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第五話
「ごちそうさまでした」
俺が手を合わせて言う。
「ごちそーさまーでしたっ」
深谷も食べ終わったようで、俺にハモるように言っていた。
皿を片付けて、それも全部終わってから、部長が今日は終わりだよと言ってくれた。
「ありがとうございました、それではお先に失礼します」
「しますー」
深谷が俺についてきて、一緒に帰ろうとする。
少し後ろを歩く深谷、ほとんど同じ速度で歩いていた。
「……どうした」
止まって聞くと、俺に深谷は手を差し出してくる。
「一緒に帰ろうって思っただけだよ」
笑顔がまぶしい。
「…そっか」
俺はそういう深谷をまずは無視することにした。
少なくとも、下足箱までは。