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宇宙防衛隊コズブレジェンダーズ!  作者: ハリエンジュ
第二話『ブルームアップ・ブレイブアップ!』
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その3 生まれて初めての、病

★宇宙防衛隊コズブレジェンダーズ! 

第二話『ブルームアップ・ブレイブアップ!』

その3 生まれて初めての、病


teller(語り手):犬丸(いぬまる)=スプリングフィールド


◆


 穂祈ちゃんが医務室で休むと言うので、おれも一緒についてくと――。


「はじめまして! わたし、コズブレ医療班所属のトルテ=エリストンと申します! 16歳です! なんとびっくり! 奇跡的に穂祈さんと同い年ですね! 精一杯お世話させていただきますので、よろしくお願いします!」


 アホ毛が一本ぴょんとハネた、パステルカラーっぽい明るいミントグリーンカラーの髪をセミロングにしたナース服の女の子が、おれたちを出迎えてくれた。

 おれと穂祈ちゃんと同い年……の割にはとても身長が高い。八重歯の高身長の

 トルテちゃん、と言うらしいその子は笑うと八重歯が覗いて、全身から人懐っこそうなオーラが出ていそうな気がする。


 穂祈ちゃんはきょとりと目を丸くしつつも、車椅子に座ったままトルテちゃんにおずおずと頭を下げる。


「穂祈……です。よろしく、お願いします……」


「……あ! おれは、犬丸です! 犬丸=スプリングフィールド! 穂祈ちゃんのコイビトで婚約者です! おれも穂祈ちゃんのリハビリ、せいいっぱいサポートしたいです、トルテちゃん!」


「おお、彼氏さんでしたか! じゃあ愛の力で根気よくリハビリ頑張っていきましょう! わたしもがんばります! じゃあ諸々の診察の前に……事情聴取が長引いたでしょうから、まずはお食事ですね! 犬丸さん、手伝っていただけますか?」


「うん! がんばります! 待っててね、穂祈ちゃん! おいしいごはん持ってくるからね!」


「ありがとう……犬丸くん……」


 柔らかく微笑む穂祈ちゃんが、とても可愛くて。

 おれはますます気合い十分、って感じで走り出したけど――おれはすっかり、おれの最悪な本質を忘れてたんだ。


 ドジなんて、レベルじゃない。

 学習しなくて、同じ失敗を何度も何度もやらかす。

 人の役に立ちたいって思ったら、絶対おかしな失敗して、逆に人を不幸にしちゃう。

 おれがそういうひどいやつで、人間もどきなんだってことを。



 だから、数十分後。

 おれは空っぽのトレーを手に真っ青になっていた。


 医務室のベッドに移された穂祈ちゃんにと勇んでスープを運んであげようとして、届ける直前でずっこけて。

 ――熱いスープを思いっ切り、無防備な穂祈ちゃんにぶっかけちゃったんだ。


「はわわわっ!? 穂祈さんも犬丸さんも大丈夫ですか!? ヤケドしてませんか~!? 穂祈さん、今お身体お拭きしますから、こちらに!」


 医務室を訪れていた時以上に、きょとりと目を丸くする穂祈ちゃん。

 とても綺麗な桜色の髪のあちこちから、スープがぽたぽたと滴っている。

 絶望で動けなくなっているおれとは違って、はっきりと穂祈ちゃんを助ける為にトルテちゃんが穂祈ちゃんを優しく抱えようとした時、やっと。


「……ご……めん……穂祈、ちゃん……」


 やっと、やっと、今更、情けない謝罪の言葉が出た。


 どうしよう。

 穂祈ちゃん、ヤケドさせちゃったら。

 痕、とか、残っちゃったら。

 残らなくても、熱かったよね、びっくりしたよね。

 ぐしょ濡れになって、気持ち悪いよね。

 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。


 おれを許してくれたこの子のことだけは、何が何でもおれがこの手で守りたいって、思ったのに。

 あんなに強く強く、思ったのに。


 おれはまた、穂祈ちゃんのこと、まで。


「……えへ、へ」


「……え……」


 場違いな、笑い声が転がった。

 穂祈ちゃんが、笑っていた。

 初めて出会った時、おれが穂祈ちゃんを抱えて逃げようとして転んじゃって、でも穂祈ちゃんが笑ってくれた、とき、みたいに。


「いきなり、あったかくなったの……びっくりして、いきなりすぎて、おかしくて……ふふ、うん、おかしい。……楽しい」


「……ほのり、ちゃん……」


「私も、犬丸くんもびしょ濡れになっちゃったね……でも、おそろいみたいで……私、うれしいな……」


 ――おれはまた、まだ、こんななのに。

 きみはまた、こんなおれを許してくれた。

 笑ってくれた。

 はにかんでくれた。

 おれなんかに、恋、してくれた。


 穂祈ちゃん。

 おれ、きみが――。


「……お犬(いぬ)」


「わぷっ!? ろ、狼(ろー)兄ちゃん!?」


 ぬらっと背中に気配を感じたかと思ったら、乱暴な手つきで頭におっきなタオルが乗せられる。

 振り向くと、真っ黒なデカいお兄ちゃん――狼(ろー)兄ちゃんこと狼月(ろうげつ)=ブラッドレイさんがいて。


 タオルを意識して、思った。

 ……穂祈ちゃんに言われるまでおれ、おれ自身にも派手にスープかかっちゃってること、気付かなかったな。


「……ちょっと、ツラ貸せ」


 そう言って、おれの返事も待たずに歩き出した狼(ろー)兄ちゃんの声はいつになく硬くて。

 おれは狼(ろー)兄ちゃんがくれたタオルであちこちわしゃわしゃ拭きながら、狼(ろー)兄ちゃんの後を追う。


「ささ、穂祈さんはこちらですよ~! からだきれーにしてお着替えしましょう!」


 穂祈ちゃんは穂祈ちゃんで、トルテちゃんに抱えられて連れて行かれるところらしく。

 狼(ろー)兄ちゃんの後に続いて医務室を出る直前、ちらりと振り向くと。


 穂祈ちゃんは、小さく手を振っていた。

 こんなおれに、手を、振ってくれていた。

 こんなおれに、まだ、優しくて――。


 おれは、たまらずぶんぶんと大きく手を振った。


 穂祈ちゃん。

 おれ、きみが。


 すき。すきだ。

 だいすき、だよ。



◆


teller(語り手):ヴァンガード



 ――危険、だと思った。


 少年、犬丸=スプリングフィールドが転倒して以降、あまりのことにワタシは発言できていなかった、が。


 あの少年は、危険だ。

 何をするか、わからない。

 恐らく本人含めて、予想できる者は居ない。


 このままではあの少年はいつか、なんの悪意も殺意もないまま、まったくの過失で穂祈=トロイメライの命を奪うだろう。


 ――ワタシの使命は、穂祈=トロイメライを守ること。

 理由はわからない。


 ただワタシにはそうプログラムされているから、この使命は果たさなければならない。


 だから。


 ――いざという時は、ワタシが――犬丸=スプリングフィールドを処分、せねば。



◆

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