21話
さて、何はともあれ学院生活の初日が終わり、寮に帰った俺は…………正座しています。はい、ティーナの説教の真っ最中です。なぜこうなったかというと……そうだな、結論から言うと、俺が使った魔法の説明は思ったよりあっさり終わった。その中でわかったことは、『五行思想』それとついでに『四大元素』などの考えは、超が付くほどマイナーなものだということだ。いわく、
「う~ん、ここで言うなら『十大属性』の派生ってとこかな?」
と、言ったのはティーナである。ミコトが知っていたのは、数多の本を読んでいたおかげ、ということだろう。いや、そもそもこの世界にも同じような考えがあったことを驚くべきか。
しかし、そう、しかしだ。その後がいけなかった。俺としては、説明が早く終わって、余ってしまった授業時間を有意義に使おうと思っただけだったんだが……この間考えた『聖剣の再現』をやってみたわけだ。
<乱世にありて騎士を導くもの、昏き時代を照らす一条の光、その剣の銘は、赤き竜を背負う王を定めし宝剣>
単に名称を言うのではなく、その剣の性質を述べた方が魔法っぽいと思っての詠唱だったんだが……五行の説明とかして、テンションが上がっていたんだと思う。あとティーナが鋼の魔法を知らないって言っていたから、魔法言語による詠唱は『他の属性を使う人には全部を理解できない』、と結論付けたからだ。まったくあのカミサマ、特別な力は与えられないとか言ってたくせに、この言語能力は間違いなく反則だろ。
ん?ああ、聖剣は使えなかったよ。まあよく考えれば当然のことで、魔力が全然足りないらしい。もしこの魔法が使いたいなら、今の20倍の魔力が必要だってアーノルド先生が言っていた。ついでに、魔力が足りない状態で魔法を無理に使おうとすると、『意識が飛ぶ』か『寿命が縮む』ことになるらしい。どちらになるかは、その時の意志の強さ次第とのことだ。ちなみに今回は、制服に付加されていた安全装置のおかげで魔法が強制終了された。
「ちょっと、聞いてるの!」
安全装置って言ってもアレだ、『一度に一定以上の魔力放出の禁止』っていう呪いの類らしい。まあ今回のことで効果が切れたので、新しい制服(今着ているのはラルツの兄のおさがりで、俺用のができるまでの間に合わせだ)が来たら今度は壊さないようにしないと。あ、あと20倍っていうのもこの安全装置に残っていた『痕』を見たとか……よくわからなかったけど。
「ア・ス・カ!」
おっと、今正座に説教の最中だった。途中からループし始めて聞き流し始めてしまったが……俺のこと心配してくれたからこその説教のはずだし、何とか誤魔化、じゃなくって、反省したとこを見せないと。
「まあまあティーナ、アスカ君も決闘の後で疲れてるんだろうしね?」
ラルツがフォローしてくれたおかげで、少しだけ落ち着いたところに言い訳を重ねてみる。
「ちょっと、振り返って、何が、いけなかったのか、考え、直してた」
「へぇ、それで?どんな結論が出たの」
口調にかなりトゲがあるが、まあ自業自得だ。いや、今はそんなことどうでもよくて、
「やっぱり、知識が足りない、内に、相談もせず、魔法は使うべきで、なかった。あと、自分の知識が、魔法を使う、役に立つと知って、興奮していた、と思う」
これは特にいま思いついたわけではなく、やらかしたと思った時に割とすぐ考えたことだ。まあ、更に言ってしまえば、異世界にきてから冷静であったことなどない気もするが……
「そうだね、おれも初めて魔法が使えたときは興奮して手が付けられなかったって聞くし、なまじ魔法以外の知識がある分ぶっ飛んだことやっちゃたってある意味当然な事かもね」
「それは……まあわかるけど」
「誰だって失敗はあるもんだよ?大事なのは繰り返さないことだって言うし、この話はここまでにしようよ」
う~ん……なんだか、ぐずる妹をなだめる兄の図に見えてきた。
「はあ、もういいわ」
「申し訳、ない」
最後に一つ頭を下げる。
「それでね、さっき先生がこれから実技の時間には『遺跡』の方に行った方がいいんじゃないかって」
「え?あそこって2年生以降じゃないと行けないんじゃなかった?」
遺跡ってあれか?魔物もどきが出るって言っていたヤツか?
「うん。でもうちにはティーナがいるし、アスカ君もナハート君と戦えるレベルだから特別に許可するって」
「あれは、ナハートが、俺に合わせたから、であって、戦えたわけじゃ、ないと思う」
後衛と接近戦で互角なんて、絶対戦えたなんて言えないってば。
「でもそうね……アスカがどんなことができるのか確認するのには、人目がない方がいいし……あそこでやられても遺跡の入り口に戻るだけだし、そうしましょうか」
ああ、いきなり決闘をやったかと思ったら、次は実戦ですか……




