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第7章 いびきの大合唱

 大宴会が終了すると部屋に引き揚げ二次会が始まった。 2次会の宴会部屋は良介達の部屋に決まった。

他の部屋の連中が自分の部屋でタバコを吸われるのを嫌ったためだ。

「中川さん、さっきのワイナリーで買ってきた梅ワインの焼酎割を試してみようよ」

良介が提案すると、中川は「そうだ!」と言ってワインを取りに部屋へ戻ろうとした。 ところが、途中で立ち止まって良介の方を見てバツの悪そうな顔をした。

「いけねえ! バスの中においてきちゃったよ」

「なんだよ! せっかく自腹で買ったのに。 中川さん、それ間違えて持って帰らないで下さいよ」

「いや、きっと、持って帰って買った覚えがないって首をかしげる口ですよ」

名取がそう言うと、他のメンバーも納得して頷いた。

仕方ないので、この場は焼酎のお湯割りで済ますことにした。

 二次会の最中で良介達の部屋のメンバーは誰がどこに寝るかという話になった。 布団は二列に三人と二人に分けて敷いてあった。 若い名取と木暮が二人の方に寝ると言い、秋本と井川は三人の方の良橋を指定した。 必然的に良介は真ん中に寝ることになった。

「俺は真ん中だとヤバいですよ。 だって俺、寝癖よくないから夜中に転がるよ」

「なに? それはまずいな!」

そう言って秋元は布団の間に座いすを置いて防波堤を作った。

「何それ? 冗談だってば!」

「いや、念のためだ」


 朝から飲み続けていたメンバーもさすがにそろそろ飲み疲れて、ウトウトし始めた。

井川はすでに良介が寝るはずの布団で横になっていた。 他のメンバーもそろそろ寝るというので解散することにした。

 井川が真ん中で寝てしまったので良介は井川が寝るはずだった端の布団にもぐりこんだ。

「じゃあ、電気消していいですか?」

木暮はそう言って確認し、電気を消した。

良介がウトウトし始めた頃、胸の上に何かが落ちてきた。 ハッと目を開けると、井川の腕だった。 『冗談きついよ』そう思って井川の手を払いのけると今度は足が飛んできた。

そして、間髪入れずに井川本人が転がって来て良介に抱きついた。

「おっさん、冗談きついよ」

いくら押し返しても何度でも戻ってくる。 秋元の方へ転がっては戻ってくるのだ。

「あっ! 防波堤」

座いすの向こう側で向こう側で秋元がVサインをしている。

良介はついに井川に布団を乗っ取られてしまった。 仕方なく掛け布団だけを体に巻き付けるようにして寝ることにした。


 しばらくすると、誰かがいびきをかき始めた。 まあ、寝られないほどうるさいわけではない。 いずれにしても早く寝てしまった方がよさそうだ。

ところが、そんな時に限ってなかなか寝付けない。 そのうち、二人、三人といびきの和音が奏でられてきた。 井川も自分の布団の上で大の字になっている。

良介は布団に戻って掛け布団を頭から被った。 そして、良介以外の4人全員がいびきの大合唱を始めた。 時折入る井川の寝言のリードボーカルも含めて、決して心地良いとはえいない子守唄だったが、疲れ果てていた良介が合唱団の一員に加わるのにさほど時間はかからなかった。 


 しばらくして酔いがさめてくると急に寒くなってきた。 良介は体を丸めて布団にもぐりこんだが、小暮は我慢できまくなって暖房のスイッチを入れた。 だが、それは暖房ではなくタオルを乾かすためのヒーターのスイッチだった。 そのヒーターは良介の足元にあり、良介の足元を温風が直撃した。 良介は足の裏が熱くなってきたので布団の中に足を引っ込めて再び眠りについた。 今度は熱くて眠れなくなった。

 目が覚めては自慢を確認する。 もう朝になったかと思うと、まだ10分ほどしかたっていない。 そんなことを何度か繰り返している間に一人、二人とトイレに起きては良介の枕もとを歩いて行く。 『頼むから踏んでくれるなよ』そう思いながら目を閉じたままに眠ることに集中した。

 そして、何人かの話声が聞こえてきたので時間を確認すると、5時少し前だった。







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