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第6章 大宴会

 2階の宴会場には、ほぼ時間通に全員集まった。 コの字に配置された席の上座には喫煙部屋の面々が追いやられた。

 全員が揃ったにもかかわらず、いっこうに宴会が始まる気配がない。 井川は悠長にタバコをふかしている。 周りの視線が井川に集中する。 堪りかねて石山が口を開いた。

「会長、早く一言お願いしますよ。 みんな待ってるんだから」

「おっ? そうか。 やっぱり挨拶しなきゃダメか」

「当たり前じゃないですか」

井川はすごすごと立ち上がると、ここまでの経過をたたえて乾杯の音頭に八田を指名した。

すると、待ってましたとばかりに一斉にビールの栓を開け始めた。

八田は乾杯の音頭を取るために立ち上がろうとしたが、良介はそれを制して座ったままでいいと目配せした。

八田は頷いて座ったまま乾杯の音頭をとった。


 バスの中で浴びるほど酒を飲んでいたにもかかわらず、日本酒の徳利が膳の上にゴロゴロ転がる。

「おい、酒追加だ!」

日本酒を飲んでいるのは、井川をはじめ、秋本、山瀬、石山、そして良介だ。 それに比べて焼酎組は700ml入りのボトル1本がなかなか明かないくらいスローダウンしていた。 昼間の酒が相当効いたと見えてほとんどの連中は明らかにペースが遅かった。 八田は宴会が始まって10分もしないうちに船をこぎ始め、そのうちすっかり眠りこけてしまった。

 酒のペースが落ちた半面、バスの中で飲みながら、つまみを摘まんでいたもののたいして腹の足しにはなっていなかったと見えて、膳に並べられた料理は次々に無くなっていった。

 井川は座敷の端にカラオケの機械が置かれているのに気がつき、仲居にカラオケはできないのかと詰め寄った。

そもそもカラオケは宴会費用に含まれていなかったので、困った仲居は良介の方を見た。

良介はせっかくの宴会だからとOKのサインを出した。

井川は満足気に笑みを浮かべると、早速江藤にカラオケのセッティングを命じた。

江藤はそそくさとセッティングを開始し、誰から歌うのかを尋ねたが、手をあげるものは誰もいなかった。

「おう、江藤!お前からやれ」

井川の命令に江藤は手際よく番号を打ち込んだ。 江藤ははじめから歌うつもりで局も決めていたようだ。 間もなくメロディーが流れてきた。 “北国の春”だった。 衛藤が歌い始めると、上手いとか下手とかには関係なく、ヤンヤヤンヤの大喝采と拍手の嵐で盛り上がった。 トップバッターはこういう意味では得をする。 こうなると次はやりづらい。 しかし、1曲出るとその後は芋づる式にみんなリクエストを入れて行った。 良介も堀内孝雄の“恋歌綴り”を熱唱した。 本当はGRAYとかポルノグラフィティ-をやりたかったのだがおやじウケする歌の方がこういう場では盛り上がる。


 ある程度盛り上がったところで良介はお楽しみビンゴ大会の開催を宣言した。

今回は全員に何かしらの賞品が当たる。 賞品はすべて同じ袋に入れられていて、見た目ではどれに何が入っているのは分からない。 当然良介も参加するのだが、良介は自分で用意したのでちょっと触るか振ってみればたちどころに分かってしまう。 なので、良介は最後の残り物を貰うことにした。 こと、ビンゴに関しては全くと言っていいほどついていないのだから。

 開始早々、早くも中川がビンゴを宣言。 同時に山瀬もビンゴ。 早く当ったものから好きな袋を持って行けるのだが、早く取ったからと言っていいものがもらえるとは限らない。 それがこのルールの面白いところだ。

 勇んで賞品を持って行った中川は袋を開けてうなだれた。 入っていたのは100円ショップで購入した糸楊枝50本入りだった。 同じく山瀬も100円ショップのカラフル箸5組セットだった。 こうなると誰が当りを取るかに注目が集まってくる。

 今回の一番の当りはネットで購入したていか9万円の腕時計。 そして、同じくネットで格安で購入したブランド財布。 8千円と5千円のカタログギフトがそれぞれ1本ずつ。

腕時計は終盤にビンゴした石山が引き当てた。 ブランド財布は木暮が持って行った。 カタログギフトは川島が1本獲得し、いよいよ残りが2本。 良介はこの時点で当っていなかった八田に二つのうち一つを選ばせた。 最後に残った袋を手にした良介はその瞬間がっかりした。 中身は間違いなくウケ狙いで購入したビキニパンツに違いなかった。 八田は最後の最後でカタログギフトを手に入れた。

それぞれが勝ちとった賞品に一喜一憂した。 中でも着替えを忘れてきた三井には普通のパンツ2枚組が当り、酒を飲めない江藤にウコンの力6本パックが当たったのには大笑いだった。


ビンゴが終わると再びカラオケで盛り上がった。

「あと歌ってないヤツは誰だ?」

「名取がまだ歌ってないぞ」

名取はこのメンバーで唯一の20代だったのでこういう席でおじさんウケする曲のレパートリーを持ち合わせていなかったため、いま一つ乗り気になれないでいたのだ。

「なんでもいいからやれ! この期に及んでどうせ誰も聞いちゃいないんだから」

井川の一言に開き直った名取が歌ったのは福山の“桜坂”だった。

最後は井川が誰も来たことがないような懐メロで締めて大宴会が終了した。






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