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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第1章 冒険者になって生きていこう

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11.事なかれ主義者の昇格試験①

 宿に戻ってご飯を食べた後はのんびり過ごした。

 ダンジョンで魔力を使ってしまったので、今日は浮遊台車の作成はお休み。

 正直浮遊台車だけを作ってればここで寝泊まりする分には困らないから、あんまり昇格試験には乗り気じゃない。

 ただ、ラオさんは早くランクを上げて欲しいみたいだ。

 イザベラさんもなんか知らないけど昇格試験を受ける前提で話してたし。

 ランクが高くなるとそれだけ良い依頼を回してもらいやすくなったり、ドランのもう一つのダンジョンに入れるようになったりするらしい。

 もう一つのダンジョンではいろいろな素材が手に入るらしいし、お金で素材を買わずに自分で集める事が出来るのはちょっと心が惹かれる。

 魔石も魔道具作り――というか外付けバッテリーみたいな感じで使うからあって困るものじゃない。

 最低限もう一つのダンジョンに入る許可がもらえるDランクまでは頑張ろうかな。

 とりあえず、余ったスライムの魔石を有効活用しよう。

 地図は便利だったけど、浮遊台車が作れないくらいになるのはよくないから別の方法で道がわかるようにしないとなぁ。

 そんな事をベットでごろごろしながら考えていたらいつの間にか眠ってしまっていた。




「今日の予定、試験でいいよな」

「……ダメ」

「アタシが片付けるから大丈夫だって」

「作りたい物があるから、今日はダメ」


 次の日の朝ご飯の時に、同じ机でご飯を食べ終え、胸に乗った食べかすを払っていたラオさんが当たり前のようにさらっと恐ろしい事を言った。

 一瞬、返答が遅れたけど、断固拒否だ。

 今日はいろんな材料を買って、新しい魔道具を作るって決まってるの。魔力が余ったら浮遊台車も売るって決めてるし。だからダメ。

 ラオさんは顔を顰め、ため息をついた後机の上に置かれていた魔力マシマシ飴を舐め始めた。


「また変なの作んじゃねぇぞ」

「変なの作った事ないんですけど~? ねえ、ホムラ。僕、変なの作った事ないもんねー?」

「はい、マスター」


 もそもそとパンをかじっていたホムラに同意を求めたらすぐに同意してくれた。

 多数決的に僕の勝ち。

 野イチゴのジャムが口にべったりくっついていたホムラの口元をおしぼりで拭ってあげる。

 されるがままのホムラは、拭かれた後にまたパンをかじり始めた。

 ……すぐにジャムを口の周りにつけたのは、僕に対する反抗なんだろうか。


「じゃあ、明日試験な」

「まあ、明日なら……いいかな? ホムラは今日、イザベラさんに紹介される街の依頼受けてきてね」

「はい、マスター」


 返事をする際に食べるのをやめるホムラの口元をまたおしぼりで拭ってあげる。

 拭い終わるとまたパンをかじり始めるホムラ。

 ……ねえ、やっぱりそれって反抗なの?

 僕が見ていてもホムラは気にせずカジカジしていた。




 次の日は朝ごはんを食べるとすぐに『はじめのダンジョン』に向かう。

 先頭を歩くのはドーラさん。

 いつもと変わらない全身鎧でガチャガチャ音を立てながら進んでいく。

 街の人たちはその音に反応してドーラさんの方を見て、道を開けてくれる。使い込まれた全身鎧は見た目的に歴戦の猛者! て感じがするもんね、怖いよね。

 隣を歩くのは無表情のホムラ。

 口元はしっかり拭ったのでジャムはついていない。

 とんがり帽子にローブを身にまとっているが、背負っているのはメイスだ。

 だって、魔法教えてないからね!

