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獣乱のゲノム  作者: 大野 響
帰国編

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未来を作る

 森田を襲う、大トカゲAの尻尾。

 そこへ、ガクと蒼太がやって来て、連携して大トカゲAの尻尾を切った。


 ガクと蒼太が戦う隙に体勢を整えた森田は、ありったけの力で大トカゲAを真っ二つにした。


 風人、ユリカ、真歩も到着し、ミランとともに大トカゲBと戦った。


 森田達の下へと戻って来たアランは、戦車の砲弾に針を放出して進路を変えた。

 マモルも手から風を起こし、アランをサポートした。


 アランは素早い速さで、剣を使い戦車砲を何本も切って進む。


 アランは最後尾の戦車まで来ると、キューポラを開け、中にいた隊員の顔に剣を向けた。

「な、何しやがる!」

 恐怖でしゃがれた声が出る隊員A。

「降参して下さい。俺達は、強いですよ」

「···っ!」

 言葉が出ない隊員A。


 ミラン達の活躍により、その場に倒れる大トカゲB。


◆


 加治屋の下へやって来た、青木と菅原、志穂。

「そろそろ、潮時ですね」

 青木はそう言って、加治屋を真っすぐに見た。


「獣衛隊の分際で、防衛隊に楯突くつもりか!」

 加治屋は、顔を歪めて青木に怒鳴りつけた。

 加治屋の側にいた防衛隊員Aが、青木に向かって銃を突き付ける。


「ご存知でしたか?隊長の愚行は、既に全国の国民がライブで視聴していますよ」

「なんだと!」

 焦る加治屋の上空を飛ぶ、撮影用ドローン。


「あ、あれを撃てー!」

 加治屋の指令で、隊員Aがドローンに銃口を向けた。

「隊長!マズイです!」

 やって来た隊員Bが、加治屋にスマホの画面を見せた。そこには、大トカゲから逃げる裏黒の姿や、獣衛隊への攻撃命令を出す加治屋の姿が映っていた。

「既に、世界中に拡散しています!」

 その場で、わなわなと震える加治屋。


「まもなく総選挙ですね。それでは」

 青木は菅原と志穂を連れ、その場から立ち去った。


◆


 大トカゲを無事倒し、そのまま地面に倒れていた森田。やって来た志穂が手を貸して、ゆっくりと立ち上がった。


 その様子を、少し離れた所で見ていたユリカ。

 負傷した農民を背負い、運んでいたガクは、そんなユリカに気付いて声をかけた。

「今は負傷者の救護が先だ」

「わかってる」

 小さな声で言ったユリカの瞳から、わずかにこぼれる涙が見えた。


「行くぞ」

 ガクはユリカの頭にポンポン、と軽く触れてから、先に歩き出した。


◆


 病室の中、ベッドで眠っている凛の手を握りながら、眠っているアラン。

 目を覚ました凛は、眠っているアランの髪にそっと触れた。

「ん···」

眠っていたアランは、髪の感触に気付いて目を覚ました。

「凛!大丈夫か!?」

「うん」

 頷く凛。


 凛の手を勝手に握っていたことを思い出したアランは、手をパッと離して顔を赤らめた。

「ごめん、勝手に」

「助けてくれて、ありがとう」

 凛も顔を赤らめながら答えた。

「そんなの、当たり前だって」

 アランは息を吸い、思い切って言った。

「ずっと、会いたかった」

「···私も」

 凛がアランの目を見て言った。

 凛の返答にアランの胸が躍ったその時、ドアは突然開かれた。


 咄嗟に下を向くアランと凛。

「凛はもう起きたー?」

 ドアを開けたのは、風人だった。

「なんだ、起きてるじゃん!あれ?どうかした?」

「な、何でもないって」

 アランは顔を赤らめながら、平静を装った。


「ねえ、蒼太の作った新曲がtoktokでバズってるって知ってた?」

 興奮している風人が、アニメキャラと一緒に蒼太が歌って踊る動画をアランと凛に見せた。

「うわっ!マジか!」

 アランと凛は、目を丸めてスマホの画面を見た。


◆


 トカゲのせいで傷ついた人々の治療を手伝うミラン。

「助かったわ。あなたも休憩して」

「はい」

 看護師に言われ、ミランは患者の側を離れた。


 ミランが休憩室に向かおうとすると、蒼太が現れてペットボトルのお茶を渡した。

「お疲れ様。これ飲む?」

「ありがとう」

 ミランは、蒼太からペットボトルを受け取った。

「こっちに座ろう」

 蒼太に促されるまま、ミランは近くの席に腰掛けた。蒼太も向かいの席に座る。

「覚えてる?ミランは、初めて会った時も俺の友達の手当てをしてくれたよね」

「ああ、そうだったかな」

 ミランは、蒼太に言われて思い出した。


 微笑む蒼太。

「ミランはいつもそうだよね。誰よりも、誰かのために行動できる。そういうところ、前からずっと好きだよ」

 微笑みながら、さらりと言う蒼太。


 ミランは、ぼっ、と顔が赤くなった。

(好き!?私を!?ど、どーしよ)


