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双子獣人と不思議な魔導書  作者: 夜色シアン
第四幕・ラグナロク
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4-11日喰

日喰(トワイライト)


「ハティ! スコル! 伏せろ!」


 先に打って出たのはソール。小柄ならではの身軽な身のこなしで一瞬にして間合いを詰めるといつの間にか()()()()()()()()を横に薙ぐ。


 直前にアルヴィースが指示を出したことではティたちはその場に伏せる。もし剣があったなら間違いなく首を落としていただろう。だが一息吐く暇はなく二人の頭上に風を切る音が強く耳に残った。


 何が起きているのか頭の中で理解が追い付かない。


 だが離れて見ていたアルヴィースとアルミラージにはしっかりと風を切った何かを捉えていた。


「ハティ! スコル! 頭は上げるな! 横に飛むぐ!」


「余計な口出しはダメだって、ね? その口塞ごうか?」


 突然背後から口を塞がれるアルヴィース。いつの間にか背後を取られてしまい口を小さな手で塞がれて更には喉元に短剣を突き付けられる。アルヴィースには戦うすべはなく、死を目の前にした彼女は冷や汗で額を濡らし、涙を流しながら背後にいた者の言う通り口を塞いだ。


 けれどぎりぎり指示を出すことはできており、ハティたちは立ち上がらずに横に飛んだ。


「せっかく楽に死ねたのに。仲間がいてよかったね。でももう外野の手助けは禁止。そこの二人、もし手を出そうとしたらそのまま死ぬからねー? できればあなたたちは殺したくはないから、マーニと一緒におとなしくしててね」


「ソールさん……本当にやる気なんですね」


 くるくると剣を回してハティを見つめるソール。その近くに黒く引き裂かれたような跡があり、そこはハティたちが伏せていた場所でもあった。


 先ほどまではなかった黒い痕跡。考えられるのは直前にソールの剣。今は刀身があるが、ハティたちを切ろうとした際は柄だけだった。彼女が言った日喰(トワイライト)という言葉にも間違いなく意味があるだろう。


 そしてその正体を意外にもスコルが見抜いた。

 

「ハティ……あれやばいかも~……なんとなく直感でわかるけど~……あそこの空間が切り取られてる感じする~」


「ん~バレちゃったら仕方ないね。その通りだよ。日喰(トワイライト)は空間を一時的に切り取るんだよね。当然そこにいたものも切れるんだけど、ちなみに残った空間に当たっても切れちゃうからねってこれ言ったら対策されそうだけど、まあいいか。二人とも私の速さについてこられてない感じだったし」


 そういうと手で遊んでいた剣を振りかぶり、ふっとその場から消えた。


 先ほどと同じように現れて切られる予感がして飛びのく二人。けれど瞬きができる時間ほどの遅い判断により、ソールの攻撃がスコルの足を掠めた。


 深くはない傷だが、切られたという感触というよりも、切られた場所が今の今まで存在していなかったような無の感覚。だが力めば当然痛みが生じ、そこで漸く切られたという事実に気づくこととなる。

 

「大丈夫ですかスコルさん!」


「だ、大丈夫~……ちょっと痛むけど、動けるよ~……」


 ハティを心配させまいと、やせ我慢をしているが足を痛めたことで膝を地面につけていたスコル。相当な痛みが彼女を襲い、顔色が一気に悪くなる。


 また、もう一度同じ攻撃が来たら先ほどと同じように逃げることもできないということも感じていた。


 それは当然切った側にも知られていることで、ソールの狙いが二人からスコルへと絞られていた。

 

「へえ、今の躱せるんだ。順応能力高いね。でもたかが浅い傷とはいえ痛いでしょ? 切られた感覚は一切ないからこそ、切られたって事実が急に来ると通常の痛みより激しく痛むらしいんだよね。で、その痛みじゃあ当然次の攻撃は躱せないよね?」


 まるで一方的な暴力。今の力をもってすればハティもスコルもつらい思いをすることなくあの世へと送り出せていただろう。だが、敢えて痛めつけるように、敵わない相手を前にして絶望を浮かばせさせるように、ソールは手を抜いている。ヨルムンガンドの破壊だけでなく絶望と魂も終末(ラグナロク)の効力を最大限に引き出すために必要なものなのだから。


「それじゃあ。スコル。ハティに最後の言葉を言いなよ。そのあとは楽に殺して、ハティも後を追わせてあげるから」

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