表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/53

48 再びのみー君

おのれ鳥野朗め、驚かせやがって!!

来るなら来ると予告してくれ!!

そう悪態をつきながら、なんとか心を落ち着かせて、森の中へと足を踏み入れた瞬間だった。


もこっ......もこもこっ......

8メートルぐらい先の地面が不自然に盛り上がってこちらに移動してくる。


「え、ちょ、ちょっと待って!?

もう?もう何か出るの?

なんか地面が動いてるんだけど!?

何かがこっちの足元に向かってきてない!?

ねえ!?」


慌てて後ろに飛び退いた私の少し先で、ぼこんっと土が盛り上がり、そこから顔を覗かせたのは、巨大な、いや、巨大とは言わないまでも十分に恐怖心を煽るサイズのミミズだった。

全然ミミズサイズじゃないけど、見た目だけミミズ!


色はまだらな土色で。

太さは私の太腿くらい?

長さは、土の中に隠れていて分からない。

動きはくねっ......くねっとしていて動きは速くはなさそうだ。


「ぎゃああああああああああああ!!

出た!!出た出た出た!!バカでかいミミズ!!

地面からいきなり出るとか!!ホラー映画の定番じゃん!!」


冷静さのカケラもない私の叫び声に、ケンちゃんが慌てて前に出る。


「し、師匠、危ないですから下がってください!これは魔物ですから!」


みとが冷静に言う。


「土属性の下級魔物テラワームだな。危険度は低いが、動きが読みにくいし、噛まれたら痛い」


危険度低いとかどうでもいい!だって噛むんでしょ!

それにまず見た目が無理なんだよ!!


どでかいミミズ、ううん、テラワームは、くねっ......と体をくねらせながら、

土の中を出たり入ったりしながら、明らかにこちらに向かってじりじりと迫ってくる。


「ひぃぃぃぃぃ!!来てる来てる来てる!!

よし!ケンちゃん出番だよ!!ここでいっちょ、さっきのイメトレ通りになんとかしてみよう!!」


完全に人任せ。だって、いきなりで私には考える余裕がなさすぎる!

ケンちゃんは必死に構えながらも、

土に潜ったり顔を出したりするテラワームの動きに戸惑っている。


「ど、どうすれば......!

土属性......制御......進路を変える......?」


焦っている。

ケンちゃんも完全に焦っている。

そりゃそうだろうけどもー!


そこで私は――

あの例え話を思い出した。


「ケンちゃん!!」


「は、はい!!」


「落ち着いて!!あれはね......

ケンちゃんの中にいる“みー君”のお友達だよ!!」


「............え?」


私の口は"コレだ!"とばかりに止まらない。


「ほら!前に言ったでしょ!?

ケンちゃんの中には、機嫌の悪いミミズの“みー君”がいるって!」


ケンちゃんは完全に混乱している。


「えっ......えっ......?み、みー君......?僕の......中に......?」


「そう!!でね!!

今目の前にいるこの子は――

まさにみー君のリアルお友達!!

だからケンちゃん!!仲良くしてあげて!!まずは落ち着かせて!!」


「仲良く......!?え、どうやって!?ミミズと......!?」


私は脇を締めるポーズをしながら叫ぶ。


「みー君の時と同じ!!こう!!ヘッドロックのイメージで!ギュッ!!って!!

『落ち着けコラァ!』って!!」


「ミミズにヘッドロック......!?え、えぇ......と?」


みとが額を押さえる。

「麻美......お前の例え話は本当に混乱を招く......」


あおさが笑いながら言う。

「でもケンちゃん、方向性は合ってるぜ。“制御”だ。“制御”」


「麻美の言いたいのはね、“相手の動きを封じ込める”ってことよ」

おかめが優しく補足する。

そうそう、それそれ、だいぶ優しく曲解してくれている気がするが。


こつぶが小さく呟く。

「ふふ......みー君、かわいい名前」


ケンちゃんは深呼吸し、

キリっとした声でテラワームに向かって手を伸ばした。


「......師匠のおかげで、冷静になれました。ありがとうございます」


そういうと、ケンちゃんの足元の土が、ふわりと揺れた。小さく息を吸い、低く、静かに呟いた。


「”カパン・トプラク(大地よ閉じろ)”」


次の瞬間。


ズンッ!!

