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エピローグ
子どもたちが戻ってきた。
「ミランダとは会えたのか?」
と、大人たちは尋ねた。
「いいえ。もう、亡くなっていて、会えませんでした」
とルシアンはうつむいて答えた。
ミランダの墓に花を手向けて祈って来たという。
ハルシオン王は静かにむせび泣いた。
数年後、白亜の宮殿の玉座には新しい王と女王の姿があった。
ルシアン王は、キャサリン女王からラピスラズリの指輪をもらい、母親の形見として大事に指にはめていた。ルビーのはまった錫杖はキャサリン女王が手にしていた。
引退したハルシオン王は、翌年静かに息をひきとった。
一日に一度、王と女王は地下のハルシオンの棺に会いに行く。
「あなたの遺志を継いでこの砂漠の中の白亜の宮殿を治めています。どうか我々にご加護を」
そう言って、ルシアン王は黙祷を行う。キャサリン女王はそれにならう。
「砂漠の熱砂に襲われた旅人を救ってください」
その祈りは繰り返される。いつまでも、いつまでも……。