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episode.10 Blessed wedding.


カイン様からのまさかの『今すぐ結婚したい』発言の翌日、カイン様が我がヴァロワ家に結婚(をわたくしが了承した件)の報告に来てくださったの。


「2ヶ月前くらいかなぁ、カインズ君が突然魔法省に来てね、『半年たったら結婚させてくれないか』って直談判してきたんだよ。最初はつっぱねたんだけどさ…それから2ヶ月間、夜になるとほぼ毎日来てね…私も絆されちゃったよね」


と、お父様。

…え、2ヶ月前って、婚約してまだひと月の頃じゃありませんの?


「お母様の所にもその頃来てくれたのよ。お母様は2人がとても相思相愛なのを知っていたから即OKを出したのよ?ロティが16になればもう成人だし。なのにローレンスが渋っちゃって」


と、お母様。

お母様、即決すぎませんこと?

出来るだけわたくしに長く家にいて欲しかったのでは…?

ポカンと両親を見つめていたわたくしに、お兄様がコソッと耳元で囁いた。


「俺も父上と母上から聞いて、良いんじゃないかって答えたんだけどさ、父上がほら、ロティを溺愛してるから嫌がってね。でもアホな王家とかがまた横槍入れてきても困るし、他国にもロティの才能は知れ渡ってるから、早く結婚させてあげないとロティが他国に攫われるかもよって父上を脅したんだ。上手くいって良かったよ」


お、お兄様、お父様を脅しましたの!?

てかわたくし、なぜ他国に知られてますの!?

怖いんですけど!?


色々情報過多で倒れそうよ。


「そ、そうなのですね…」


「ん?ロティは嬉しくないの?まだ結婚したくないなら、シュヴァリエ先生には悪いけど…我慢してもらう?」


「そうなのか!?ならやっぱり卒業後に…」


「い、いえ!嬉しい、ですわ」


「…嬉しいのか…チッ」


お父様、今舌打ちしました?

カイン様はほっとしたのか「あ、焦った…」とか呟いているわ。


「でもさすがに式が3ヶ月後というのは、準備が間に合わないのではないかしら?」


「あら、大丈夫よ。ロティのウェディングドレスについては、お母様とリュシーちゃんとカインズ君とで、もう準備に入っているから」


ホワッツ!?

わたくし、採寸された覚え…ありましたわ。

1ヶ月くらい前に、突然お母様が呼んだお針子さんに採寸されましたわ。


「式場はロティが気に入っていた、辺境伯領にある古代の教会を考えているんだけど」


「なんてこと!?嬉しい!!カイン様、ありがとうございます!!大好き!!」


カイン様の言う古代の教会っていうのは、辺境伯領の領地にある古代遺跡群の中にある教会で、カイン様率いる研究グループが、残っている資料を調べて、建てられた時の状態に修復した、とっても素敵な教会なのよ!


「ロ、ロティ…私の前でカインズ君に好きとか言わないでくれ…凹む」


「カインズ様は本当にロティの事を分かってるわよね〜」


「ははは、ロティは本当に遺跡とかそういうの好きだもんねぇ」


項垂れるお父様と、呆れつつもわたくしをよく理解しているお母様とお兄様。


「だってあの教会、カイン様達が復元した教会で、造りもとても素敵なのよ!」


『なになに?ロティ結婚するの?』


『へぇ〜!早いねぇ!』


『おめでとう、シャーロット!』


『カインの嬉しそうな顔…すげぇ溶けてんぞ』


『だってカイン、ロティのこと大好きだもの』


『さすがの僕らも、カインの愛には敵わないよねぇ』


いつの間にやら精霊さん達まで現れたわ。

わたくしの精霊さんたちは、普段自由にしていてもらっているから常にわたくしのそばにいるわけではないのに、いつも絶妙なタイミングで現れるのよね…。


『僕らも結婚式ではお祝いするからね!楽しみだなぁ!』


『精霊王、連れてこようぜ』


『いいわね!精霊王に何かさせましょ、虹とか』


なんだか、聞かなければ良かった単語が飛び交ってるわ。

精霊王を結婚式に招待…聞かなかった事にしましょう、そうしましょう。



こんなやり取りがあった日から数日後。

結婚式の相談とかの諸々で、わたくしはシュヴァリエ家に来ていたの。


「ロティに話しておかなければいけない事があるんだ」


な、何かしら…最近甘い甘いオーラを纏っていたから、とても真面目なカイン様は久しぶりだわ。


「ロティは、『王家の影』って知ってる?」


「はい、存在くらいは」


「実は…シュヴァリエ家は、代々その王家の影を担っている家なんだ」


「…ああ!ジャパニーズニンジャ!」


「えっ?ジャパ…なに?」


「失礼しましたわ、ええと、学院でカイン様が呼ぶと現れていたあの、黒い方達…でしょうか?」


「あ、そうそう。あれだよ」


「ん…?ということは、カイン様もその、影、なのですか?」


歴史・遺跡研究者ではなく?


「…うん。表向きは歴史研究者で、本職は影の頭領、かな。あ、もちろん所持している歴史研究者や遺跡研究者としての仕事をする上で必要な資格とかは本物だし、なりたくてなったんだよ?」


「そうなのですね」


「うん………え?」


「はい?」


「えっと…終わり?」


終わりとは…?


