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1話 謎の訪問者1

「遠いな~、何でこんなに王都から離れたとこに住んでんのよー」


 王都から子供の足で歩いて数時間かかる獣道を草をかき分けながら歩いている女の子がそう呟く。

 近くにはもう既に下級から上級の魂魔(魂に近い魔物)が徘徊する魔の森がある。

 あそこは父である国王に、子供の内は入るなと念押しされている場所だ。

 しかし、今回女の子がこのような所に来た目的は一つ。

 この近くに住んでいるとされる伝説の魂篭め職人に会い、自分の専用武器を製作して貰うためだ。

 魂篭め具と言う物の詳細は知らないが、噂では数日後に控えた王族の【試の儀】を通過するために有効で、尚且つ物によっては自分の生涯の相棒に成ってくれるらしい、魔物の魂を込めて出来るとされる魔武器。

 噂が本当なら幼い自分でも王位継承権を持ったままで他の大陸に見聞の旅へ出られるかもしれない。

 しかし、噂では伝説その人ではなくその弟子と見習いだけらしいが…。

 まあ、噂の真偽は確かめれば解かる事。

 自分は武器を作ってくれればそれでいいのだから

 その為に危険を冒してまで、一人で来たのだ。

 そう、来たのだが…


「本当にこんな所に人が住んでるのー?」


 辿り着いた4軒繋ぎの掘立小屋を見て女の子は訝しげにそう呟く。

 見た目は小柄な男の子にも女の子にも見える体格に、中性的な顔立ちで赤い髪を短く整えている。

 その一見すると女の子とも男の子とも見える少女が、目の前の建物に入り、玄関から大声で中の人に尋ねる。


「すみませーん!誰かいませんかー!?」


 そうして、王都の外れの掘立小屋に、甲高い声が響き渡る。

 しかし、返事が無い。

 留守かな?と思いながらもその子供がもう一度「すみませーん!」と声を上げると、中から一人の少年が「はーい」といって出てきた。

 そして、その少年は目の前の声の主が子供で、どうやらお客さんであると思って、中に声を掛ける。


「せんせー!お客さんだよー!?」


 しかし、その少年の呼びかけに応える声は無い。


「あーあ、また寝てんのかなー?ちょっと待ってね?今せんせー起こしてくるから。」


 呆れた様な声でそんな事を言いながら子供に向かって声を掛けて、奥に行く少年。

 しかし、その子供は「ちょっと待って?」と少年を呼び止め。


「あのー?ココって【魂篭め職人】さんの工房で合ってるの?」


 その問いかけに、少年はニッコリと微笑みながら


「うん、合ってるよ?ココの先生が【魂篭め職人】ってのは間違いないよ?・・・まあ、今は飲んだくれだけどね?」

「だーれが飲んだくれだって?誰が。」


 少年が子供の問いかけに応えると、いつの間にか起きて来ていた男は手に持った酒瓶をそのままに、少年に文句を言いながら近くにあった椅子にドッカと腰を降ろす。

 無精ひげを生やし髪はボサボサで初老に差し掛かっている白髪混じりの顔で、上半身裸の下は革製のズボンだけの状態だ。

 お客が来ていると言うのにラフすぎる気がしないでもないが…。

 そして、子供の尋ね人が来た事によって自分の役割は終わったと思った少年は、さっきまでやっていた作業に移ることを男に伝える。


「先生がだよ?せんせー。その手に持ってるのは何さ?それに、起きてんなら返事くらいしてよ。・・ほれ、お客さん。騎士団以外の人は一週間ぶりなんだから逃がさないようにね?僕は作業の続きしてるから。何かあれば呼んで?」


 少年の言葉に、酒瓶をグイッと口に持って行きゴクゴク飲んでから


「アイよー。…ヒック。まあ、焦らずヤレや。お前は才能は有るんだから後は経験だ。一日に最低十回のノルマはちゃんとやってんだろうな?」


 同じように男が少年に質問するが、少年は「もうウンザリ」と言った顔で顔を左右に振り


「まーた、それ?昨日も同じ事聞いたよ?そろそろボケ出して来たんじゃないの?それとも酒が回ってる?シッカリしてよね?少なくとも僕に全てを教えてくれるまではちゃんと生きててよ?」


