかし丁度バックしていたショベルカーのキャタピラーの下に頭が挟み込まれ、そのまま吉●吉影よろしく頭を踏みつぶされて死んだ。


(……あれが最期の言葉とかマジかよ。せめて『Twitter(現X)だ。断じて逆じゃねぇ』とかにしたかった……ってなんで考えられてるんだ?)

 オレは思考ができていることに驚く。我考える、ゆえに我ありと言ったのはデカルトだったか? その言葉に従えばオレはまだ存在していることになる。

(死後の世界は実在してたのか?)

 視界は相変わらず黒一色だったが、頭部に激痛が走った。キャタピラーに巻き込まれた痛みかと思ったが違う。まるで頭より細い輪を無理やり通り抜けようとしているかのようだ。

 悲鳴を上げようかとも思ったがなぜか声が出せない。しばらくするうちに硬い輪っかが徐々に広がり、ぬるんという感触とともに頭だけではなく身体から足先まで全てが何かから出た。

 全身を包む悪寒。誰かの温かい手を感じ、そのままお湯のような何かに漬けられた。誰か女性の声が聞こえる。

「女の子です」

 どこかで赤ん坊が鳴いている。おぎゃあおぎゃあと中々のボリュームだ。子供の声は騒音ではありません、が、これまた内側から響いてくるような大音量だ。

 ……っていうかオレだ。

 オレが鳴いているのだ。

 いやまて、どうなっている。ショベルカーに轢き殺された治療をお産室で受けているならかなり無理はあるけどもギリ説明がつく。だがオレが赤ん坊の声を上げているのはどう考えてもおかしい。脳を赤ん坊に移植したか? っていやその移す脳みそも潰されてないんだよ。

 うっすらと目が開いた。二人の若い女性が見える。一人は金髪に青い瞳の優しそうな女性だ。ベッドに身体を横たえて、汗でぐっしょりになった顔をこちらに向けて微笑んでいる。もう一人はベッドのこちら側でオレの顔をのぞき込んでいる。褐色の肌に灰色の髪。頭の上には猫耳が生えている。

 ねっ、ねっ、猫耳ぃ???

 ベッドに身体を横たえている優しそうな女性が目を細めて微笑んだ。

「私はリーザ、彼女はミオーネ。あなたのママたちよ、リオ」

 ん? ん? ママ? たち? 複数形? リオ?

 オレの名前がリオだとして、ママ「たち」ってどういうことだ?

 混乱していると褐色肌で猫耳の女性も微笑んだ。どことなく表情の変化に乏しい印象を与えるが、オレを安心させようとしているのはわかった。

「ミオーネだ。生まれてきてくれてありがとう、リオ。お前が私たち二人の初めての子供だ」

 私たち二人の子供? 未だに事態を飲み込めていないオレの頭の上に、ミオーネが手を伸ばしてきた。わっ、なんだ? 頭の上のなにかを触られている感触があるぞ。そんなところには何もないはずだが……。

「……やっぱり猫耳はついてしまうか。尻尾も……」

 不安げに、少し残念そうに言うミオーネママ。

「いいじゃない。貴族になるわけでもないし、なにかあったら私たちが守ってあげましょ」

「……そうだな。ありがとう、リーザ」

 相変わらずおぎゃあおぎゃあと叫び続けるオレの喉。しかしオレは今まで聞いた話を総合して一つの結論に至った。


(……ここってもしかして女性同士で子供を産める異世界で、オレは猫獣人(♀)に転生したってコト?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。