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条件

 京葉電鉄が提示した条件は日鉄にとって受け入れがたいものであった。京葉電鉄が日鉄に示した条件は以下の通りである。


 一、日本鉄道は京葉電鉄が所有する土地を有償で借りて常磐新幹線と新設在来線を建設する。


 二、新設在来線は現在計画されている東京湾岸貨物線を旅客化にして建設する。


 三、新設在来線は東京地下電鉄有楽町線と接続する。


 四、新設在来線は当初計画通り、お台場埋立地を通り東海道本線に接続する。尚、お台場埋立地には駅を設ける。


 五、建設予定である東京ドリームユートピア(仮称)付近に常磐新幹線と新設在来線が停車する東京ドリームユートピア駅(仮称)を設置する。


 六、東京ドリームユートピア駅(仮称)には常磐新幹線と新設在来線の全種別の列車を停車する。


 七、常磐新幹線と新設在来線の駅に関係するサービスは京葉グループ企業が優先的に請け負う。


 八、常磐新幹線と新設在来線の沿線開発は京葉グループが優先的に行う。


 九、今後の建設される新幹線沿線開発において、京葉グループも参加できるよう協力する。


 日鉄にとって、京葉電鉄の条件は傲慢で実に不快極まりない内容であった。何で京葉電鉄如きにここまで条件を突き付けられなくてならないのかと。

 しかし京葉電鉄にすれば、これは当然の条件とも言えた。新幹線によって空港アクセスのシェアが奪われる京葉電鉄としては、失われ分以上の補償が求められた。

 元々、空港用地取得で京葉電鉄の協力を得るため鉄道アクセスにおいて、一社独占とする約束があった。しかし新幹線も建設されるという話になったため、その補償として砂岡と運輸省が提示された。今回、日鉄に提示した条件は、そのときに京葉電鉄が提示された条件に上乗せしたものである。京葉電鉄は、この条件は当然至極の感覚でいた。


 また、この条件は京葉電鉄だけではなかった。東京都と千葉県からの要望も盛り込まれていた。

 東京都はお台場に埋立地を造成していた。これは東京の過密とインフラ不足を解消するためのものである。これはかつて産業計画会議というシンクタンクが提言した第七次勧告1959(昭和34)年「東京湾2億坪埋め立てについての勧告」を部分的に実現しようとしたものである。

 この埋立地に企業・住宅を誘致するためには、交通インフラは不可欠である。そして日鉄がこの埋立地を通過する形で貨物線を建設しようしていた。東京都すれば、これを旅客化させることで交通インフラの改善を図ろうとしたのである。


 また千葉県も京葉電鉄と共同で埋立地を造成しており、街づくりの一環として交通インフラを求めていた。何より千葉県が空港建設に協力的になったのも、この交通インフラ整備が出来ることを政府から約束されていたからである。

 更に千葉県は浦安に建設予定の東京ドリームユートピアを誘致して、成功させたいという思惑もあった。これは単に税収増を狙ったものだけではなかった。工場排水によって失業状態に追い込まれた漁民を救済するためにも、新たな雇用を生み出す東京ドリームユートピアに期待するところがあった。


 しかし日鉄にすればこれらの事情はそれほど重要ではなかった。格下の京葉電鉄から条件を突き付けられるくらいなら、常磐新幹線の計画などなくなっても構わないと思う理事もいたくらいであった。


「それにしても東京ドリームユートピアに新幹線も含む全列車を停車させるというのは、些か恣意的ですな。ただでさえ遠回りなのに、こんな駅に全列車を停車させるとは」

藤山は露骨にふんぞり返った態度で言った。それに対して井出は

「そうでしょうか。江戸川・浦安・市川の住民を納得させることが出来ます。弊社の利益は、そのついでしかありません」

と話した。


 一見、日鉄が強く見える光景であった。しかし日鉄は追い詰められており、交渉のペースは完全に井出が握っていた。藤山のふんぞり返りながら井出を睨みつけている姿は、自らの弱みを必死に隠す芝居のようであった。

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