 せんせーと呼んでいるにも関わらず、何故か物凄い言葉を男に掛ける。

 そして、子供に向かってもとても尊敬してるとは言い難いセリフを放つ。


「僕は行くけど、君も嫌に成ったら遠慮せずに出てって行っても良いからね?このせんせーはやる時はやるけど、それ以外はとてもじゃないけど神士って感じじゃないから。それに、どうせ目的は精霊か聖魔、若しくは簡単な魔物の魂魄入りアイテムでしょ?けど、精魂や、聖魂は生憎今は材料がないから注文も無理だよ?他のも同じように在庫しか扱ってないし?まあ、珍しい魔物の魂魄が有るってんならせんせーもやる気が出るかもだけどね?・・じゃあね?」

「・・・う・・うん。」


 少年の挨拶に子供は頷くしかできなかった。

 そして、少年が奥へと引っ込んでから、男が子供に声を掛ける。


「・・・で?お前は初めて見る顔だが、ご注文か?魂魄の入れ替えか?それともお使いか?ご注文ならさっきコルンが・・ああ、さっきの弟子のことな?そのコルンが言ったように魂篭め用の魂魄が商人ギルドに入って来てないから今ある分しか出せないぞ?入れ替えも同様だ。それでも良いなら交渉には応じるが?」


 男は子供に向かってそう言うと、恐らくは在庫の魂魄の名前が書かれているであろうリストを子供に見せてきた。


「ほい、これが今の所、家にある使用可能な魂魄のリスト。その中でお前さんが込めて欲しい魔物の魂と、お前さんの扱う獲物を選べ。騎士団の奴らに格安で篭めてやってるのはスライムの魂だ。まあ、水系では一番基本の魂だな。その分効果は水魔法の発動のみだが?今ある奴ではそれが一番安いな。金を持ってる奴はそれだけ良いのを注文するか、腕の立つ奴は自分で魂魄を取ってくる奴も居るが・・どうする?」


 男に言われた子供はリストを見ながら「ウーン」と悩み・・・


「すいません、お金なら少しは有りますが、この価格は相場としてはどの位ですか?」

「…お前さん、誰に聞いて来たか知らんが、魂魄入りアイテムの事は分かってるのか?」


 子供の反応を見て男は訝しげに眉を顰めた。

 しかし、この反応も当然だろう。

 本来の魂魄入りアイテムの価値を思えば男の出したリストの魂魄は値段相応以上の働きをしてくれるのだから。

 その事実を分かっている男は、この子供が誰に何と言われてココに来たのか気になった。

 仮に噂でも、その出所を調べれば後々の面倒は回避できる。


「…いえ、僕は町で聞いたハンターの話に興味を持って自分の武器を作って貰いたくて来たんですが…。ここで特殊な儀式をしたアイテムを騎士団で扱うようになってから魔物による被害が圧倒的に少なくなったと言う話でして…」

「…は~、その話を誰に聞いたかはハンターギルドに問い合わせな成らんが、まあこの際だ。少し話しておいてやろう。良いか?」

「はい…」


 少し雰囲気が固くなった男に呑まれながら子供は頷く。

 ここまで来たんだ。どちらにしても唯では帰れない。

 なら、出直す時の事も考えて少しでも知識は有った方が良いだろう。


「この国の武器は俺がこの国に来た時はそりゃー酷いもんだった。なんせ、鉄を溶かして型に填めただけの簡素な武器だったんだからな。俺の出身国ではもう少しマシだったが…、まあ武器の精度は良いとして、問題は魔物の魂を武器に篭める技術が知られていなかったって事だ。魔法の技術はそれなりに有ったからまだマシだったがな?…で、本題は武器に魔物の魂を篭めるって事があまり浸透して無くて、大丈夫なのか?って話だわな?しかしその為の技術だって事だろ?それなのに…」

「あ、あの~。結局どういう物なんですか?」


 流石に話がグダグダになって来たので、子供は結論を聞くことにした。


「…けっ。若いもんは年寄りの話を少しは聞かんと長生きできんぞ?まあいい、要するに魂魄入りアイテムってのは魔物の魔法や特殊能力が契約した者に使えるようになるアイテムだ。…どうだ?色々と制約はあるが、魔法自体が使えない奴が使えるようになるってアイテムは凄いと思うだろ?」