 魔法入門用の本は高くて買えなかったので、錆がひどくてまとめて放置されていた武器たちをリメイクした。

 ホムラは軽々と背負っているけど、僕は正直持ち上げるのがきつかった。

 魔法生物だから筋力とかやばいのかな。

 後ろをついてくるのは魔力マシマシ飴を舐めているラオさん。

 前回と同じ装備で特に変わりはないが、僕の飴を最近いつも舐めているような気がする。

 やっぱりプレゼントは魔力マシマシ飴でいいかな。

 ただ、そこら辺にある鉄を【加工】して【付与】したものだから正直安上がりで申し訳ないんだよなぁ。

 そんな事を考えながら歩いていると、すれ違う男性の視線が集まっている事に気付いた。傍から見たらハーレムパーティーだよね。僕もそう思う。

 こういうのにありきたりな先輩冒険者に絡まれるイベントとかないのはなんでだろ。

 『はじめのダンジョン』は低ランクの冒険者しかいないからかなぁ?


「ほら、もうダンジョン入るからボケーっとすんなよ」

「あ、はい」

「ドーラ、とりあえず前回と同じで基本お守りは任せた。ホムラは……とりあえずいい感じに自分を守るように命令しとけよ」


 そんな中途半端な命令で動くのかなぁ、とか思ったけど自己防衛を命じたら出来てるらしいし、いいのか。

 命令をしたらホムラはすんなり頷いた。

 ラオさんが動きの確認をしていたら、第一階層に到着した。

 僕はアイテムバッグを漁って、バスケットボールくらいのサイズの鉄球を出した。

 中身はほぼ空洞なので見た目よりめちゃくちゃ軽い。

 取り出したらすぐにドーラさんが反応して興味深そうに見てきた。


「なにそれ」

「ボールガイド。階段まで案内できるように作ってみました。ここに魔石を入れると階段まで転がっていくんです。ここを弄ると上り階段に向かって転がって、元に戻すと下り階段に向かって行くんですよ。まあ、ちょっと欠点は地図も入れないと一直線で進んで壁にぶつかるだけなことですね」


 後ろからため息が聞こえた気がした振り返るとラオさんがこめかみを抑えていた。

 片頭痛持ちかな。今度片頭痛が収まる魔道具作れないかいろいろ考えてみよ。

 とりあえず、自動探知地図を取り出して起動すると、この前見た地図が浮かび出た。

 その地図の上に新しく【付与】して作った紙を乗せて、そっちにも魔力を流すときれいに複写した。


「便利」

「これはオートトレースペーパーです。なんかよく分かんないですけど、複写できるので便利ですよね」

「………ちょっと増やしてもらうかな」


 なんかラオさんが独り言を呟いているけど、何か足りないものでもあったかな?

 気になるけど、複写したものを小さく折って、魔石を入れたところに一緒に入れる。

 これで準備良し。

 自動探知地図は次の階層まで出番がないのでアイテムバッグにしまって、歩くスピードくらいで転がっていくボールガイドを追う。




 第一階層ではボールガイドを先頭にしていたが、落とし穴に引っかかってボールガイドが落ちた。

 それからはドーラさんが前を歩き、ボールガイドの隣を僕が歩きつつ指示を出す事にした。

 第二階層では、ボールガイドは魔物がいようとお構いなしに進んだので慌てた。

 魔力切れにならないと止まらないので、持ちあげて対応した。リードでもつけようかな。

 第三階層も問題なく進む事が出来た。

 前回よりもサクサクと進む事が出来ているのは魔物や他の冒険者を避けて、遠回りする事がないからだろう。


「本当は魔力の気配の少ないルートを進ませるようにしたいんだけどなぁ」

「……もうそのくらいで十分だと思うぞ」

「ん、便利」


 中途半端で妥協するのはよくないと思います。

 準備期間が短すぎたから、いろいろ【付与】できなかったのが悔やまれる。

 結局浮遊台車も作れなかったし。

 魔力の効率的な強化方法なんかないかなぁ。……特に閃かなかったので地道に頑張るしかないか。

 後悔と未だ納得できていないモヤモヤ感を抱えつつも、その後、ボールガイドが魔力切れで止まった時に魔石を追加投入するか、スライムの魔石拾いしか仕事がなかったが、第三階層も余裕で踏破した。

 やっぱりラオさんの強さやばいよね。

読んで頂きありがとうございます。

面白かったり、続きが読みたい、と思っていただけたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 朝食に野いちごのジャムを出せるのは良い宿だからということでしょうか。 甘味は貴族の領分という記述もあったため、ジャムが宿にあるのが不思議に感じました。 砂糖未使用とかでしょうか。
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