魔法の師〜出会い②〜
俺はシャクヤクさんに抱き抱えられたまま、ウツギさんの部屋に連れて来られた。
「ウツギさん。一つ確認ですが、本当に属性眼では、サクラ王子は属性が無かったんですね?」
シャクヤクさんは、真剣な表情でウツギさんを問いただしている。
「……シャクヤク。残念だか間違いなくサクラ王子からは属性が見えなかったのじゃ。」
ウツギさんが悲しそうな表情で答えた。
「そうですか。今から国王様と王妃様を連れてくるので、御二方が来られたら、サクラ王子を属性眼で見てもらえますか?」
「……結果は変わらんと思うぞ。」
「ものは試しと言うではありませんか! 今回は見えるかも知れませんよ!」
「……シャクヤクがそこまで言うなら。」
「今、サクラ王子を見てもらってもいいんですが、どうせなら国王様と王妃様の前がいいでしょう。」
シャクヤクさんはそう言って、再び俺を抱き抱え 両親の元へ向かった。
「リュウオウ様とキク様にお伝えしたいことが御座います。」
「どうしたと言うのだ? シャクヤクが慌てているとこなんて久しぶりだが?」
シャクヤクさんの慌てぶりに両親だけでなく、部屋に控えていた護衛兵も驚いている。
「御二方に、ウツギの部屋までお越し願いたいのですが、宜しいでしょうか? 大事な話が御座います。」
「……分かった。何か大事なことなんだな。付いて行こう。」
父さんがシャクヤクさんに答え、父さんと母さんが立ち上がった。
「有難う御座います。では、参りましょう。」
俺はウツギさんの部屋に向かっている途中に、「俺にも属性が! 後から属性って身に付くものなのか?」など色々考えているうちに、再びウツギさんの部屋に到着した。
「国王様、サクラ王子のことですが……」
シャクヤクさん切り出した。
「サクラがどうかしたのか?」
父さんが不思議そうな顔をしている。
「既に火の魔法が使えます!」
「……え? っは!? どういうことだ!サクラはまだ1歳半の子供だ! 魔法が使えるはずがない! 大きくなり訓練すれば魔法を使える可能性もゼロではないが……サクラには適性属性がなかったんだぞ!」
父さんはシャクヤクさんの言葉にかなり驚いていた。
「……城の中庭を通りかかった時に、サクラ王子が火の魔法を発動しているのを偶然見かけました。」
「……そんな馬鹿な」
俺が生まれて数日後に、俺の属性を眼で確認したウツギさんが驚いている。
「……もしかすると属性が身に付いているかも知れません。今までに後から属性が身に付くなど聞いたことはありませんが、生まれて1年半で既にあれだけの火を作り出せていることを考えれば……可能性は充分に考えられます。」
シャクヤクさんが興奮した様子だ。
みんなが俺に注目している。
やって見せましょう!
「ダァー!」
翻訳「“火”!」
ライターの火くらいの火の魔法を発動した。
「……本当に“火”の魔法を使えている!」
「ダァー!」
俺は更に魔力を火に込めて、松明の火くらいに大きくしてみせた。
「……なんと!! 魔力の上乗せまで出来るのか!?」
父さんが目を見開いて驚いていた。
なんでも、魔力を上乗せすることはしっかり魔法を教わり訓練しないと出来ないそうだ。
独学で出来るようになってしまった! 俺って凄いのかな?
「……改めて属性眼でサクラ王子を見てみます。」
そう言って、ウツギさんは属性眼を発動した。