「…ええ、それは確かに凄いですね。それならこのリストの値段も分かる気がします」

「はっはっはー。俺様の凄さが分かるなら大した奴だ。気に入った。お前さんの獲物は何だ?」

「僕は未だこの体格で力が無いので、刺突武器のレイピア辺りが良いのですが?」

「…レイピアか…。予算は?」

「10万ナクルです」

「ほ~、ガキの小遣いにしては結構貯めてるじゃないか?おじさんにも分けて欲しいね?…まあ、それは冗談として。それなら、レイピアを予算ギリギリの9万のダイオロス鋼の奴にしろ。知り合いの鍛冶屋の製鉄品で一番いいのは無理だが、ダイオロスはお前さん程度の子供でも扱える位の軽くて丈夫な鋼だ。俺の店は条件付きでバウンドフィッシュの魂魄を篭めて1万でやってやる。森の多いこの国なら、水の魔法が使える武器にした方が良いだろうしな?」


 その男の提案に開いた口が塞がらないと言った表情の子供。

 それはそうだろう。

 リストを見ればバウンドフィッシュの魂魄は10万になっている。

 ドンだけ機嫌が良くなればこんなに良い魂魄を扱ってくれるのか不思議でならないだろう。

 しかし、子供はリストの上の方しか見てない為分からなかったが、今男が提示した魂魄は値段にしたら、低い物から3番目。

 同じ桁の値段の物が多すぎて勘違いをしただけだ。

 だから、大盤振る舞いと言う訳でもないのだ。

 しかし、その大幅な値動きで、どんな条件を出されるのか気になった子供は恐る恐る男の尋ねる。


「…で、条件てどんな物ですか?」

「…?ああ、心配せんでもガキに興味は無い。そんな恰好で僕とか言っとるが、女だろう?俺も、もう少し若けりゃ考えるが、お前さん位の歳ならコルンがお似合いだ。だが、体で払うってのは間違ってない。要は弟子の練習用魂魄と、他に良さそうな魂魄が見つかれば、それをコルンと一緒に取って来いって話だ。…勿論護衛は付けてやる。安心しろ。少し危険ってだけだ。コルンは10の頃には護衛を付けてやったら自分から行ってたからお前さんでも大丈夫だろ。…どうする?」


 少し、考えた子供は了承に意を示す。


「…それでお願いします。僕も目的が有りますから…っと、僕はセシルと言います」

「ああ、俺はカイルだ。一応言っとくが、噂に出てくる伝説の奴はもう引退した俺の師匠の話だ。恐らく俺と同じ国出身の奴が広めた噂を聞いたと思うが、詳しくは俺がギルドで聞いてやるから、お前は気にすんな。…いいな?」

「はい…」

「ああ、それと」

「?なんでしょう?」


 カイルの突然の問いかけに首を傾げるセシル。

 その表情に苦笑しながら聞き忘れていた事を聞く。


「お前さん魔法は使えるか?」

「?ええ、多少なら」

「多少か…なら、魔力を時間が経てば自動で補給するタイプの魔武器にした方が良いな?」

「…!は、はい!して下さるなら嬉しいです」

「はっはっは。任せとけ。じゃあ、コルンのとこに行こうか。…こっちだ。付いて来い」


 そうして、二人で来た時は、コルンが何かを完成した所だった。





 コルンの手元に有ったのは、サラマンダー(子供)の魂魄を入れ込まれ、灼熱の赤色に輝く小刀の眩い姿だった。

 それを見たカイルは、満足げに頷く。

 そして、コルンに向かって一言。


「おおー?ようやっとこさそこまで行ったか・・お前も漸く半人前ってとこかな?」

「・・まあね。ホントにやっとこさ小刀にサラマンダー(子供)の魂魄を篭められるまでになったよ。・・・長かったなー。」


 その会話をカイルの横で聞いていたセシルは小刀を見て眩しそうにしながら呟く。


「綺麗・・。何か、吸い込まれそうな感じ・・・」

「お?中々分かってんじゃねえか?セシルとか言ったな?お前は実際の魂魄入りアイテムの事を詳しくは知らないんだったな?」


 突然のカイルの質問に、セシルは首を縦に振る。


「はい。けど先程も言ったように、騎士団の扱っている物は見た事有りますが…。これは?」

「こんな輝いている物は初めて見る・・だろ?」

「・・はい。」


 カイルの問いかけにまたしても首を縦に振るセシル。

 そして、その答えをカイルは説明する。


「これはコイツの魔力が今の衰えている俺の魔力より多いって事が理由の一つだ。

 そして、俺と同じようにほぼ全ての精霊に好かれているコイツの才能は希少でな?そして、努力も忘れんから日々才能も伸びてるって訳だ。

 集中力もあるし、後は経験だけだ。唯一の問題が口の悪さだな」

「悪くさせているのは誰の所為ですか?全くもう!・・っと、君はさっきの子?ココはもう工房だから危ないよ?」


 カイルの説明に突っ込んだコルンは、その隣にいる先ほどのセシルに危険を知らせる。

 そう言うのはここの結界の役割の為だ。通常の鍛冶仕事の工房なら多少火の粉が飛ぶくらいだが、この【魂篭め】の職場はその言葉通り魂を物体に篭める為、ヘタしたら魔物の魂が見ている者の中に入る。

