魔法の師〜出会い④〜
「魔法を……」
「はい。独学でなんとかやっていましたが、ちゃんと教わりたいんです。」
と俺は前から考えていたことを口にした。
独学でやっていても成果は出るには出たが、こういうことは、ちゃんとした師匠に教わった方が効率がいいからな!
「……なるほどね。それにしても驚いたよ! まさか1歳半の子が自分一人で魔法を使えるようになるなんて。サクラ王子が魔法を教わりたいというなら喜んで教えましょう。」
と微笑んで答えてくれた。
「……!ありがとうございます。師匠!」
「……師匠ね。サクラ王子に魔法を教えるのは王子がもっと大きくなってからと思っていましたが、だいぶ早まりましたね。」
「シャクヤク師匠これからよろしくお願いします!」
と俺は頭を下げた。
「基本的には、私の仕事や兵達の訓練があるので、その合間の時間で魔法の基礎から学んでいきましょう。」
俺はシャクヤク師匠に右手を差し出し握手を交わした。
「まず、王子はどの程度魔法を理解していますか?」
と聞かれた。
「図書室にあった、魔法書の基礎編を何冊か読んだ程度です。ざっくり言うと、魔法を使うためには、その魔法をイメージし、体内から魔力を練り出すこと。属性持ちなら、その属性を使用する際に低魔力で高威力になり、属性の無い場合は高魔力で低威力になること。技名などを唱えるとイメージしやすいことです。あとは、イメージしても魔力がないと魔法が発動しないことや魔法を使い過ぎると疲れることです。俺の場合は魔法を使い過ぎると倒れて寝ちゃいます。」
「……その認識で間違いないよ。王子が毎回城の中庭で寝てたのはその性だったのか。城の者は皆、日当たりが良いから気持ちよくて昼寝してるんだろうって話してたよ!」
と笑っている。
「何回か母さんに抱っこされて兵の訓練を見てましたが、倒れるまでやってる人はいませんでしたよね?」
と俺は疑問に思っていたことを聞いてみた。
「魔法の素早い発動や命中率の訓練がメインだからね。人にもよるけど、大人になってから魔力が枯渇するまで魔法を使っても、魔力の最大値は殆ど伸びないんだよ。だから倒れる程にはならないかな。肉体を使う訓練は別だけどね。」
と答えてくれた。
「じゃぁ俺は今まで倒れていた分、魔力の最大値が増えているんですね?」
「そう言うことになるね。」
大人になって魔力が成長しなくなるなら、毎日ぶっ倒れるまで訓練した方が良さそうだな。
「因みにだが、王子は属性なしから7つの属性持ちになりましたが、戦うことのない市民の大半は属性1つ持ちが多いです。一般兵や冒険者の下位で属性2つ、中堅で属性3から5つ、上級で6から7程度です。しかし、属性1つでも極めた者はかなりの腕ですよ。属性が多くても使う者次第ですね。」
「なら、俺は一応上級並なんですね!」
と興奮してシャクヤク師匠に詰め寄った。
「そうですね。因みにですが、私の属性は10以上ありますよ。」
さらっと凄いアピールされました。
「今現在王子の持っている属性7つは基本属性と言われているものです。この他に特殊属性が存在しています。基本属性が無くても特殊属性持ちだけの人もいます。」
俺は魔法書の基礎編や兵が使っている魔法しか知らないからな。手が本棚の下の方しか取れない。
「特殊属性にはどんなものがあるんですか?」
「……私も全ての特殊属性は把握出来ていません。何個か例を上げるなら、次元、時、変化、鋼、酸、毒、麻痺等ですかね。」
「色々あるんですね。特殊属性もイメージして魔力を練ることは同じなんですよね?」
「同じだよ。ただ特殊属性は基本属性と違って、属性持ちでないと発動しませんがね。」
「成る程。俺の場合、訓練して魔法が使えるようになったら属性が身に付きましたけど、特殊属性も身に付かないですかね?」
「……基本的にはあり得ないですね。しかし、王子なら身に付きそうな気がします。勘ですけどね。もしかしたら、何か特別なスキルを持っているのかも知れないですね。」
しばらく考え込んでシャクヤク師匠は考えを口にした。
「……スキル?それってなんですか?」
「スキルは知らなかったんだね。スキルというのは魔法の属性とは別で、生まれ持った先天スキルと言うものと、訓練で身に付けることが出来る後天スキルがある。また、後天スキルを例に出すなら、剣の腕が上達すると“剣才”のスキル。更に上が“剣聖”。その上が“剣神”と進化する。スキル持ちと無しではかなりの差が出ます。過酷な訓練をしなければ後天スキルは身に付かないし、進化も大変なんだよ。王子の先天スキルに属性が増えた秘密があるんじゃないかな?」
「……スキルってどうやったら分かるんですか?」
「ウツギさんの属性眼もスキルなんだけど、属性眼のようにスキルが分かるスキル眼があるね。国に仕える者・冒険者ギルド・学校などに大体一人はいるね。ただうちの国のスキル眼持ちは遠征で出ていてしばらく戻っては来ないんですよね。」
「……じゃぁしばらくスキルは分からないんですね。」
「まぁ先天スキルは増やせないし、後天スキルは努力次第だから、あまりスキルは気にせずに魔法の力を磨いていこうね。」
「はい」
どの道スキルの確認が出来ないんじゃ仕方がないし、魔法の師も出来たことだからもっと上達してやる。
こうして、魔法の師と出会い、俺の魔法は更に開花していくのだった。
サクラに師匠が出来ました。
小さいうちからコツコツと!




