47 いざ、実践!
話がまた逸れてしまった。
なんだっけ、何の話を......あー!そうだ、訓練の話だ。
“まさかの新事実”が多すぎて、頭が追いつかない。
ただでさえ加齢で回転数が落ちてきてるのに、情報量が多すぎる。
で、結局のところどんな訓練にしようかって話なのだけど、と私が切り出す。
「ま、麻美とケン、それぞれの相性の良い属性を探すことからじゃないか。
先ずはひと通り試してみるといい。俺たちがいるんだからな」
だそうだ。心強いことこの上ない。
ちなみに、“加護”は能力のブースト機能で、“祝福”は存在そのものに宿る縁や運命......今回でいうところの“器”とか、そういう類らしい。
正直、「へーそうなんだ」くらいで、まだピンとは来ていないけどね。
「まあ、そういうことなら、ガンガンやっていきますかー!
こないだ風吹かせて枝飛ばしたり、火つけたり、水かけたりしたから......今度は土いじり?でもする?」
庭先に出て、ぐい〜っと身体を伸ばしながら言う。
なんか子どものイタズラの延長みたいになってるけど、まあよしとしよう。
「オレたちもいるんだし、あっちでもっと実践的な訓練しねえ?」
あおさがニヤリと顎を向けた先は、ケンちゃんと出会った森よりさらに左側。
木々が密集していて、いかにも“何か出そう”な雰囲気の森だ。
......いや、絶対なんかいるでしょ。
強い敵が襲ってきたらどうしよう。
不安な気持ちが顔に出ていたのか、ケンちゃんがそっとフォローしてくれた。
「師匠、大丈夫です。聖獣たちがついていますし......僕も、頼りにならないかもしれませんが、何か出た時は戦いますから」
弟子に気を遣われる師匠ってどうなの。
しかも39歳も年下に背中を押されるって......
うん、まあ私は慎重派だからね!
堂々と"しぶしぶ"といった雰囲気を出しながら了承する。
「ケンちゃんは風の扱い上手だったよね〜。
今回は“土”を試してみようか。土の魔法って言ったらどんなイメージがある?
私のイメージは、そうだなぁ......土の壁とか、落とし穴とか?」
するとケンちゃんは少し考えてから、落ち着いた声で言った。
「そうですね......土は、状況を“制御する”力だと思います。
地面を盛り上げて進路を変えたり、逆に沈ませて動きを止めたり......。
直接攻撃するより、相手の動きを封じるという感じでしょうか。
もし使いこなせれば、師匠が安全に動ける時間を作れるはずですし」
ケンちゃんの方がよほど実践向きで想像力が豊かだ。
そりゃそうだよね。魔物なんて、私にとっては“読んで楽しむファンタジー”の存在でしかない。
リアルな想像なんて難しい。しかもこちとら50歳目前ですよ?
目的地に向かって歩きながら、
「こういう時は?」「じゃあこういう敵が来たら?」とシミュレーションを重ねていく。
ケンちゃんはその間も、風で草をスパッと切る技――いや、魔法?――を何度か見せてくれた。
森の入り口に着いた。
ここら辺の草の背丈は膝くらいまであって、木々にはツタがぐるぐる巻きついている。
もう、今すぐにでも何か出そう――そう思った瞬間。
「キーーーー!!」
けたたましい鳴き声とともに、鳥がバサバサッと飛び立った。
......いや、飛び立ったんじゃない。
こっちに向かって飛んできた!!
「え!?いきなり!?ちょ、待っ――」
反射的にしゃがみ込んだ私の頭上を、黒い影がビュンッと通り過ぎる。
風圧で前髪がふわっと持ち上がった。心臓が一拍遅れて跳ねる。
「し、師匠、大丈夫ですか!」
ケンちゃんが慌てて背中を支えてくれる。
いや、支えられるほどのことはしてないんだけど、気持ちはありがたい。
「だ、大丈夫......大丈夫だけど......心臓が......心臓がびっくりしてる......!」
完全に不意打ちだった。
森、怖い。もう帰りたい。
みとが呆れたように言う。
「ただの鳥だろうが。あれくらいで怯えてどうする」
「いやいやいや!“ただの鳥”の速度じゃなかったよ!?
あれはもう、初速から殺意あったよ!?私の前髪持っていく勢いだったよ!?」
とろ豆が尻尾を振りながら笑う。
「麻美、かわいいところあるね!ひゅってしゃがんで!」
「かわいさとかどうでもいいから!!寿命削れたわ!!」
あおさがニヤリと笑いながら、森の奥を見やる。
「ま、今のはただの挨拶みたいなもんだろ。
本番はこれからだぜ?」
......やめてよ、その“本番”って言い方。
こっちはもうすでに本番終わったくらいの疲労感なんだけど。
ケンちゃんが、私の不安を察したのか、そっと言った。
「師匠、僕が前を歩きます。
何かあっても、まず僕が受け止めますから」
その言葉に、また胸がキュンとなる。
いや、ほんと、なんでこんな頼もしい子が私の弟子なの?
ありがとう!といいかけて、寸前でそれはダメ!と断る。
だって、さすがにそれは情けなさすぎる。
でも一瞬甘えそうになった。私だって怖いものは怖い。
そうして私たちは(私だけ)、鳥の奇襲で心拍数を上げたまま、
いよいよ“実践訓練”の森へと足を踏み入れた――
――
麻美は五属性を受け止められる器として祝福されていた。所謂、素質もちだった。
祝福とは器の大きさでもあり、麻美の生き方や心のあり方が器を育てていた。
聖獣たちはその器特有の香りに引き寄せられていた。
だが、なぜ麻美がこの世界に飛ばされてきたのか、また麻美の香りが何なのかは、まだ誰にも分からない。
――
作者にもわからない。
誰か教えて!