 その危険を回避するために特殊な作務衣を着て作業をしたり、指示を出したりするのだが、二人とも作務衣を着ていない。なのでコルンは注意したのだ。しかし・・・。


「何、心配は要らん。俺がこうやって傍に付いてんだ、万一の事も無いだろう。お前はそんな事より最後の【鞘納め】に取り掛かれ、それでお前も漸く半人前だ。」

「はい!」


 先生と呼ぶカイルの指示で再び集中するコルン。その姿を見たセシルは思わず見惚れて呟いていた。


「・・・何かカッコいいですね。さっきまでの、僕と同じ子供らしい所が抜けて一人の職人の様に見えてきます。集中すると皆こんな風に成るんでしょうか?」

「さあな?少なくとも俺が今まで面倒見てきたガキの中ではダントツの集中力だから、コイツが特別なのかもしれんがね?・・見ろ。アイツの初めての作品【ザルン】の誕生だ。」


 セシルの感想を聞いたカイルは、自分なりの答えをセシルに返すと、愛弟子の初の作品の誕生を微笑ましく見つめていた。


「ザルン?その命名はどういう意味ですか?」

「ああ、意味か?本来の命名方は使い手に決めさせるのが通例だが、初めて職人が作った物の場合は主に師匠が魂の元となった魔物の頭文字と職人の名前を捩って付ける。だから師である俺が付けてやったんだ。サラマンダー(子供)の魂魄とコイツのコルンで【ザルン】って風にな?」


 そう言いながら、コルンが小刀に篭めたサラマンダー(子供)の魂魄を鎮め、専用に作った鞘に収めていく過程を見守った。


「…ふぅ~、これでよし!後は僕の篭めた魔力で奇跡が起こっているかどうかだけど…」

「ははは、それはあまり期待するな。この俺でさえ魔物を守護獣化させることが出来たのは十数振りのみだ。数百本も魂篭め具を作ってきた俺でさえそんなんなんだ、半人前のお前が最初に作った品がイキナリそれだったら俺ら職人が馬鹿らしくなってくる。所詮才能には勝てないのかってな?」

「そんなこと、分かってますよ。言ってみただけです。…では、やってみますよ?」

「おう!奇跡を信じろ、奇跡ってのはやった奴にしか降りてこないんだ。自分のやって来た事を信じて報われろ!」


 コルンとその師匠が言っていることが何なのか分からないまま、セシルはその動向を見守った。

 やがて、コルンが自分の血を小刀の鞘と、柄の部分に付けながら魔法陣を描いて行く。

 これは本来職人が護衛を作る時にしか行わない行為なので、騎士団の物しか見たことの無いセシルは首を傾げながら見ていた。

 中にはカイルが特別に施してやった魔武器もあるが、それらを使うのが騎士団長クラスのカイルの親しいお気に入りの上、滅多に王都に居ない武闘派の者たちだからセシルは知らないのだ。

 そして、書き終わった魔法陣に己の魔力を篭めて話しかける。


「もしもし、聞こえる?」

「『…』」


 反応なし…。

 それを見たカイルは、「まあ、当然の結果かな?」といってから


「どうやら奇跡は起きなかったようだな。まあ、仕方ないだろ。後は【成長する魂篭め具】として、成長してお前の右腕にする位の心算でその小刀を大切に使ってやれ。守護獣化出来なくても、成長して話が出来れば十分報われるんだからな。」

