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蒼月のレゾナンス ~最弱の調律士は運命を選び直す~  作者: なるかめ
第3章 運命に抗う者

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第18話 役に立たない存在

今回は、蒼真が初めて「封印の代償」を正面から受け取る回でした。


第16話で蒼真は能力を封じる決断をしました。

それは彼にとって、とても誠実な選択です。


ですが――

誠実な選択が、必ずしも良い結果を生むとは限りません。


蒼真がいなかった任務で、凛は傷を負いました。

もし蒼真がその場にいたなら、止められた可能性があります。


だからこそ、今回のテーマは重い問いになります。


「力を使わないことは、罪になり得るのか?」


力を使えば、誰かの意思を奪うかもしれない。

使わなければ、守れた命を失うかもしれない。


どちらも簡単に正解とは言えません。


この回で大切なのは、

凛が蒼真を責めなかったことです。


むしろ彼女は、蒼真の自責を止めました。


それは優しさでもあり、

同時に“逃げるな”という言葉でもあります。


蒼真はまだ答えを持っていません。

そして今はまだ、持たなくてもいい段階です。


ただ一つ確かなことがあります。


封印は終わりではありません。

それは、選択の重さを知る始まりです。


ここから蒼真は、自分の力と向き合い続けることになります。


そして次の物語では、

その力を“使うべきかどうか”という問いが、

さらに深い形で突きつけられていきます。

朝の空気は冷たかった。


辺境区の小さな町。

統律院の管理が緩い場所。


蒼真は、古びた食堂の窓際に座っていた。


湯気の立つコーヒー。

静かな通り。


ここでは誰も、蒼真を知らない。


それが、少しだけ楽だった。


だが。


端末の通知音が鳴る。


一件のニュース。


共鳴事故発生。


場所を見て、蒼真の指が止まる。


――統律院中央区。


凛の担当区域だ。


蒼真は画面を開く。


事故の映像。


崩れた建物。

共鳴波の残響。

担架が運ばれている。


記事は簡潔だった。


能力者二名負傷。


蒼真の胸がざわつく。


(……凛は)


名前は出ていない。


だが、嫌な予感がする。


次の瞬間、透真から通信が入った。


蒼真は躊躇してから出る。


「……もしもし」


透真の声は、いつもより低い。


「お前、ニュース見た?」


「今見た」


沈黙。


透真は、言葉を選んでいる。


それが、蒼真には分かった。


「凛が……やられた」


心臓が強く打つ。


「命に別状はない」


すぐに続く言葉。


だが、その前の沈黙が重い。


蒼真の視界が、少し揺れる。


「……どうして」


透真が答える。


「共鳴暴走」


簡単な言葉。


だが、蒼真には意味が分かる。


止められた。


自分なら。


蒼真の喉が乾く。


「俺がいたら」


言葉が漏れる。


透真は、否定しない。


「……多分」


それが一番残酷だった。


もし蒼真がいたなら。


暴走の交点を見つけて、

触れて、

止めて。


凛は、傷つかなかったかもしれない。


蒼真の手が震える。


封じたはずの力が、胸の奥で脈打つ。


(俺のせいだ)


誰もそう言っていない。


だが。


蒼真は立ち上がる。


「今どこ」


「病院」


透真が言う。


「来るのか?」


蒼真は答えない。


ただ、鞄を掴む。


統律院中央医療棟。


消毒液の匂い。


静かな廊下。


蒼真は、病室の前で止まる。


扉の向こうに、凛がいる。


透真が壁にもたれていた。


蒼真を見る。


「……来たか」


蒼真は、扉を見つめる。


「入れよ」


透真が言う。


蒼真は、首を振る。


「なんで」


透真が眉をひそめる。


蒼真は、小さく言う。


「俺、役に立たなかった」


透真は息を吐く。


「そういう問題じゃ――」


蒼真が遮る。


「治せた」


声が震える。


「止められた」


透真は黙る。


それは否定できない。


蒼真は、拳を握る。


「俺が使わないって決めたから」


言葉が重い。


透真が静かに言う。


「それでも、お前の責任じゃない」


蒼真は首を振る。


「違う」


その時。


病室の扉が開く。


凛が立っていた。


左腕に包帯。


額にも小さな傷。


それでも、立っている。


蒼真と目が合う。


沈黙。


凛は言う。


「入らないの?」


蒼真は動かない。


凛は一歩近づく。


「そんな顔するな」


蒼真の視線が落ちる。


「俺がいたら」


凛が遮る。


「そうかもね」


あっさりと言う。


蒼真の胸が締まる。


だが凛は続ける。


「でも」


一拍。


「いなかったでしょ」


蒼真は言葉を失う。


凛の声は、怒っていない。


ただ、事実を言っている。


「任務は続く」


「事故も起きる」


「誰かは傷つく」


凛は肩をすくめる。


「それが世界」


蒼真の拳が震える。


「でも」


凛の目が、真っ直ぐ蒼真を見る。


「だからって、自分を全部の原因にするな」


蒼真は、何も言えない。


凛は、ふっと笑う。


「役に立たないって顔してる」


蒼真は、視線を上げる。


凛は言う。


「じゃあ、次どうするか考えなさい」


その言葉は、優しい。


だが、逃げ道ではない。


蒼真は、ゆっくりと頷く。


病室の窓の外で、夕日が沈む。


もし。


力を使っていたら。


凛は傷つかなかったかもしれない。


もし。


この先も使わなければ。


また誰かが傷つくかもしれない。


封印は、守る選択だった。


だが同時に。


誰かを守れない選択でもある。


蒼真は、自分の手を見る。


この手は、止められる。


だが、止められなかった。


その事実が、胸に残る。


問いが、静かに浮かぶ。


力を使わないことは、

罪になり得るのか。


答えは、まだない。


だが蒼真は知る。


封印は終わりではない。


それは、苦しみの始まりだった。

今回は、蒼真が初めて「封印の代償」を正面から受け取る回でした。


第16話で蒼真は能力を封じる決断をしました。

それは彼にとって、とても誠実な選択です。


ですが――

誠実な選択が、必ずしも良い結果を生むとは限りません。


蒼真がいなかった任務で、凛は傷を負いました。

もし蒼真がその場にいたなら、止められた可能性があります。


だからこそ、今回のテーマは重い問いになります。


「力を使わないことは、罪になり得るのか?」


力を使えば、誰かの意思を奪うかもしれない。

使わなければ、守れた命を失うかもしれない。


どちらも簡単に正解とは言えません。


この回で大切なのは、

凛が蒼真を責めなかったことです。


むしろ彼女は、蒼真の自責を止めました。


それは優しさでもあり、

同時に“逃げるな”という言葉でもあります。


蒼真はまだ答えを持っていません。

そして今はまだ、持たなくてもいい段階です。


ただ一つ確かなことがあります。


封印は終わりではありません。

それは、選択の重さを知る始まりです。


ここから蒼真は、自分の力と向き合い続けることになります。


そして次の物語では、

その力を“使うべきかどうか”という問いが、

さらに深い形で突きつけられていきます。

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