14 虫退治と少年
少し緊張しつつ、一歩中に入ると森の空気がふわっと流れ込んできた。
木漏れ日が幾重にも重なって、まるで光のレースが揺れているみたいに神秘的だ。
「うわ、気持ちいい......
なんかマイナスイオン感じるね~。
いいね、この森。すごく好きかも」
森の中は静かで、鳥の声が心地いい。
みと達は思い思いにあちこちの匂いを嗅ぎながら楽しそうに歩いている。
前に家族でハイキングに行ったあの森に、どこか似ている気がする。
その時の事を思い出した途端に胸がキュッと苦しくなる。
(ダメダメ!今は、考えるのをやめよう......)
楽しそうな犬モンたちをのんびりと追いかけるように歩き続けていた。
そのとき——
あおさが耳をピンと立て(いや、耳なが!)、
突然ピタッと止まった。
「え、なに?急に止まらないでよ。
どうしたの?何かいるの?ちょっと怖いんだけど......」
次の瞬間、5匹はためらいなく森の奥へ走り出した。
私は慌てて後を追う。
「ちょっと待って!
そんな急に走らないで!
母ちゃん体力に自信あるけど瞬発力はないんだから!
ほんと、置いてかないで!!」
必死に追いかける。
下の子の保育園の運動会以来の全力ダッシュ。
......もう......ムリ......
そう、根を上げそうになったとき——
木に寄りかかるようにして少年がいた。
あちこち泥がついてボロボロの少年。
そして、その少年を囲む黒い影。
座布団くらいはありそうな大型の虫みたいなのが、うじゃうじゃいる!
......え、あれって魔物!?でか!気持ち悪い!
「え、ちょっと待って!?
この世界、魔物いるって聞いてないんだけど!?」
犬モンたちがすでに異質な存在なことはこの際おいておこう。まず、見た目が違う。
あおさが護るように少年の前に飛び出し、
見たことない顔をして威嚇している。
(やばい、これ私がなんとかしないとダメなやつなんじゃ......
いやでも攻撃魔法なんて使ったことないよ......
ああ、どうしよう!どうしよう!なんなのあの虫!!
ゴキブリみたいな見た目でほんと気持ち悪い!!
てか、そうかゴキブリか!!!!)
その瞬間、頭に浮かんだのは——
黄色い筒の、あの入れ物。
(あれだ!ゴキブリ退治の!
煙で全部やっつけるやつ!あれでいけるんじゃないの!?
......イメージは大事、イメージは大事!!)
はやる気持ちを抑え、素早く、深呼吸を繰り返し、
私は両手を広げ、お願いします神様!と祈って思い切り叫んだ。
「バルサンダーーーー!!」
空気が一瞬だけ止まった、
次の瞬間——
ボカンブシュー!!!!
私の手の先から森一帯に白い煙のような光が広がり、
魔物たちが一斉にバタバタとひっくり返った。
しばらくはいくつもある脚をひくひくと痙攣させていたけど、
それも次第に止まって完全に動かなくなった。
「え、ちょ、待って......
威力つよっ!!やっぱりサンダーつけたのが良かった......?」
あおさたちはこっちを見て尻尾を振りながら、
”母ちゃんすげぇ!”みたいな顔をしていた。
とっさの思いつきだったけど、結果オーライだ。
えへん。母ちゃんだって、やるときゃやるのよ!
サンダー。強そうだからつけたくなるのわかる。




