第08話 02 強い期待
夜になると、大体の戦闘は中断する。
その間に英気を養い、次の日の戦いに備える。これが一般的なサイクルである。
シルフィーネがゆっくりと空を見上げ星を見た。
「レオン・・・星はいつも通りに輝いてるよね・・・」
傍らにいたレオンは答えなかった。
シルフィーネは昼間の事を思い返していた。
「なぜ、天使の力があるのに、この戦いを静観しているの?」
イリアが強い口調で攻め寄った。
「・・・」
シルフィーネは苦笑いをして黙った。
「教えてよ!!」
イリアは更に詰め寄ったシルフィーネの視界一杯をイリアの顔が占めた。
「う~ん・・・」
何やら言いづらそうに視線を右上方に向け悩んだ表情をした。
「そうねぇ・・・・」
呟くように言葉を出し、イリアに視線を移すと
チュッ!
とイリアの唇にキスをした。
びっくりしたイリアが両手で口を押えながら後ずさりする
「近づきすぎなんだってば!!」
シルフィーネがイリアにそう言うと
「・・・な・・・・な・・なんなのよ!!あなた結構破廉恥ね!!」
怒涛の抗議が来た。
「そういうあなたは、天使の力をどう思ってるの?何でもできる力?強大な力?」
シルフィーネがイリアに問いかけた。
「うっ!」
イリアは言葉に詰まった。確かに・・・このやり取りに近いことを昔見た気がした。
魔法が使えない者からの言葉を思い出した・・・
”なぜ助けてくれないの!!”、”なぜその力で未然に防ぐことができなかったの!”
そんな言葉を投げかけられたこともあった。
魔法を使えない者からすると万能に見える魔法も実は局所に有能であり万能ではない。過度な期待に対しては応えきれないのが実状だ。
「あら・・・黙ったわね・・・」
シルフィーネから言葉が出た。
「じゃあ・・・何ができるのよ・・・」
イリアから絞り出すように言葉が出た。
「レオン、私なにができたっけ?」
とぼけるようにレオンに問う、
「こっちに振るのかい!」
迷惑そうに言うレオンが「う~ん」と上目遣いに考え始めた。
「炊事洗濯はしないよねぇ・・・」
「こらこら・・・もうちょっといいほうへフォーローしなさい!!」
ムスッとした表情で抗議した。
そう、特別に何かできるかと言われると答えるのが難しいのだ。
国を滅ぼすということになれば、よほどの強者がいなければ普通にできる力はあるが、今欲しい力とは違うはずだ。
そういった事を説明した。
「結局は・・・強大な力はあるが、万能な力なんて無いって事よねぇ・・・」
イリアは昼間の事を思い返しながら、星空を見上げるシルフィーネを遠目で眺め、過剰に期待した自分を反省した。
「レオン、私は、どうすればいいのかなぁ・・・」
見上げていた視線を地面に落とし、シルフィーネはレオンに問いかけた。
シルフィーネのその問いに、呆れた顔のレオンは
「もう決めてるのなら、聞かないほうがいいんじゃないか?」
そう返した。その返事にシルフィーネは頬を膨らませ
「もう!つまんない返事ね!」
プイと横を向いた。
短い時間そのままそっぽを向いていたが、レオンが冷静にこちらを伺っているので、耐えきれずに目だけ上目遣いにレオンに向け
「・・・いいの・・・?」
小さな声で聞いてきた。
その姿を見てクスクスと笑みを浮かべたレオンが
「俺はお前の呪にかかってるんだ。」
そう言うと、ニカっとした満面の笑みに変わり
「お前と共に」
迷いなく言った。
シルフィーネは、左手の手首に現れた蛍火のような淡い明かりを確認すると
「知らないわよ、後悔しても。」
楽しげにそう言った。




