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倭国滅亡〜別れの時〜

 それは空から降りて来た。


 大きな体に、黒い体、紫色の瞳をした竜だ。


「こんな所にもゴミがいやがったか。」

 竜の方から声が聞こえて来た。


「お下がりください!」

 兵はサクラ達を庇うように前に出た。


 竜の背から、赤い体に紫色の瞳をしたモノが不敵な笑みを浮かべながら飛び降りて来た。



「私が時間を稼ぎます。逃げください!」

 兵はそう叫ぶと相手に向かって行った。


「おっ! やるのか?」

 その言葉を言い終わると同時に兵の首が地面に落ちた。


「「「!?」」」

 サクラ達は身の危険を感じて後方へ下がった。


「なんだ? 向かって来ないのか? つまんねぇ〜な。」

 つまらなそうな……ゴミを見るような目をサクラ達に向けた。


 俺がやらなきゃ!

 母さん達を守るんだ!


「母さん達は下がってて! “ブロッサム”!」

 サクラは王妃達の前に出て、ネペンテスから草薙剣を取り出し構えた。


「クックックックッ! こんなガキが一丁前に戦うのか? 来いよガキ!」


「“変身(チェンジ)”!」

 俺は子供の姿では戦いにくい為、武闘会のヤマト状態になった。


「「えっ!?」」

 王妃とアイリスはサクラの変化を知らない為驚いていた。


「ん〜? それがどうした? 背が伸びた程度でどうなると?」


「“雷光形態(ライトニングフォーム)”! “雷光突(ライトニングスラスト)”!」

 サクラは自身が出せる最高速度の技を繰り出した。


「ほぉ〜! 大したもんだ!」

 サクラの渾身の一撃を軽々と回避し、サクラの腹部を手で貫いた。


「がはぁ!」

 サクラは相手に腹部を貫かれたまま上に持ち上げられ、そのまま王妃達の方へ投げ飛ばされた。


「「サクラ(王子)!!」」

 王妃とアイリスはサクラへ駆け寄った。


 アイリスは今までシャクヤクに鍛えて貰っていた光属性でサクラの腹部に回復魔法を施し始めた。


「イヤ! サクラ王子! 死なないで!」

 アイリスは必死に魔力を練り出してサクラを回復した。


「アイリスちゃん。……サクラをお願いね。」

 王妃はそう言うとネペンテスから槍を取り出し向かって行った。


 王妃はサクラを守る為に必死に戦った。

 しかし実力が違い過ぎた。

 直ぐに王妃の体はボロボロになってしまった。


「悪くないが、こんなもんか。」


「……サ、ク、ラ。」

 王妃はうつ伏せに倒れ、サクラへ目を向けて手を伸ばした。


「くぅ!」

 サクラはアイリスの回復のお陰で何とか一命を取り留め、倒れた王妃に目を向けた。


 ヒュッ!

 王妃の首はサクラの目の前で落とされた。


「……母さーーん!」

 俺は目の前で母さんが殺されるのを見て頭が真っ白になった。


「そんな!?」

 アイリスも王妃に目を向けその瞬間を目撃した。


「ガキは見所あるな! 大人になったら楽しい殺し合いが出来そうだ。……()()()生かしてやる! 俺は魔人アネモネ。忘れるなよ。」

 アネモネは名をサクラに告げた。


「なんで、なんでこんな事をする!?」

 サクラはアネモネに叫んでいた。

 答えるとは思っていない、それでも叫ばずにはいられなかった。


「……お前は見所があるから、今後の楽しみの為に教えてやろう。我々魔人は、その昔神々により封印された魔の神、魔神様を復活させるため、こうして数年おきに人間を大量に殺しているのさ。」

