第五十三話 少しだけ前へ
放課後
「終わったぁ~!」
淳平が大きく伸びをする。
りん「まだまだだぞ」
淳平「もう疲れた」
愛奈「体力なさすぎじゃん」
由衣「帰るか~」
「俺たちは先帰るわ」
わかな「また明日ね!」
淳平「おう」
愛奈「気を付けてね~~」
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帰り道
桜は少しずつ散り始めていた
「今日は静かだな」
わかな「うん」
少し歩いてから
わかなが俺の制服の袖をつまんだ
「ん?」
わかな「...........まだ少しだけ怖い」
「.........そうか」
わかな「でもね」
わかな「竜也と歩いてると安心する」
「それなら良かった」
わかな「だから..........」
少しだけ恥ずかしそうに笑う
わかな「今日はもう少しだけ、このまま歩きたい」
「いいよ」
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そのまま少し遠回りして帰ることにした
公園の前を通る
小さい子ども達が遊んでいた
ブランコ
鬼ごっこ
笑い声がする
わかな「平和だね」
「ああ」
「こういう日常が一番だ」
わかな「うん」
少しだけ
事件のことを忘れられた気がした
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家に着く
「ただいま」
百「おかえり~」
「あれ、来てたんだ」
百「ふふふw」
「?」
百「わかなちゃん」
わかな「?」
百「最近笑顔増えたよね」
わかな「え?」
百「事件の後はずっと無理して笑ってた」
百「でも今日はちゃんと笑ってる」
母さんは、わかなの頬に手を当てている
百「えらい!」
わかな「...................」
少し考えてから
わかなは俺を見た
わかな「........竜也のおかげかな」
「そう?」
わかな「うん」
わかな「ずっと隣にいてくれたから」
百「ふふw青春だねぇ」
「母さん茶化すな」
百「あははww!」
百「けど、無理して笑うより、泣いた方が楽な時もあるからね」
百「泣きたいときは泣いていいんだよ」
わかな「はい.......」
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夜
「ふぅ」
部屋で本を読んでいると
コンコン
わかな「入るよ」
わかなが入ってきた
「じゃ、寝るか?」
わかな「..........ちょっとだけ」
「?」
わかな「ちょっとだけ話したい」
「いいよ」
二人でベッドに座る
わかな「ねぇ」
「ん?」
わかな「私ね........事件の時」
わかな「もう会えないって思った」
「...................」
「俺も」
わかな「え?」
「間に合わないかもしれないって」
「初めて本気で怖かった」
わかなは少し驚いた顔をした。
わかな「竜也でも怖いことあるんだ」
「当たり前だ」
ベットに横になる
「間に合わなかったらどうしようって、そればっかり考えてた」
「俺だって人間だからな」
「大切な人を失うのは怖いさ」
わかなは静かに笑った
わかな「そっか」
「だから」
「もう一人で抱え込むな」
「怖かったら言え」
「泣きたかったら泣け」
「俺はずっと隣にいるから」
わかな「........うん」
わかなは小さく頷く
わかな「ありがと」
その一言だけだった
けれど
事件以来、一番安心した表情だった
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窓の外では
春風が静かに吹いていた
少しずつ
本当に少しずつ
わかなの心は前へ進み始めていた




