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闘争

 日本労農党の支援は助言から運動員の派遣など多岐に渡った。このときの様子を当時反対運動で活動していた与那城勇作は語る。

「労農党の支援は凄かった。一坪運動や立木運動なんかはワシらでは思いつかないことだったし、労農党の手配で来た学生たちも頼りになる存在だった。学生が運輸省の職員に向かって『ここは食べ物を育てる大事な大地だ。そんな大事な大地を金持ちの贅沢の空港で潰すな』と言ってくれたときは、本当に嬉しかった」


 こうして農民と学生を中心とした左翼団体が共闘していった。当初は強制執行をしようとする運輸省とそれに同行する機動隊に対して、集団で押し返す程度のものだった。それに対抗するため、政府は強制執行を遂行するため機動隊を増やした。

 反対運動が機動隊に圧されるようになると、学生が機動隊に対抗するため機動隊を襲撃するようになった。機動隊が少数の人数で見回りをしているところを学生らが大人数で包囲して襲撃するパターンだった。


 特に酷かったのが二丁目十字路事件である。これは巡回警備に当たっていた5人の機動隊員が学生を主にした反対派に襲撃された。襲撃した人数は不明であるが推定で30人ほどされている。

この襲撃では反対運動で初め火炎瓶が使用される。結果は悲惨なもので3人の機動隊員が全身を焼かれて殉職し、生き残った機動隊員も眼球破裂で失明や四肢に障害を負うことになった。


 勇作はそのときのことを語る。

「あの事件で学生たちと農民は大勝利と騒いでいたが、ワシは恐ろしいものを感じた。何せ人が死んだのだから、このままでは大変なことになると」

この勇作の危惧は現実のものとなる。

この事件を契機に政府は反対運動に対して一切の懐柔策を放棄する。そして力によって徹底的に潰す決意を固める。


 政府は全国から六千人の機動隊を集める。そして放水車を使って反対派をなぎ倒し、警棒と盾で叩き潰す。反対派は火炎瓶で応戦し、多数の機動隊が火だるまになるという地獄絵図が連日に渡って繰り広げられた。そして反対派は農家の婦人、老人、小中学生まで動員して抵抗し、益々もって混迷化していった。


 当時、左寄りであったマスコミは反対派に同調していた。マスコミは政府が金持ちのために弱い農民を虐めている論調を張る。中には少年漫画雑誌までもが少年少女たちが闘争に参加していることを賛美する巻頭特集を組んだ。更に取材によって得られた警察の内部情報を提供する支援まで行った。


 そうした状況で更に事態を悪化させる事件が次々と生じる。それが空港建設労働者たちへの襲撃で、更にその家族への襲撃であった。

 左翼系団体のメンバーが空港建設作業員の作業員宿舎を放火する「大山建設放火事件」が発生する。事件後に左翼系反対団体から

「我々、革命軍は空港工事を阻止すべく、その工事拠点への攻撃を敢行し完全に破壊せしめた。これによって工事を阻止し必ず勝利をする」

という犯行声明を各報道機関に流した。

 更に空港建設に勤しんでいる旧炭鉱労働者とその家族が住む団地にも、左翼活動家と一部の反対農民らが襲撃する「空港団地焼き討ち事件」が発生した。夜間に団地へ忍び込んで、団地の部屋に次々と火炎瓶を投げ込んでいった。

 結果、団地の至る所で火災が発生し、焼死者が50人にも及ぶ大惨事となった。中には乳児を抱えたまま焼死体として発見される悲惨な様相であった。


 このときも左翼系反対団体から声明が高らかに発表された。

「我々、革命軍は労働者でありながら、空港建設に協力している裏切り者たちに対して、正義の鉄槌を下した。この鉄槌は労働者を覚醒する号砲である。我々の勝利は近い」

 しかし、凄惨極まりない事件により世論は反対派を社会の敵と見なすようになった。


 この空気を敏感に察したマスコミは、それまで反対派に同調していた論調から反対派を糾弾する論調になった。また反対運動を煽っていた労農党も慌てて離反する。

労農党は機関誌「赤空」で

「この一連の焼き討ち事件は民主主義を否定した反社会行為である。多数の被害者を出した反対派は社会の敵に他ならず、断じて許されるものではない」

と反対派を糾弾する声明を出す。

 そして労農党は一坪運動や立木トラストで取得した土地を空港公団に市場価格よりも破格の金額で売却した。

 こうして、反対派の農民と左翼系の学生団体は完全に梯子を外され、孤立していった。


 警察は「空港団地焼き討ち事件」を犯人逮捕に躍起になる。しかし騒乱状態にある地域での捜査は難航を極め事実上不可能であった。

 そうした状況で空港建設の労働者たちは復讐心を激しく燃やしていた。特に空港団地を焼き討ちされた旧炭鉱労働者たちの怒りは凄まじいものがあった

 元炭鉱労働者たちは新天地で空港建設に勤しんでいた。そして生活も落ち着きだし、何よりも炭鉱労働よりも安全な作業であったため、彼らは満足しつつあった。正しく働けば豊かになれることを信じていた。

 そんな彼らに反対派は焼き討ちを行い、数多の犠牲を出した。家族や仲間を焼き殺された者たちが復讐心に燃やすことは自明の理であった。


こうして事実上の決戦となる三丸丘事件に発展していった。

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