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干天の慈雨  作者: ゆうま
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安成晶と妹の手紙③

「自殺した娘さんのクラスメイト、全員昨晩から帰ってないんですって」


―――は?


今すぐにでも問い詰めたかった

でもなにか情報を持っているとは思えない

それになにか知っているなら内容を言わなくてもそれを臭わせることを言うはず

飛び出しそうになるのをぐっと堪えた


俺は知っている

狭い世界で生きている主婦という生き物

それは他人より多くの情報を持っていることを自慢したがる

それが有益だろうと無益だろうと関係ない


やはりなんの情報もないのか話題は別の方向へと向かっていく

美咲のクラスであったいじめについて

聞きたくなくて玄関の扉を再び開けた


「美咲のクラスメイトが昨日の夜から全員帰っていない――」


なにが起きてそんなことに

もしかして「なぎさくん」の仕業?

でもなんのために?

自分や美咲の復讐――とか?


馬鹿馬鹿しい

復讐に意味なんてない

私刑は犯罪であることに変わりはない

罪を犯すことを正当化した言葉

それが復讐


それに、そんなことをするような人物には思えない

ノートから読み取れる「なぎさくん」はもっとドライな印象

だけど感情はとても穏やか


そんな人物が復讐をするとは思えない

では、どんな理由がある


いなくなってから問題になってる

それは全員ある程度の自主性を持って姿を消したと考えられる


姿を消すことに関して、多少の脅迫等はあったと仮定する

それはいじめが起きるようなクラスがまとまってなにかをするはずがないと思うから

平等であるはずなのに弱者と強者がはっきりしている

そんな組織がまとまることはない


姿を消すことでなにが起きるだろうか

重要になるのはやはり「なぎさくん」だろう

仮に「なぎさくん」がそうさせたとして、目的は?


美咲と深く親交があったはず

それなら美咲がメッセージを他に遺すことは考えただろうか

だとすると―――

もしかして「なぎさくん」は自分を特定されたくない?

でも美咲が遺したものに本名が書いてあるかもしれない


それに「なぎさくん」は美咲の前にいじめられていた子だとしか考えられない

そんなものすぐに分かる


考えに耽って気付かなかったが、外はもう暗い

気付いたのは外が急に明るくなったから

太陽の光とは違う明るさ

炎のような―――炎?!


慌てて窓を覗くと燃えている

大きな火が周囲を明るくしていた

あの方向には学校がある


「なにが起きて…」


考察するには情報が少な過ぎる

美咲の願いを叶えるためにはまず「なぎさくん」を特定する必要がある

それには情報が必要

待っていてもなにも起きない

自分で収集するしかないんだ


靴紐をしっかりと結んで駆け出した


やはりと言って良いのか、燃えているのは学校だった

やけに人が多い

その理由はすぐに分かった


生徒がいる

クラスひとつ分くらいの人数の生徒だ


抱き合う親子

泣く親

叱咤する親


ここにいる生徒は恐らく――いや、絶対に

美咲のクラスメイトだ


「28人、全員いるな」

「え?確か先生のクラスって30人じゃなかったでした?」

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