第74話 乱入者
夜の帳が完全に街を覆い、夕飯を終えた俺たちは明日に備え早めに就寝することになったのだが、ここで問題がおこる。
「「ユウキさん(マスター)の隣で寝るのは私です!」」
「あらあら、2人ともそこは譲れないわね〜、私も参戦していいかしら?」
「…俺ソファーで寝ようかな」
「「「ダメ!!!」」」
「あっ、はい…ルビー?とりあえずこっちで行く末を見守ろうか…」
「あーい♪ルビーはパパと寝てもいいよねー?」
「もちろん!あっ、て事で3人とも枠は1枠しかないからなぁ〜」
「くっ、まぁいいでしょう…流石にルビーちゃんの席は取り上げられないので…」
「見た目なら私も幼いのです!ならここは私に譲るべきなのです!」
「それならルビーの母親は私だし、両サイドを親子で寝るのがいいと思うのよね〜」
一歩も引かない3人…せっかく早く寝ようと思ってるのに、いつまで経っても眠れそうにないな…
コンコン…シーン…
突然ドアがノックされ静まり返る室内…
あいつらが煩すぎてクレームか!?と思ったが既に防音結界を張ってるので音漏れの心配は無い…ではなぜ?と顔を見合わせていると、鍵をかけていたはずのドアが、ガチャリとドアノブが回され、何故か徐々に開き始める。
スローモーションに感じる程の緊張感の中…臨戦態勢を整えた俺たちが侵入者と対峙する。
…え?!なんでこいつらが!?
そこに居たのは2人…見知った顔であった。
「こんばんはユウキくん…話をキカセテモライニキタヨ?」
「ゆうちゃん…不純異性交遊はよくないと思うなぁ…ねぇ…?」
「神咲…雪姉…?なんでここが…」
「それはね…ユウキくんが良く知る女神様からスキルを貰ったの…ユウキくんの居場所とかが何処に居ても分かる魔法を…ね?」
「それで紅葉ちゃんがゆうちゃんが女の子を侍らせてたって聞いて、私も様子を見に来たんだけど…どうやら教育が必要なようね…?」
「あんのクソ女神!!!やりやがったな!?」
「「いいから正座」」
「あっ、はい…」
「「「「……」」」」
こんな時、我関せずなのがうちの女性陣である。さっきまでの煩わしさは息を潜め、この場の行く末を見守る側がスリーアウトどころか既にコールドゲームレベルでアウトになってる俺と変わる。積んだわコレ
早寝は無理そうだな…とほほ…
その後…
「それじゃあユウキくんは…リリアさんとローズさんとつ、付き合ってると…?」
「それでそっちの女の子はローズさんの娘さんで、こっちの子はレジェンダリーウェポンだと…?」
「えぇ、その通りでございます…」
「なるほど、堂々と二股してる。そういう事だよね?」
「グッ…お、おっしゃる通りでございます。はい…」
「あ、あの〜お二人とも…?そろそろ許してあげても…」
「「泥棒猫は黙ってろ」」
「うぐぅっ!?すみません…」
リリアから差し伸べられた救いの手は、鬼のような2人の前ではただの枝であった…秒で折られてしまった…なんとかしてくれ!という想いを込めてミスティに視線をやる…
「!?…さぁ、ルビー?こっちで絵本を読んであげるのです」
!?!?目があった瞬間流れるような滑らかな動きでくるっと方向転換し、ルビーと共にソファーの方へと移動してしまった…ウラギリモノメェ…
「ちょっとユウキくん?話聞いてるの!?」
「あっ、はい。聞いております…」
なんで俺こんなに怒られてんの!?と思ったが…2人は俺の事を好きだという事を知っている。まぁ、好きな男が久しぶりに会ったらハーレム野郎になってたらそりゃキレるか…と無理やり納得し、怒りを受け入れる事30分…
「はぁ…それでゆうちゃんはどうしたいの?」
「ん?どうしたいって…この2人を…って事?」
「そうだよ?2人とも…その彼女だとしたら…2人と結婚はできないでしょ?」
「いや、結婚て…もしそうなってもこの世界は一夫多妻が普通だから、日本とは違うからな?だから、2人とも嫁にするつもりだけど…」
「「お嫁さん…えへへ」」
「「ちっ、惚気んな…」」
「ひぃ…すみません」
リリア達を見る2人の目が恐ろしすぎて思わず謝ってしまった…今の2人には魔神族ですら裸足で逃げ出すんじゃないか…知らんけど
「ちょっといいかしら?2人とも素直になったらどうかしら?あまり僻むのも良くないわよ?」
「す、素直になるって何をですか?」
「べ、別に僻んでなんてないですよ?」
「…そこに座ってる私の恋人から聞いたけど、2人とも好きなんでしょう?なら、私達も恋人にしてくださいって言っちゃえばいいじゃない」
「「は!!?ユウキくん(ゆうちゃん)から聞いた!?」」
「あー、すまん!アメジスティア城のテラスでの会話を聞いてたんだよね…あそこに隠れてたら2人とも来たからさ…」
「そ、そんな…じゃ、じゃあ私の気持ちは…」
「2人が俺を好きって事は申し訳ないけど聞いちゃったんだよね…」
「ゆ、ゆうちゃんは…その…私に好きって言われて嫌じゃないの…?」
「なんで?嫌なわけないじゃん…寧ろどうやって2人を説得するか考えてたし」
「「説得…?」」
「だってほら、俺たちの世界では一夫一妻が当たり前で、多妻なんて常識の範囲外だろ?そこで俺が2人に付き合ってくれって言ったら反感を買うんじゃないかなってね…まぁ、案の定だったけど」
「そ、それは…じゃあユウキくんは私とその…恋人になってくれるの…?」
「もちろん!神咲が嫌じゃなければだけどな…」
「わ、私とも付き合ってくれるの?その…少し歳が離れちゃってるけど…」
「いや、離れてるって言っても5つしか変わらないじゃん…それに年齢は関係ないよ?俺は雪姉が俺のこと好きって知った時凄く嬉しかったしね」
「ゆうちゃん…なんかうじうじしてたのがバカらしくなって来ちゃったわね紅葉ちゃん…」
「そうですね雪先生…」
「はは…て事で2人とも俺の彼女になってくれるかな…?」
「本当はもっとロマンチックな所で告白して欲しかったんだけどなぁ〜」
「私は教師の時点でちょっと諦めてたから何処でも嬉しいよ?」
「あっ、ずるいですよ先生!」
「「私達をユウキくん(ゆうちゃん)の恋人にしてください」」
こうして修羅場は終わり…ハッピーエンドで眠りにつくことができそうだ。
余談だがその晩、ユウキの部屋に泊まっていくと言った2人がリリア達とユウキの横を賭けた真剣勝負を繰り広げていたのだった。
次の更新は明日の正午になります!
いやー、どうなることかと思いましたがめでたし?で修羅場を終えられた…のか…?