「分かってますよ。何も起きなかったからってぞんざいに扱うとは言って無いじゃないですか」

「あの~?」


 二人に置いてけぼりにされて、それまで黙っていたセシルが、ここで口を挟んだ。


「なに?」


 それをコルンが聞く。


「守護獣化とか、成長する魂篭め具ってなに?」


 そして、質問にはカイルが応える。


「ああ、この大陸の奴には聞きなれない言葉だったか?これは一応俺が別の大陸で培った知識と実際に向こうで俺が経験した事の話だ。

 この国で俺がお客に注文を受けて作っている魂篭め具は運が良ければ守護獣に成れるが殆どは只能力が使えるだけのアイテム、だが、本来の役割は自分の警護が目的だ。

 勿論、普通に注文を受けて作るが、魔方陣の描かれていないそれは言うなれば自分では使わない出来損ない。何しろ己の血で封印するんだからな。他の奴には使えないのさ。もし、やって欲しいって奴がいたら、そいつの血を少し貰わな成らんからな。・・・て言っても職人で無い奴からしたらそれでも大幅な戦力アップだがな?しかし、初めから戦闘能力が殆どない職人は自分の護衛を創ろうと試行錯誤を重ねた結果、もう何百年もの昔に成るが、一人の職人が、魂を込めた筈の魔物が獲物に憑りついて、自分を護衛するようになったのが始まりだ。

 それが魂篭め師の開祖であり、俺達の師に当たる人物だ。

 それ以来、極稀にそう言った物が作れる奴が世の中に出て来てる。一応、その師匠が弟子の俺達に方法を伝えたからな。後は運とある才能次第だ。

 おっと、話が長くなるから、続きはまた今度って事で…コルン、魂魄の余りは有るか?」

「うん。……うわ~、いつの間にかいっぱい使っちゃってるや。もう3つしか残ってない。…けど、如何するの?」

「ああ、コイツが金がないから良い魂魄を付けてやる代わりにお前と一緒に魂狩に行けって話になったんだ」

「ま~た人に押し付けて楽しようっての?」


 師であるカイルの魂胆を見抜いたのか、コルンは如何にもな顔をしながら師匠に文句を言う。


「先生は単体でも強いんだから、一寸行ってチョチョッと狩って来ればいいんじゃないの?」

「そうなればお客さんの予算が少ないんだから仕方ないだろうが。言うなれば肉体労働だ。子供でもその位は出来るだろ」


 弟子の文句に師匠も負けじと反論する。

 しかし、弟子もまだまだ負けていない様で、矛先をお客である子供に向ける。


「君もそれでいいの?危ないよ?僕は慣れてるから良いけど。もしかしたら取り返しのつかない事になるよ?」

「…いいよ。一応僕にも目的が有るから、それに護衛は付けてくれるって話だし。大丈夫じゃないと、信用問題でしょ?」


 そういって微笑む目の前の子どもは何となく可愛かったので、思わず気になったことを聞くコルン。


「…ねえ、君って男の子?それとも女の子?」

「ふふふ…さて「お前もまだまだ見る目が無いな。そいつは僕って言っちゃ―居るが、女だ」…そう、女だよ?それがどうしたの?」

「いや、何となく笑った顔が可愛いなって思っただけ。他意はないよ」

「…そう、ありがと…」


 思わず顔を真っ赤にして俯くセシル。

 その様子に「青春だの~」とニヤニヤしながら見つめるカイル。

 その視線を感じ、コルンは話を戻す。


「けど、女の子なら尚更危険じゃないの?運動能力がどの位かは分からないけど、付いて来るなら多少は走ったり戦ったりして貰うかも知れないよ?」

「ああ、それなら大丈夫。女でも多少は腕に自信はあるよ。力は無いけどすばしっこいと思うから、足を引っ張ることはそんなにないと思う」

「…そう?それなら僕からはもう何もないけど…。しかし、今日はカリン達とも遊びたかったんだけどな…」

「ばーか、お前も偶にはアイツら以外の同い年の奴と一緒に交流をしろって事だよ。さっきからそいつ、お前の事を興味深そうに見てるから、「え?僕!?」ああ、お前だよ。だから、少しは子供らしく同年代の親友を作ってこい。お前の年齢の友人は生涯の友に成る可能性もあるんだからな」

「……」

「?どうした?」


 いきなり黙り込んだ弟子に訝しでな表情で聞くカイル。

 その問いに、弟子であるコルンは


「せんせーが久しぶりに真面な事言ったよー!!どうしよ!?雨が降って魂狩所じゃ、無くなるよ!!」

「お前な…」


 叫びながら慌てふためく(勿論ワザと)弟子に思わず額を押さえて黙り込む青年。

 数秒後、気を取り直して、カイルはコルンに向かって指示をだす。


「まあいい、とにかく行ってこい。護衛は…、そうだな、連れが客なら万一の場合が有っても困るから、ソフィアとナギを使え。丁度小太刀とレイピアだし、相性もいいだろ。【守護人化】≪ソフィア≫≪ナギ≫…来い。」


