物好きですね
楽しんで頂けると嬉しいです。
今日も良い天気ですね。雲ひとつない空でした。
少し現実逃避しても、バチは当たらないと思います。
一体コレはどんな状況ですか?
なんでこんな事になってるんですか?世の中何が起こるか本当にわかりませんね。
「フレアさんと、こんな話出来るなんて嬉しいわ」
「私も嬉しいです」
本当に嬉しいんです。こんな事なかなか語れないですからね。喜ばしい事なんです。
でも、こんな場面でこうなりますか?
ここは婚約に向けて両家の話し合いの場。
そう、ムービル公爵邸の応接室。全て豪華で目が眩みそうです。
しかし、父上も母上も困惑の表情してます。
わかります。私も心の中では、迷走中です。
婚約者様とムービル公爵様が微笑ましく暖かい目で見ていっらしゃるのはムービル公爵夫人。
私と同じ恋愛小説がお好きなようで、今ここで正にお話に花が咲いてます。
「あの本は読んだ?この前、新刊が出たんだけど。お姫様と……」
「護衛兵と囚われのお姫様のお話ですか」
「そう!」
「まだ読んでいないです。今読んでいる小説が終わったら読もうと思ってます」
「私的には凄く良かったの。今度、感想聞かせてね」
「はい!」
ムービル公爵夫人は聡明で見目麗しく、母上の憧れの方。その方が私とこんな会話してるなんて。
母上を直視出来ない。父上、後の事は頼みました。
「私が1番好きなのはディリスが持っていた小説が好きなの。初めて恋愛小説を読んで、それから気に入っちゃった」
あれ?それって、私が婚約者様に貸した強引王子様の本ですよね。婚約者様を見ればこの上ない笑顔。
もしかしなくてもムービル公爵夫人を私がこの世界に誘ったって事ですか。
あはは。隣から寒い冷気が出ているのが嘘であればいいです。母上、私の名を呼ばないで下さい。お願いします。
こ、怖い。母上、他の方が分からなくても私にはわかります。
その素晴らしい笑顔の下には恐ろしい鬼がいる事を。母上落ち着いてください。落ち着いてる?そうですか。
父上、骨は拾って恋愛小説と一緒に埋めて頂けると嬉しいです。
「フレアさんみたいな可愛らしい娘が出来るの楽しみにしていたの。ディルワーズ公爵夫人、良い子育てわ。ありがとう。フレアさん、ディリスを頼むわね」
あぁ、聖母様。
母上の顔が珍しく赤らんでいます。こんな母上初めて見ました。こんな母上を見れた今日は起こるかもしれません。
ムービル公爵夫人は、まさに聖母様です。
「はい。ありがとうございます」
取り敢えず母上の機嫌も良くなった事ですし、私この場から退場したいです。こんな緊張する場所早く去りたいです。えっ?ダメですか?
ちょっと婚約者様、不意打ちで手を握らないで下さい。
婚約者様、そんな顔で見ないでください。はにかんだ笑顔を見ると、私まで凄く恥ずかしいです。
「……少し席を外します」
私の手を掴んだまま婚約者様は応接室から出ようとします。
皆様の生暖かい瞳、とても嬉しく思わないんですが。皆様、物好きですね。
今2人きりって、どう対処すれば良いんですか?
世の皆様、教えてください。
婚約者様に連れられて、静かな噴水のある庭園へと来ました。
婚約者様は待ってと言っても止まってはくれず、早足でここに来たのです。
引きこもりには辛いです。息が上がりました。
ひと言文句でも言おうとすると目の前には綺麗な庭園に目を奪われました。
季節の花が咲き乱れ、とても丁寧に管理されていてとても綺麗です。
婚約者様は握っている手に力を入れるので、私は思わず婚約者様の顔を見ました。
「フレアと本当に婚約したんだなと思ったら、つい体が動いてしまいました。嫌でしたか」
文句を言おうとしたのに、そんな事言われると声にできないです。
「もう少し……ゆっくり歩いて欲しかったです」
そんな変な言葉しか浮かんでこなかった、自分に落胆しています。
「ごめんね。でも、少しでも早く2人でゆっくり出来るここに来たかったんです」
婚約者様は私の手を取りポケットから光る指輪を私の左薬指にはめました。一連の動作が綺麗すぎて、私は銅像のように固まっていました。
一気に体が沸騰しそうなぐらい熱くなってます。
本当に婚約者様は私の心臓を何度止めようとするのですか。婚約者に会う度に私のライフはゼロですよ。
「……あ、ありがとうございます」
「嬉しくないですか?」
「と、とても嬉しいです。」
「そうは見えないですね」
「そ、れは……」
恥ずかしくて口籠る私に、悪い笑みを浮かべた婚約者様はどんな表情でも絵になります。
「よく聞こえないですね。もっと大きな声で言って」
婚約者様はドS要素もお持ちですか?
私は好物です。でも何度も言いますが、自分以外にお願いします。
本当に羞恥心でおかしくなりそうです。
慌てふためいている私を楽しそうに見ている婚約者様に、気が触れた私は普段の自分じゃ想像できないような事を思ってしまいました。
私には培ってきた恋愛小説を読破してきたスキルがあります。まぁ、実際に経験ないので、たかが知れたスキルですが大丈夫です。
私だって婚約者様の驚いた顔が見たいんです。
婚約者様の首に腕をかけて引き寄せました。
私の行動に不思議な表情をしている婚約者様にキスをします。
「ディリス様が大好きです。だから、とても嬉しいです」
耳元で囁けば、婚約者様は驚いた表情をして、一瞬の内に赤くなっていくのがよく見えました。
してやったりと思う前に、冷静になった私の心の中は後の祭り状態。もう、どうにでもなれです。
今の私の顔大丈夫ですか。変な顔になってるので見ないで下さい。
婚約者様の綺麗な顔が近くて、慌てて腕を離しても離れません。なんと、婚約者様が抱きしめていて離れないです。
お願いします。離してください。私にはもう耐えられないです。
「フレアの行動力を甘く見てました。予想外すぎ」
その言葉で自分がしてしまった事に、改めて羞恥心が沸き始め婚約者様の顔がまともに見れないです。
「フレア愛してるよ」
下を向いてしまった私には、もう余裕なんてこれぽっちもないです。元々、余裕なんて持ってなかったですね。
婚約者様が下から私の顔を覗いて、そのままキスしました。
恥ずかしすぎて言葉にならないんですけど。
私はこれから、どうしたら良いんですか?
綺麗に笑う婚約者様にはやっぱり敵わなくて、経験値の違いに嘆く事になりそうです。
婚約者様には今度、わんこキャラの小説でも貸した方がいいですかね。
賛同なさる方は挙手をお願いします。
読んで頂きありがとうございました。
完結にさせて頂きます。
ありがとうございました!