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第四十七話 工事現場に行ってみたが無双できない。

何とか間に合いました。どうぞ

 いつの間にか貴也は食事係になっていた。

 朝、昼、晩、三食昼寝付き。ちょっと違うか

 まあ、料理は苦にならないので問題ないのだが、なんでこんな所でこんな事をしてるんだろう、という気にはなる。

 まあ、他の人に任せて不味いものを食うよりましなのだが……


 カタリナさんの料理の腕は絶望的だった。

 多分、今まで包丁を持ったことがないのだろう。

 手伝ってくれるというので野菜の皮むきをお願いしてみたら……

 危なっかしくて見てられなかった。

 手付きを見ればその人の腕くらいわかる。

 やってても料理下手な人はいくらでもいるが、やってない人は間違いなくできない。

 かといってこんなところで料理教室も違うだろう。


 ならば、他の人にやって貰おうかとも思ったが、ここにいる人、皆、男料理の人たちだった。

 基本、皮剥いて、適当に切って、焼くか、煮る。

 味付けも適当。

 スープには豪快に調味料をぶち込む。

 辛ければ水で薄めてOK。

 焼き物は味付けなしで食べる前にそれぞれが塩コショウや焼き肉のたれをかける。

 強火で一気に焼き上げる。

 男のバーベキュー料理。

 よく言って豪快、悪く言えば雑なのだ。


 一日、二日ならいいが、毎日こんな料理食べてられない。

 と言うか、これを料理と認められない。

 と言うわけで貴也が任された。

 まあ、一人だけ、部外者でやることがないからいいんだけど。

 唯一の救いはみんなが美味いと言ってくれることだろう。


 貴也がそんなことを考えながらスープを煮込んでいると


「貴也君。今忙しい?」


「スープを煮込んでいるだけなんでいいですよ」


 朝食が終わり、やることがなかったので昼食の仕込みを始めていた。

 時間が有り余っているのでどんどん凝った料理を始めている。


 そんな中、カタリナが話しかけてきた。

 午前中は書類仕事をしていると言ってたのにどうしたのだろう。

 貴也はコンロの火を止めて振り返る。


「昼から何だけど、ちょっと下の工事現場にあいさつに行こうと思っているの。まあ、必要はないんだけど一応課長の代理で来たってこと言っといた方がいいと思うのよね。それで貴也君が暇なら一緒にどう?」


「いいですよ。どうせここにいても料理くらいしかやることないですし、お供させてもらいますよ」


 軽くお道化て言ってみた。

 そんな貴也に笑顔を向けながら


「じゃあ、お昼ご飯が終わったら行きましょう。ああ、お昼はパスタが食べたいな」


 そんなことを言いながらカタリナはキッチンから出て行った。

 貴也はそんな背中を見送りながら


「そういうことはもっと早く言ってほしいんですけど」


 軽く溜息を吐きながら、昨日、調査員が採って来た鴨と小麦粉を用意しパスタマシーンを取り出す。

 誰が使うのか分からないが妙に調理器具が充実している。

 よし鴨とキノコのクリームパスタにしよう。

 チーズはあったかなあ。

 





 昼食が終わり、山を下りていく。

 工事現場は徒歩で一時間くらいの場所にある。

 今回の目的地はトンネルの外にある簡易の事務所や宿泊施設だ。


 山歩きになれない貴也とカタリナは軽く汗ばみながら山を下りていく。

 流石に貴也一人に任せるのはマズいと思ったのか、ガイドさんが付き添ってくれた。

 山歩きは少し辛いが、ガイドさんが鳥やキノコ、野草などを解説してくれて思いのほか楽しかった。

 食べられるものはちゃんと採って帰りますよ。


 うん、今晩の夕食は彩りキノコのシチューにしよう。


 そんなことをしながら山を下っているとプレハブ住宅のような集まりが見えてきた。

 簡易的な建物はこちらの世界も似たようなものみたいだ。

 某アニメみたいにカプセル押したら、建物が出てくるみたいなことがなくて良かった、とホッとする。

 ファンタジーと科学が同居する世界と言うのはなかなか慣れない。


 近づいていくとプレハブ周りでは洗濯物を干す女の人たちがいた。

 作業員が多いのか、なかなか壮観だった。

 見渡す限り、シーツや作業服が干されている。

 乾燥機もあるのだろうが、天気がいい日はやっぱりお日様の元で干したいのだろう。


 うん。日の光を浴びた洗濯物は気持ちいいからね。


 そんなことを考えていると、小さな少女が走っていた。

 家族連れで工事に来ている人がいるのだろう。

 その時、ふと少女の首に視線がいった。


「あれって……」


「どうしたの? 貴也君」


 貴也が怪訝な顔をしているのを見てカタリナがこちらに振り返る。

 何でもないと言って彼女の後についていった。


 事務所に到達すると現場の責任者が飛んでやってきた。

 その慌てぶりに貴也は疑問を深めていた。


「ええっと、現地調査の予定は入ってないと思うんですけど、いまは本社の人間が出払っていて細かい話は……」


 たどたどしく汗を拭きながら話す中年の男性。

 彼は工事の現場監督らしい。

 いきなりの来訪者に目を白黒させている。

 これだけ大きな仕事なら渉外担当は本社から派遣されてきて対応することになっているのだろう。

 抜き打ちの査察だと勘違いしてかなり焦っているようだ。


 でも、そんなに慌てていると逆に疑われるとは思わないのだろうか。

 貴也は余計なことを考えていた。


 そんな中、カタリナはにこやかに笑顔を向けながら訳知り顔で


「心配いりませんよ。わたしたちは山の環境調査をしているだけで工事現場の査察で来たわけではありません。今回の調査はうちの課長が来る予定だったのですが、急に変更になりまして、わたしが担当することになったのでちょっとご挨拶に来ただけです」


「ああ、山岳調査の方ですか。先週から初めて三週間の予定でしたね。聞いています。山の方には影響はないと思いますが工事現場は危険ですのであまり近寄らないようにしてくださいね」


 露骨に安堵する現場監督。

 そんなに工事現場を見られるのは嫌なのだろうか。

 なんか、分かりやす過ぎて逆に罠なんじゃないかと思えるほどだ。


「で、他に要件はございますか? ちょっと、難しい作業中であまり席を外せないんですよ」


 表情には出さないが露骨に迷惑そうにしている。

 その態度にカタリナも目を細めていた。

 だが、彼女は大人の対応で答える。

 こんな事で表情を崩すようでは官庁では働けない。


「そうなんですか? 連絡もしないで突然やってきてすみません」


「いえいえ、そちらもお忙しいでしょうから問題ないですよ。ただ、前もって連絡してくだされば、こちらもちゃんと対応できますのでよろしくお願いします」


 口調は丁寧だが、言葉の端々に棘を感じる。

 やはり、この現場には何かありそうだ。


「では、お邪魔しました」


 カタリナは頭を下げて事務所から出て行った。

 貴也も彼女を追って事務所を離れる。


 帰りの山道はなかなか雰囲気が良くなかった。

 カタリナも現場監督の態度が気に入らなかったみたいで少し機嫌が悪い。

 そんな中で貴也は工事現場のことを考えていた。



今回は短めですみません。

次回更新は木曜日になるかもしれません。

極力、水曜に更新できるようにいたしますが、ご了承ください。

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