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魔物使いの少女  作者: つい
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英国兵器はいいぞ!

 道中襲撃もなく、無事に全員で北城に到着。


「では早速始めましょう。ゴブリンのみなさんはこのパワードスーツで瓦礫の除去を、師匠さんとハナさんと姫雪さんは被害状況を、ネルロさんとジオさんは動かせないような巨石をお願いします」


 テキパキとした指示。もしかして01さんってちょっと優秀? ……そんなわけないか。うん。


 各々作業に取り掛かる。省エネモードを解除したジオさんはなんと五メートルほどあった。雪ゴリラよりデケェ。


 そして顔が(いか)つくなった。さらばイケメンフェイス。




「01さん。見てきたよ」

「ああ、ハナさん。お疲れ様でした」

「特に被害が酷いのは城門近くと城近くだね。門のない城壁付近はそこまで壊れてなかったよ。……まあ全く被害がないワケじゃないけど」


 一部集中でぶっ壊されてるなら分かりやすいけど、こういう風に広く浅く一部深くみたいに壊されてると修復が大変だ。


「分かりました。では次はゴブリンさんの運んだ瓦礫の処理を手伝ってください」

「いいけど……処理ってどういう?」

「実際に見てもらった方がいいですね」


 01さんが白衣のポケットから霧吹きのようなものをドカドカと出してくる。おっと、もう四次元ポケットくらいじゃ驚かないよ?


「これを瓦礫に吹きかけてください。そうすると……」


 目の前で瓦礫が()()()()()()()


「こうやって粘土状にして、復興の素材にそのまま再利用します。あ、間違っても液体には触れないように気をつけてください。……どうなるかは想像つきますよね?」


 ええ。はい。もちろん。それはもう、鮮明に!


 何人たりとも私の風上に立つべからず。ちょっ、風向きが変わった! 今日は……風が騒がしいな……とか言ってる場合じゃない!


 私の風上には師匠。今、そのトリガーが引かれる。


 もっと先へ、加速したくはないか少女よ?


 全てがスローモーション映像になる。しかし、残念無念! 私の動きもスロー!


 あっっっぶな!!


「すまんハナ! 無事か!?」

「な、なんとか」


 いやー焦った焦った。


 ふと液体の行き着く先が気になって、


 それはまさに01さんにぶつかる寸前。01さんはこっちに背を向けているので、明らかに宙を舞う液体に気づいていない!


 はい! ここで二択くえすちょん!


 ・01さん危ない!(直撃を確認してから言う)


 ・一度痛い目にあって危険薬を自重すべき!


 これ、どっちが正解だ!?


 しかし、私が答えを出す前に、


 ジュワ。


 01さんまでの距離一メートルくらいのところで、液体は赤い魔法陣に阻まれ、蒸発するように消えた。


「ハナさん? どうしました? 何か問題が起きましたか?」


 しかも、本人は気づいていない模様。


 考えてみれば、自分で実験してるんだからそりゃ対応策はしっかり研究されてるよね。策に溺れない策士は最強って誰かが言ってた。


「いや、少しこの風泣いてるなぁーなぁんて……ハハッ、うん。なんでもないよ」


 01さんは自分だけ安全確保してるわけだ。そりゃ危険薬減りませんわ。つまり私たちは今後も01さんに振り回されるのだ。なんか涙出てくる。弱いって辛い。


 あらかた瓦礫処理が終わったら、次は瓦礫をこねてジオさんが大まかに家の形をつくり、私たちが内部やらなんやらを微調整。


 流石に家具とかは作れない。でも、できる限りの装飾品をつくってみる。やあピカソ、久しぶり。元気してた?


「ハナはさっきから何をつくっているのだ?」

「アメンボとシュモクザメとグランディスオオクワガタ」

「なるほどわからん」


 ……まあいいよ。他人に理解されたらそれはもう、現代アートとは呼べない(大暴論)


 私がグランディスオオクワガタのアゴの湾曲具合を微調整しているうちに、どうやら復興作業は終わったらしい。


「おいハナ、粘土もらってきたぞ」

「あのねぇゴブリンさん。別に私は粘土遊びが好きなわけでは……」

「じゃあ返してくるぞ」

「待って! ……もしかしたら何かに使えるかもしれない」

「ハァ……」


 ため息つかれた。解せぬ。


「そういえばこの後、01に俺のつくった兵器を見てもらう約束があってな」



 ……嫌な予感的中。とりあえずヒヨケムシフィギュアをゴブリンさんに投げつける。話を聞きながらつくったにしては、なかなかいい出来だ。


「よかったらハナもうわなんだコイツ気持ち悪いな」

「分かったじゃあ早速行こうか。……名前つけて後生大事に持っててね」


 ヒヨケムシ改めアルティメットデストロイヤーと名付けられた。アルちゃん。





「これが、俺の作った兵器だ!」


 大きな二つの車輪が、太い筒のようなもので繋がっている。



 どこからどう見てもパンジャンドラムです本当にありがとうございました。



「ゴブリンさん。参考資料見せてくれる?」

「ああ! いいぞ!」


 聞くまでもない。でも一応


『ゴブリンでも分かる!簡単英国兵器〜英国紳士の秘めたるロマン〜』


 パラパラめくると、丁度、パンジャンドラムのページが出てくる。


「英国兵器と言ったらまずはコレ! 時速百キロ以上の速度で火薬を抱えて目標に突進! 全てを破壊する最強の殺戮兵器! …………だったらどんなに良かったことか」


 うん待って? ゴブリンさんはこの説明を読んだ上でこのパンジャンドラム(パーティーグッズ)をつくったんだよね?



 おいおいつまりそれってYO!



「説明文から分かってはいたんだ。これは絶対まともな兵器じゃないって。でもよ、なんつぅーか、妙に惹かれてな。気付いた時にはもう」


 もう堕ちてやがる……マモレナカッタ。


 しかし、唯一の技術者であるゴブリンさんが英国面に堕ちてしまったのは、私たちにとっても大大大打撃だ。一週間ごとに鶏を入れ替える自分を想像して恐ろしくなる。


「この兵器は」


 ハッ! そうだ! まだ01さんがいる! この人はこの人でヤバいけど、英国兵器に理解はないって性格している! 多分、きっと、そうであってくれ!



「素晴らしいです!!」



 あっ


「美しい! こんな兵器は初めて見ました!」

「ここは……こうすればなんとかつくれそうだな!」



 終わった。今から氷をいっぱい集めようか? それとも伝書鳩でも育てておけばいいのかしらん?


 ……誤解がないように言っておくけど、これらの兵器は至って真面目に開発されたのだ。中には「お前うっそやろ……」と言いたくなるよな兵器もあるけれど……けっこうあるけれど! 開発陣は本気で真面目だったことを忘れないでほしい! ……私はなんの話をしているのだろう? まあいいや。


 ところで、イギリスといえば戦車の母国。


 私も某おじさんであるからして、戦車は好きだ。車内で紅茶を嗜む夢もある。もう英国兵器からは逃げられない。ならばせめて楽しいことを考えていよう。


 熱く語り合うゴブリンさんたちを部屋に残して、私は部屋を後にする。


 ログアウトした私はパソコンを立ち上げて、格言一覧を検索。


 訓練されたおじさんになるためにパンツァーフォーしなくては(使命感)。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 数話前の砲弾?と、英国臭がする、で何となく(良い意味で)予感はあったけど、、、パンジャンドラム!! 良いぞもっとやれ!って思いました。 [一言] はじめまして。一気読み途中に失礼します。…
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