ちょうど土から顔を覗かせた、テラワームの周囲の土がぎゅっと締めつけるように固まり、テラワームの動きがピタッと止まった。

そして、土がモコモコと盛り上がったかと思ったら、今度はそのままテラワームを地面に押し戻していく。


みとが目を細める。

「......ほう。土による“拘束・閉塞”か。初めてにしては見事だな」


あおさが口笛を吹く。

「やるじゃんケンちゃん。

麻美の“みー君ヘッドロック理論”を華麗にスルーした判断力も含めてな」


おかめが微笑む。

「落ち着いていたわね。魔力の流れも綺麗だったわ」


そして私はひたすら感動していた。


「ケ、ケンちゃん......すご......!!

今の、めっちゃカッコよかった......!」


半分腰を抜かしながら、褒めることしかできなかった。

ケンちゃんは少し照れながら言った。

「師匠が珍妙な例え話で落ち着かせてくれたからです。ありがとうございます!」


ちょっと!ケンちゃん!!

今、さり気なく珍妙って言わなかった!?


テラワームが地面に押し戻され、森に静けさが戻った、

......かと思った、その矢先にまた別の怪しげな音が聞こえてきた。


バサバサッ......ガリガリ......バサバサッ......ガリガリ......


「えっ、ちょ、ちょっと待って!?またなんかいる音してるんだけど!?

今ので“終わり”の空気じゃなかったの!?」


あおさが耳をピンと立てる。

「来るぞ。複数だ」


みとが冷静に言う。

「麻美、終わりのわけが無かろう。構えろ。次はお前の番だ」


「えっ、ちょ、ちょっと待って!?心の準備が......!」


言い終わる前に、目線より少しだけ低い位置から、

黒い影が3つ飛び出してきた。

小型の魔獣ストーンバットだ。

コウモリのような姿で、体の一部が石化しているせいで、飛ぶたびに周囲を削り、ガリガリッ と嫌な音がする。


「ぎゃあああああああああ!!

飛んでるの来た!!地面タイプの次は空中タイプ!?

バリエーション豊富すぎない!?」


ケンちゃんが再び前に出ようとする。


「師匠、僕が――」


「だめ!!ケンちゃんはさっき頑張ったから!!

次は私がやらないと!!大丈夫私だってやってやるわよ!!」


自分で言っておいて脚は完全に震えてるけど、

もう後には引けない。


私は両手を前に突き出し、反り立つ土の壁のアイツをイメージして

迫ってくるストーンバットに向かって叫んだ。


「ぬりかべアタック!!!」


モコモコ......ドゴォォォン!!!


地面が隆起したかと思った瞬間、

目の前に巨大な土の壁が飛び出した。


ストーンバットたちは、突然現れた土の壁に勢いよくそのままぶつかり、

「ギャッ!?」

弾かれて地面に落ちる。


私は思わずガッツポーズをしてしまった。

単に自分と魔物の間に壁が欲しかっただけなんだけど、結果オーライだ。


「よっし!!私のぬりかべ、最強!!」


みとが感心したように言う。

「......意外とやるじゃないか」


あおさが笑う。

「名前はなんかカッコ悪いけどな!」


私はちょっと胸を張った。

「ふふん。まあまあやるでしょ。私はね、イメージ戦略が得意なんでね!」


そう言った瞬間――


ゴゴゴゴゴ......


土壁が、動いた。


「「「えっ」」」


ドドドドドドドッ......!!


土壁が、前に走り出した。


「ちょ、ちょっと待って!?なんで走るの!?壁って走るものなの!?

誰がそんな仕様にしたの!?私!?私か!?なんかストーンバット追いかけてるし!!」


ストーンバットたちは

「ギャア!ギャアア!!」

と悲鳴を上げながら逃げ回る。

ぬりかべは走りながら、ドカーン!ドカーン!と木々に体当たりしてはそこら中倒しまくっている。


ケンちゃんが慌てて言う。


「し、師匠!止めないと森が......!」


私?そうか私が止めなきゃだ!私の魔法で創り出したんだから!


「ぬりかべ、ストーーップ!!」


ピタッ。

私の声に反応して壁は止まった。


「良かった......止まった」


「「「止まるんかい!!」」」


全員が総ツッコミ。そりゃするよね!

私は冷や汗をかきつつも開き直って言ってみた。


「まあね。私のぬりかべはね、

私の言うことをちゃんと聞くイイコなんだよね!」


みとがため息をつきながら、ちょっと呆れ顔だった。

「まあいい。制御できているなら問題ない」


「師匠、素晴らしいです!

あれを応用すれば防御にも、進路妨害にもなりますね!さすがに動き出すとは思いもしませんでしたが!」



私の“初めての土魔法”は、まさかの走るぬりかべが敵を追い回すという、ちょっと想定外の形で成功した。


ひとまず成功した......よね?





子どもの頃、あの漫画、読んでおいて本当に良かった......!







今回は麻美のインパクト勝ち?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