 驚いたミランの視線の先に、休憩室のテレビニュースが流れている。そのニュースの内容は、獣衛隊元3班が暴走する大トカゲを倒す様子についてだった。

「あ、班長が出てる!」

 テレビを指差し、思わず話題を変えるミラン。

「そうだね」

 蒼太もテレビを見た。


「すいませーん、トカゲを倒したって言う獣衛隊の方がこちらにいるって聞いたんですけど、ご存知ですか!?」

 そこへやって来たインタビュアーらしき女性が、休憩室にいた患者に声をかけた。


「面倒だな。行こう!」

 蒼太は眉をひそめてそう言うと、ミランの手を握って走り出した。

「ええ!」

 戸惑いながらも、一緒に走るミラン。


◆


 衆議院総選挙の結果、当選して喜ぶ青木と、山城。

 青木は、スピーチで新しい日本を作ることを誓った。

 周囲から、多数の拍手が送られた。


 街の大画面ニュースに映し出される青木と山城の姿を見て、両手を合わせて喜ぶアランとミラン。


◆

 

 議員事務所内にて、パソコンを操作する森田と、その隣でスマホの動画を眺める志穂。

 動画の中では、警察に逮捕され、連れて行かれる裏黒と小間使、加治屋の姿が映っていた。

 

「元総理、逮捕されましたね」

 デスクに肩肘をつきながら、志穂が森田に話しかけた。

「やっとだな」

 キー操作を続けながら、森田が答えた。


「本当ですよ。隊長は議員になっちゃうし、私と菅原は議員秘書の肩書きになって、ネズミを獲ってた頃がすっかり過去になっちゃった」

 志穂はそう言って、その場で軽く伸びをした。


 キー操作を続けていた森田が、そこでふいに操作を止めた。

「俺の議員秘書アルバイトも、今日で終わりだ」

 志穂は驚いてのけぞった。

「え?バイト、本当に辞めちゃうんですか!?」

「言っただろ?忙しい間だけの約束だって」

 笑って席を立ち上がる森田。


「でも、バイト辞めてどうするんですか?もう獣衛隊も解散したのに」

「防衛隊から、直々にお誘いがあった。明日から、大佐になってくれだと」


「ええ!?」

 志穂は驚いて、思わず席から落ちた。


「おい、気をつけろ」

 森田は志穂の手を持って、席に座らせた。

「すみません。でもまさか、班長が大佐になるって、大出世じゃないですか!?」

「加治屋のせいで、防衛隊がだいぶごたついてるからな。立て直しが必要なんだと」

 森田は言いながら自分の荷物をまとめ、バッグを持ち上げた。


「じゃ、俺はもう行くから」

 森田は、出口に向かって歩き出した。

「え!?もう!?」

 慌てる志穂。


「あー。水川、言ってなかったことがある」

 部屋から出ようとしたところで、森田は足を止めて志穂を見た。

「何ですか?」

「Will you go out with me?」

(訳 : 俺達、付き合わない?)


「え!?」

 目を丸くする志穂。


◆


 刑務所の面会室にて、対面する加治屋容疑者とアラン、ミラン。

「単刀直入に聞きます。あなたは、退職を希望する篠原宏一を、どこへ連れて行ったんですか?」

「篠原?ああ···殺した」

 生気を失った顔つきの加治屋は、どこか遠い所を見るような目で答えた。


 アランは、怒りの表情で加治屋を睨みつけた。

 加治屋の回答を予想していたミランは、怒りを抑えて加治屋に聞いた。

「どうやって殺したんですか?篠原の最期について、あなたは私達に教えるべきです」


 相変わらずぼんやりとした目で、加治屋はゆっくりと話し始めた。


――加治屋の回想――


 篠原宏一は、遺伝子操作において、当時世界でも有数の知識と技術を有していた。特にドゥニアで研究していた期間の知見は、貴重なものだ。だから国の研究所でも、主任研究員として、大いに期待していた。


 だが、篠原には運がなかった。ある日、篠原の部下の一人が、遺伝子操作済みの受精卵を海外へ横流ししていることがわかった。

 受精卵には、日本人の税金と遺伝情報が全て詰まっている。当然、受精卵の横流しは阻止されなければならない。そこで、横流しに気付いた篠原が、苦肉の策で受精卵を廃棄したようだ。


 研究所の主任として、責任も感じたのだろう。篠原は退職を申し出た。だが、篠原は国の遺伝子操作研究に、余りに深く関わりすぎた。政府としては、篠原に民間企業で働いてもらうわけにもいかない。そこで、困っていた政府に代わって、俺が手を下してやったんだ。


――――――


「下してやった、だと?」

 アランは両手をわなわなと震わせた。

 その腕からは、わずかに針が伸びていた。

「今から、お前を父さんと同じ目に遭わせてやることもできるんだぞ」

「アラン、抑えて」

 怒りで我を忘れそうなアランを、ミランが制止した。

「加治屋、覚えておけ」

 アランは加治屋を真っすぐに見つめた。

「俺とミランは、十年後国会議員に立候補して、この国を変えて見せる」


「ほう」

 ずっと能面のようだった加治屋の目が、少しだけ色を帯びた。


「未来を作るのは、俺達だ」

 アランは力を込めて言った。


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