30.事なかれ主義者と大掃除③
ブックマーク登録ありがとうございます。
ラオさんがたくさん買ってきた朝ごはんをもしゃもしゃと食べながら今日の予定を共有する。
まずは胸に乗った食べかすを払っているラオさん。
「ラオさんは今日、掃除手伝ってくれるんだよね?」
「シズトが外に出ない限りはな。一応護衛だし」
「じゃあ部屋に残っている要らないもの外に出しといて。ドーラさんは要らないものが何かラオさんに教えてあげて」
「わかった」
ドーラさんが口元をタレで汚したまま返事をした。
とりあえずハンカチで口元を拭うように言いつつ、ホムラを見る。
「ホムラは僕の手伝いね」
「かしこまりました、マスター」
「シズトは何するの?」
「それぞれの部屋をそれとなく作っていくために、ひとまずベッドを作ろうかな、て。敷布団と掛布団ないし、ちょっとその辺売ってる場所知らない?」
「まあ、知ってるけどよ。部屋分けんのか?」
「着替えとか気まずいじゃん?」
「全然?冒険者なんてそこら辺気にしてらんねぇ時もあるからなぁ」
「僕は気にするの!とりあえず昼過ぎには人数分買ってきて。ホムラもお金持ってラオさんについていって、人数分の寝具買ってきてね。……ホムラさん??」
「………」
返事がない、反抗期かな?
おっかしぃなぁ。従順なホムンクルスって思って作ったけど、最近どんどんずれていってるような気がする。
ホムラが懐から巾着袋を取り出すと、無造作にラオさんに放った。
ラオさんが受け取ると硬質的な音が巾着袋からする。
「ラオ様だけで問題ないと思われます。私は午後も引き続き、マスターのサポートに徹します」
「あ、はい。……じゃあ、そういう感じで」
朝食をちょうど食べ終えたので、みんなと別れてとりあえずいい感じの部屋がないか見て回る事にする。
ドーラさんから、1~2階は個室として使われてないと言われていたけど、3階のどの部屋も部屋が広すぎた。
内装も少し違っていて、寝泊まりしている大部屋と比べると少し小さい。
昔の家族の子ども部屋とかだったんだろうか。何室もあったから書斎とかとしても使っていたのかも。
2階も同じような部屋が多い。こんなにも部屋があって何に使っていたんだろう?
1階は調理部屋っぽい感じの所のすぐ近くに横に広い部屋があった。多分ここでご飯とか食べてたんだろうな。
どこもかしこも広い部屋ばっかだなぁ、なんて考えていたら1階の端の方に狭い部屋があった。外にもすぐに出ることができるように扉がついている。
「よし、ここ僕の部屋ね!ホムラ、バッグから端材出して」
「かしこまりました、マスター」
出してもらった木の端材を【加工】して、まずは床の上にフローリングを作る。1枚の板がぴったりと収まるようにした。この部屋は土足厳禁にしよう。
なんか知らんけど、この部屋も内側に開く扉なので、そのスペースだけは確保しておく。
扉のすぐそばのデッドスペースになってしまいそうなところに下駄箱を【加工】で作り、靴を脱いで部屋に上がる。もちろん、ホムラにも靴を脱がせた。
ちょっとヒンヤリとした感触がするので、床暖房機能でもつけてしまおう。【付与】で木の板に暖かくなる機能を付けて、次の作業に取り掛かる。
そんなに服はないけれど、自分の胸の高さくらいの収納棚を作る。
外が見える窓の側にベッドを作ろうと思ったけど、そもそも朝日を浴びなくても自動的に魔道具で起きちゃうからなぁ。むしろ、ベッドで寝ている事の方が少なかったし、ベッドじゃなくて床に敷いて寝ることにしようかな。
そうと決めたら内装に力を入れよう。
「あ、外への扉も部屋に開くタイプなんだ」
うっかり空きスペースを作ってなかったので、とりあえず【加工】をし直して外へ出る所が開けられるスペースを作っておいた。
裏手側にすぐに出られるようになっていて、少し歩いた先に外に出られる所があった。
この部屋、警備の人が使うような部屋だったのかな。まあ、ぼくには関係ないか。
自分の腰くらいの高さの作業台と、背もたれ付きの椅子を【加工】で作る。作業台には引き出しを作り、中に魔石などを入れられるようにしておく。
……よくよく考えたら道具とか使ってないから意味ないな?
材料がたくさん入れるためには容量が足りないし……アイテムバッグみたいにすればいいのか。
それこそ、アイテムバッグに入れた物をここから取り出せないかな?……うん、できそう。
【付与】で引き出しの一つをアイテムバッグの異空間とつなげる。収納引き出しと名付けよう。
試しに端材を取り出してみると、問題なく取り出せた。
壁がちょっと殺風景だったけど、自分で作るのはここまで。街でいい感じのものを買い集めて自分の好みの部屋にしていこう。
「ホムラ、ここまでにして外壁掃除しよ」
「かしこまりました、マスター」
「ここから直接外に出るから、靴持ってきて」
「はい、マスター」
僕の靴も持ってきてくれたので、靴を履いて外に出る。
アイテムバッグから、昨日作り出した高圧洗浄機を取り出して、壁に向けて至近距離で構える。
魔力を流すと【付与】で刻まれた魔法陣が順番に光っていき、先端部分の魔法陣まで光ると、高圧洗浄機の先に魔法陣が展開され、そこから勢いよく水が噴き出した。
………………壁に穴が開いた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




