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魔女のいない世界で  作者: 海乃果
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 この地下通路は何かおかしい。


 入ってすぐに携帯電話が圏外になっている。


 そして、日本では絶滅しているはずの狼。


 隊長は最上だが依頼者クライアントは瞬である。


 この後、まだ進むのか来た道を引き返すのか。


 ただ、先に進んでも見通しは全く立たない。


 戻るより他ないように思えた。これ以上の犠牲を出さないためにも。

 


 亜香里の遺体は置いていくことになった。


 近藤の悔しさは想像を絶するものだったろうが、そもそも亜香里を守れなかったのは自分の責任と考えている。


 「待っていろよ、亜香里」


 そう言って亜香里の冷たくなった頬をぽんと叩く。



 最上隊長と瞬は魔女の館に戻るということで合意した。


 6人は来た道を歩いて戻る。


 しかし、15分ほど歩いたところで先頭を歩いていた近藤から無線が入った。


 ”近藤から隊長へ”


 ”最上だ”


 ”水です、すごい量です、おそらく天井まで埋まっています”


 最上が確認に行くとその通りだった、これで退路は絶たれたということか。


 近くを流れている浅川の水なのか、大量の水がどんどんと迫ってくる。


 6人は水から逃げるように西へ進む。


 そして6人が驚愕する出来事に直面する。


 横たわっていたはずの亜香里の遺体がない。


 狼が食い散らかしたような痕跡は見られなかった。


 もちろん、狼が亜香里の遺体を引きずって巣まで持ち帰っている可能性もあるが。


 しかし迷ってはいられなかった、後方からは徐々に、しかし確実に水かさが増していっている。


 6人はやや早足になって奥へ奥へと進む。


 

 近藤と本隊の中継のために配置していた亜香里がいなくなったことで近藤は本隊にやや接近した位置で先行している。


 近藤も山田も隊長も加賀副隊長も狼との戦いで手傷は負っているが誰も治療のことは口にしない。


 痛みの傷が亜香里に対する贖罪しょくざいになると考えているのか。


 3時間ほど進んだところで隊長から休憩の合図があった。


 凛が限界だった。


 後ろから迫っていた水はだいぶ引き離せた。


 最上がタブレットで確認するが現在地が分からない。


 おそらく平川城址公園駅から10キロは西へ進んでいるはずだ。


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