 アネモネはサクラの問いに答えた。


「……魔神? 何故人間を殺して魔神が復活出来る!?」

 サクラはシャクヤクから一度だけ神々と魔神の話を聞いたことがあった。


「大量の人間の血を土に染み込ませれば復活出来るそうだ。後数年か十数年で復活出来ると思うぜ!」

 アネモネは笑いながらそう言った。


 魔人にすら歯が立たないのに、魔神なんて現れたらこの世界が終わる。


「……ない。……そんなこと絶対させない。」

 サクラは草薙剣を杖代わりにして何とか立ち上がった。

「おまえが成長して、もう一度俺の前に立つのを楽しみにしてるぜ。」

 アネモネはそう言うと、控えていた竜に命じた……女は殺せと。


 アネモネの命令により竜はアイリスに目を向け、腕を振り下ろした。


「アイリーース!」

 サクラは血反吐を吐きながらアイリスに手を伸ばした。


 しかし、サクラの手はアイリスに届かず、竜の腕は振り下ろされてしまった。


「ガァ?」

 竜は腕を振り下ろしたのに、殺した感触が無いことを不思議に思った。


「……遅くなった。」

 リュウオウは神社まで転移して来た所で、竜の腕が振り下ろされようとしているのに気がつき、一瞬で間に割り込んだのだ。


 アイリスは尻餅をついた状態で生きていた。


「サクラ無事か? キクは一緒じゃなかったのか?」

 リュウオウは竜の腕を跳ね除けた。


「……父さん。ごめん……俺は母さんを……守れなかった。」

 サクラは涙を流しながら国王に謝罪した。


 リュウオウはその言葉に目を見開き、辺りを見回して王妃の亡骸を見つけた。


「くそっ!……俺が間に合っていれば!」

 リュウオウは自分の不甲斐なさに怒りを覚えた。


「面白そうなのが出て来たな。」

 アネモネはニヤつきながら竜を下がらせた。


「お前は生きてる奴がいたら手当たり次第殺してこい。」

 アネモネは竜にそう命じた。


 竜が飛び立とうとした瞬間……。

「奥義“緋寒桜(ひかんざくら)”!」

 リュウオウは竜の上に転移し、上から下に刀を振り下ろした。


 竜はリュウオウの奥義により地面に叩き落とされた。


「ほぉ〜。竜に一撃でこれほどのダメージを与えるとはな。」

 アネモネは竜がやられたことなど気にも留めない態度を示した。


「“雷光装(らいこうそう)”!」

 リュウオウはアネモネの実力が自分よりも格上と見抜いていた。

 生半可な攻撃では意味がないと考え、全力で雷と光属性を身に纏い、アネモネに一瞬で近づいた。


「奥義“冬桜(ふゆざくら)”」

 リュウオウの横一閃がアネモネに迫った。


 アネモネは腕に土属性を纏い、リュウオウの奥義を防いだ。


「こんなものが奥義だ……ぐっ!」

 アネモネは一撃目を防いで油断したところに攻撃を受けた。


「…なるほど。二段攻撃か。」

 アネモネの体には少しの傷しか付いていなかった。


 アネモネの言うように、奥義冬桜は二段攻撃となっており、一撃目と同じ場所に時属性による時間差で二撃目が放たれる。


 その後もリュウオウは果敢に攻め続けるが、どれもアネモネには大したダメージには繋がらなかった。


「はぁはぉはぁ。」

 リュウオウは全力で魔法衣を纏い戦い続けたが、アネモネの攻撃によるダメージの蓄積から、限界を迎えていた。


「人間にしては良くやったな。そこそこ楽しめたぞ。“魔人風(プロトアネモニン)”!」

 アネモネはリュウオウに手をかざした。


 アネモネの放った魔人風は、大量の鋭利な黒い風の刃を生み出し、リュウオウに迫った。


「父さぁん!?」

 サクラはリュウオウに向かって叫んだ。


 アネモネの攻撃にリュウオウは為す術がないと悟った。


「……お前は生きろ。アイリス! サクラを頼む!」

 リュウオウはサクラとアイリスの2人に転移魔法を発動した。


 その直後、リュウオウの体は切り刻まれ、リュウオウは倒れた。


 こうして魔人アネモネの手により倭国王都は滅亡した。




これで一つの区切りになります。

ここまで読んだ下さった方、ありがとうございます。


魔人アネモネ

花のアネモネにも毒の成分プロトアネモニンがあるそうです。

技名と被ってますね?

茎が折れたりしたところを触ると水ぶくれになったりするそうです。

子供が触ると危ないですね。

丁度、魔人アネモネ登場の時に庭のアネモネが綺麗に咲いていました( ̄◇ ̄;)

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