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干天の慈雨  作者: ゆうま
39/57

和咲と安成美咲④

変化はある日突然現れた


「おい、安成美咲」

「なに?」


同じグループのはずの3人が蔑んだような目で安成さんを見ている

呼び方も違う

でも安成さんは気にすることなく

――いや、というよりも

知っていた、分かっていたかのように普通に返事をした


「お前の父親浮気して逃げたんだって?」

「一文無しじゃん。なんで学校来てんの?」

「十分な額は置いて行ってくれたからね。卒業まで学校に来られるよ」


刺々しい言い方にも丁寧に対応する

それどころか微笑んだ


「心配してくれたの?ありがとう。でも大丈夫だよ」


そんなはずはないと分かっているはず

それが神経を逆なでることも

なにが目的でそんなことを


「なんでアタシらがお前なんかの心配しなくちゃいけないわけ」


少なくとも昨日までは友達だったはずなのに

酷い言い方


「そうだね」


確かに絆のようなものはなかった

そう思えるグループだった

でもそれでも、5人は確かに友達だったはず

5人の中で立場が変わるくらいなら分かるけどなんでここまで


「安成さん、これまでのお詫びにお昼ご飯をご馳走させてくれないかしら」

「お詫びしてもらうことなんてないよ」


ボスの発言はあまりにも不自然

でも安成さんはその意味を正確に理解して発言を返したように思える


意味の分からない会話

クラスに影響力のあるグループの突然の仲違い

当然クラスはざわつく


「ここでは騒がしくてまともに話が出来ないわね」

「そうだね。静かなところに移動しよう」

「分かった」


なんでそこで素直に立ち上がるの

こんなこと分かり切っているはずなのに

静かなところ、つまり人目のつかないところ

そこでなにが起こるかなんて容易に想像出来る


「待って」


流石に黙って見送るなんて出来ない


「なにかしら」

「もう少しで朝礼の時間だから教室にいた方が良いんじゃないかな」


今までそんなことを言ったことは一度だってない

素直にいじめられていた

だから教室のざわめきの種類が少し変わったことは想定内

きっと安成さんを庇う理由は誰にも分からない


「急にどうしたのかしら」


ボスがクスクス笑って近づいてくる

でもそんなことには動じない


「一応クラス委員だから。忠告はしたからね」


これくらいで下がらないと不自然

今のでも十分不自然だけど


「ありがとう。でもすぐに戻るわ」


やっぱりそうなるか…

だったら下手に声をかけない方が良かったかな

いいや、安成さんに少しでも助ける意思があることを伝えないと

それは早い方が良い


「それなら良いけど時間には気を付けてね」

「分かったわ」


5人の足音が教室から遠ざかる

それを確認してから隣の席の男子が小さな声で尋ねた


「おい、和。お前逃げられるかもしれないのになにやってんだ」


その目は真剣だった

可愛そう

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