第十話 リーナの絶望
性的描写
胸糞要素があります。
苦手な方は閲覧をお控え下さい。
またあの男がやって来る。
酒で顔を赤らめ、上機嫌なのにどこか怯えたような目をしたあの男が。
はじまりは不審者、そのあと魔物から村を救った英雄となり、直後にその正体を現したこの村の独裁者。
タナカ
聞き馴染みのない言い回しで告げられたその名前は、私たちにとって恐怖そのものの名前となった。
初めの被害者は村長の孫娘だった。
未だ14歳の若くて可愛い女の子。
そのうぶな身体をタナカはどす黒い欲望で塗りつぶした。
もちろん、本人は抵抗した。
だけど、タナカの力を知る大人たちはみんな尻込みして何もせず、ただ服を剥がれ恐怖で顔の色を変えていく彼女を見ることしかしなかった。
ただ一人を除いて。
「カイン……」
不意に口をついた言葉に、リーナは苦笑した。
自分の夫となるはずだった人は、ただ一人、タナカに立ち向かった。
そして、右腕を失った。
その後の混乱の中で村から姿が消え、今はどこにいるかすら分からない。
生きている可能性は低いだろうと、リーナは考えていた。
もし生きていたのなら、どうか村のことは忘れて幸せに生きていてほしい。それが、今のリーナのささやかな唯一の願いだった。
「だって、私にはもうあなたの妻になる資格は無いもの」
あの騒動の後、タナカは村の周辺に結界を張り巡らせた。
そのおかげで、魔物の襲撃は無くなったが同時に聖騎士団からの救助も望めなくなった。
村を我が物としたタナカは、村の男たちを強制的に働かせると同時に、若い娘たちを自分の住む家に集めた。
村長の孫娘やリーナたち十数人の若い娘たちは、服を奪われ、質素な布切れ一枚とともに家の一番奥の部屋に閉じ込められた。
裸同然の娘たちが監禁された部屋に、タナカは1日に一度訪れ、その日の気分で一人から数人の娘を連れていく。
連れていかれた娘は、その日一日中タナカの相手をさせられる。
食事や風呂の世話から、タナカが退屈しないように芸者の真似事、もちろん床の相手もさせられた。
人としての尊厳なんてない、家畜同然の扱いだ。
リーナ自身も、もうなんどもタナカの相手をさせられた。
カインと夫婦になり、掴み取るはずだった幸せは、タナカに全てを奪われたのだ。
部屋に入ってきたタナカは、部屋の奥で逃げるように身体を縮める娘たちを舐めるように見渡した。
今日もまた、相手をさせられる娘が決まる。
娘たちは皆一様に目を伏せ、間違ってもタナカと目が合わないように床の模様を見つめていた。
それが無意味な事だと分かっていても。
タナカの足音が近づいて来る。
「今日はお前だ」
聞いただけで背筋に悪寒が走るその声は、リーナの目の前で発せられた。
「立て」
身体を覆っていた毛布をかけて剥ぎ取られ、リーナは裸同然の姿になる。
辛うじて、腰の周りには布を買い巻いているがそれも風が吹けば無意味になるし上半身に関しては手で隠すのがやっとだ。
タナカにその手を掴まれ強制的に立たされる。
リーナはなされるがまま、力なく立ち上がった。
周りの娘たちからは、自分が選ばれなかったことへの安堵とリーナへの心配が入り混じった視線が注がれる。
が、誰もタナカを止めようとはしない。
みんな、タナカの気分が変わって自分が標的となることを恐れているのだ。
「はじめのうちはウブで可愛いところもあったのに、今じゃもう安い風俗嬢と同じだな」
ぶつくさと呟くタナカの背中にリーナが付いていく。
これから1日のことを考えて、リーナの心はさらに重たくなった。
いっそのことみずから命を断とうか。そうなんども考えた。
しかし、その度にカインの顔が脳裏に浮かんだ。
幼馴染であり、夫になるはずだったリーナの想い人。
汚された自分では、もうカインのお嫁さんになることはかなわないけれど、もう一度だけあの優しい笑顔に会いたい。
その想いだけで、リーナはこの地獄を生き抜いて来た。
「それじゃあさっそく、相手をしてもらおうか」
タナカが気色の悪い笑みを浮かべて服を脱ぐ。
だらしなくたるんだ体は、聖騎士や魔物を一撃で屠る男のものだとは到底思えない。
「さ、なめろ」
立ったままのタナカの前にひざまずかされて頭を掴まれる。
吐き気を催す汗の臭いに、顔を背けそうになるが、抑えられた頭は動かさない。
「いつも通り、下手な事したらその時は罰を与えるからな」
頭を掴んだ手に力が入る。
リーナは観念し、せめてもの抵抗としてこの苦痛に耐えるように目をぎゅっと瞑った。
その時だった。
村の外れて、大きな爆発音がした。