 カイルが呼ぶと、作業場に飾っていた武器の内の二つ、小太刀とレイピアが突然動きだし、宙を飛んでカイルの前まで来た。


 そして、光を放つと…


「おはようございます、マスター。本日は如何いったご用件でしょうか?唯の買い物ならご自分で行かれた方が宜しいかと思いますが?」


 小太刀だった物が、カイルと同じくらい(170位)の身長の美女になっていた。

 その容姿は何処から見ても可憐な騎士の様な神秘的な出で立ちで、一見するとどちらが主か分からない。

 その騎士風の美女が如何にも面倒くさそうな感じでマスターと呼んだカイルをみた。


「その様な事を言ってはカイル様に失礼でしょう?ナギ。…すみません、カイル様。ナギは肉体的には大人ですが、未だ精神的に子供みたいな者ですので、大目に見てやってください。その分、私がご要望を叶えて差し上げますから。何なりとお申し付けください」


 対して、その美女を叱り付け、二人の主の様なカイルに許しを乞うている女性も絶世のと呼んでいい位の美小女だ。

 セシルはこの状況にパニックに成っていたが、この二人の魂をどうやって手に入れたか気になった。

 明らかにこの大陸にはないタイプの騎士の制服を着た美女と、どこぞの王族ではないかと思える位に気品に満ちた清楚な感じの美少女がどうして武器として仕えているのか。

 そもそも、守護獣と言うのは聞いたが、人の魂まで武器に篭められるとは思わなかった。

 もしかしたら、何処かで攫った女性を殺して魂にしたのではないか?

 そう思ったセシルは、護衛として現れた二人の事をカイルに聞くことにした。


「あの~?この二人の魂はどうやって手に入れたの?どう見てもチンピラとか遺跡荒らしには見えないんだけど?」


「ああ、こいつ等は特殊な事情でな?契約に従って俺の守護獣?になったんだ。何もやましい事はしてないし、俺ら魂篭め師からしたら正規の方法で契約したんだから、誰に咎められる事も無い。至って健全な主従関係だ。…なあ?」


 カイルに話を振られた少女は一旦自分を指差し、カイルの頷きを見て、コクリと頷いた後。セシルに向かって天使のような微笑を向けると思わぬ言葉を投げかけた。


「ご心配を掛けたようで申し訳ありません、お嬢さん。私達はこのカイル様にある事情で国を救っていただいたのです。その報酬として国で一番腕の立つ私たちが魂の状態でお仕えすることになったんです。そして、何の因果かカイル様の技術でそれぞれが武器に守護魂魄体として納められ、使役獣?化できる様なったのです。あと数人、私達の国をカイル様と共に救って下さった方もいます。話ではその方たちが最初にして最強の神剣としてのカイル様の守護神体だとか。そ…「ストップ」…っとすみませんおしゃべりが過ぎました。お叱りは何なりと」


 少女の話を途中で遮って終わらせた初老の男は、セシルに向かって納得をさせる。


「話は分かっただろ?コイツは俺との契約で国を救った俺に忠誠を誓い武器として俺の為に尽くす奴らだ。そして、俺の命令には絶対服従。…まあ、俺の命が危ない場合は意見して止める場合は有るがな?…って話はこれで充分だろ?さっさとこいつ等を連れて行って来い」


 セシルの後に、コルンにそう言うと、カイルは隣の部屋にすっこんで行った。

 

 それを見たコルンは苦笑しながらセシルに向かって


「あ~あ、行っちゃった。ああなったら行って帰ってくるまで飲んだくれてるから、僕らも行こうか?」


 そう言ってコルンは自分の作ったザルンを腰に差し、ナギにお願いね?と言って横に護衛として侍らせた。


「う……うん。って言うか、僕らとこの人達だけで何処に行くの?」


 至極真っ当なセシルの質問に、コルンもまた大真面目な顔で、しかしセシルにとって爆弾発言をする。


「何処って……そこの魔の森だけど?あそこがこの辺りでは唯一の豊富な魂魄狩場なんだから」


「…え、え・・・ええええーーー!!?」


 コルンの発言に、その日一番の絶叫が小屋中に鳴り響いた。


 

 

 

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