「他に何か聞くべきことがあるのですか?」


「あー、いや、なんていうか…言えなかったとはいえ、今までロティに黙っていたし…なんていうか、王家の影って良いイメージないでしょ?」


「そうですか?うーん…王家の影って、国内の反乱分子を調べる為に潜入したり、他国で諜報活動をしたり、件のバカ王子の素行調査とか、そういったお仕事をされる方達ですわよね?とても大変で、大切なお仕事だと思いますわ。気になることと言えば、カイン様がお仕事でお怪我なさらないか、くらいですわね」


所謂あれよね、特殊工作員とかCIAみたいな。

それに、多分お父様は知っているはず。

その上でカイン様との結婚を勧めてくれたのだもの、何も心配していないということよね。


「そっか…ははっ、そっかぁ」


「カイン様?」


「やっぱり、ロティは最高だ。ははっ」


ご機嫌に笑い出したカイン様は、この後しばらくわたくしを抱きしめておられたのだけど、とても小さな声で「嫌われなくて良かった」って仰ったの。

そんな事で嫌いになるわけありませんのに、ね。




そんなこんなで、気付けば今日は結婚式。

果てしなく広がる青空だわ。晴天だわ。


「ロティ…綺麗だ。凄く綺麗だよ」


今日も笑顔が絶好調に甘いわ、カイン様!

そして純白のスーツが眩しい!素敵!好き!


「カイン様も、とても素敵ですわ」


「ありがとう。それじゃ、行こうか。私のお嫁さん」


「コルァ!ロティはまだ嫁ではない!花嫁を連れていくのは父親の仕事だ!まったく、隙あらば娘を攫いよって!」


お父様がまたもや極道のようなドスの利いた声でカイン様からわたくしをかっさらった。

カイン様は笑いながら「あ、バレましたか」なんて言ってるわ。


「お父様、今日はよろしくお願い致しますわ」


「うっ…私のロティが、ロティが…うぅぅ」


「あらあら、ローレンスったら。そんなだらしなく泣いていたらロティに呆れられてしまうわよ?」


「お父様、わたくしは今日でヴァロワ家の娘を卒業しますわ。寂しいけれど、笑顔で見送って欲しいですわ」


「卒業だなんて!ロティは嫁に行っても、ずっと私の娘だっ!」


「そうよロティ、あなたはずっとわたくし達の天使なのよ」


「そうだよ、ロティはずっと俺の可愛い妹だ」


「わたくしにとっても可愛い可愛い義妹よ、ロティ」


ああ、良い家族に恵まれて、わたくし本当に幸せだわ。


実は貴族の子供って、『貴族の家に生まれた子供』というだけで地位なんて無いから、ぶっちゃけ平民と大差ないのよ。

偉ぶってる貴族令息や令嬢は親の地位イコール自分の地位って勘違いしちゃってるだけの、ただの頭の痛い平民。

だから令嬢が爵位持ちの貴族に嫁ぐというのは、そんな生まれが恵まれただけの平民だった娘が初めて『貴族夫人』という地位に就くという事なの。

そうなればもう親娘関係なんて関係なく、地位的には両親と同等な存在になるのよね。

そうなれば娘としての庇護は受けられなくなるし、親娘の関係は変わっていくのが普通なのだけれど、嫁いだ後も何も変わらないと言ってくれる家族を、わたくしはとても愛してるわ。


「ふふ、ありがとうございます、お父様、お母様、アンリお兄様、リュシーお義姉様。大好きですわ」


アンリお兄様は今年の初め早々、婚約者だったリュシーお姉様と結婚したの。

まさか同じ年に兄妹揃って結婚するなんて、わたくしもびっくりよ。


お母様とリュシーお義姉様がさらに泣き出したお父様をなだめすかし、無事、バージンロードを歩く事が出来たの。

さすがのお父様も、自分の手からカイン様へとわたくしを渡す際、ごねることもなく、「娘を任せたぞ」なんて言って、カッコよく引き渡してくれて…ちょっと泣きそうだったわ。


結婚の誓いは、祝福の時と同じく使徒様が執り行ってくれる。

女神様と神様に、この2人が夫婦になりますって報告をして下さるの。

詳しくは知らないのだけれど、とても相性のいい夫婦なんかだと、女神様と神様からなんらかの祝福が得られるんですって。


ご高齢の使徒様の前にカイン様と並んで跪き、使徒様の誓いの言葉に答え、跪いたままで婚姻の書類に魔力印を押す。

それを確認した使徒様が女神アウラと神シンドラにそれを告げた、その瞬間。

遺跡跡は芝生のみで、花は植えられていないはずなのだけど、突然ブワッと絨毯のように花が咲き誇ったのよ。


「これはっ!おおお、なんと素晴らしい!女神アウラと神シンドラが、おふたりをとても祝福されておられる!2人手を取り合い、末永く幸せな夫婦になっておくれ」


ご来賓の方々の歓声の中、涙声のご高齢の使徒様に、孫に見せるような優しげな笑顔でそう言われたわたくしとカイン様は、見つめ合って、やがてどちらからともなく微笑み合った。

カイン様が先に立ち上がり、わたくしに手を差し伸べる。

その手に手を添えて立ち上がり、カイン様と向かい合った。


「誓いの口付けを」


ドキドキするわたくしに、カイン様が一歩近付いて、ゆっくりとヴェールを上げる。

カイン様が息を飲む声が聞こえて、伏せていた瞼をあげれば、愛しい方の愛しさに溢れるお顔がそこにあって。


わたくし達は誓いのキスを交わし、この瞬間、夫婦になった実感を感じたの。


アンリとリュシーはまだ次期当主と次期当主夫人なので、侯爵夫人になるシャーロットの方が地位としては上になります。

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