16.ハーレム開始
前回までのあらすじ。
惣菜屋でおかずを買い、宿までの帰り道、茶髪のエルフのグノームは、魅了魔法で遊角を魅了した。
――――――――――――――――――――――――
宿へ帰る途中、茶髪のエルフに手をつないで欲しいと言われ、二つ返事でそうした。
だって年頃の15歳だもん、仕方が無い。
俺と同じくらいの年の見た目をした女の子がそんなお願いしてきたら、断れるわけないだろ。
例えそれが見え見えの罠だとしてもだ!
そして案の定、彼女は俺に何か仕掛けてきたらしい。
一瞬だけ、彼女のことが死ぬほど恋しくなった。
しばらくするとその感情が急に冷め、俺は正気を取り戻す。
「宿についたですよ。さっさと荷物を運ぶですよ」
さっきまでのおどおどした態度はどこへ。
茶髪エルフは俺に対して高圧的な態度を取っていた。
ふむ。
ログ開示。そう心の中で唱える。
――――――――――――――――――――――――
ログ:
『……』
『待つバグ! 俺様はお前に気があるわけじゃないバグ!
それに女の子だけの部屋に閉じ込められると、押さえが効かなく……』
遊角の所持金が2万MA減った。
遊角は魅了魔法により魅了された。遊角の魅了状態は直った。
遊角は魅了魔法への二次免疫を獲得した。
――――――――――――――――――――――――
チャーム、とか言ってたのは、俺に魅了魔法をかけようとしてたのか。
実際に一瞬とはいえ、魅了されていたらしい。
転移魔法による防御は、完璧ではないということが判明した。
そして魅了魔法への二次免疫……二次免疫って何だ。
一次免疫もあるのか? 三次、四次免疫もある?
「部屋に着いたですよ、さっさとドアを開けるですよ」
「どうぞ」
部屋の扉を開く。
とりあえず、彼女の魅了魔法によって、操られているフリでもやって様子を見ることにした。
部屋の中を覗くと、バグログと赤髪エルフが熱い抱擁とキスを……
「って、何やってんだよお前ら?!」
『ま、待つバグ! これは向こうからのお誘いで……』
「あら、グノームさん、おかえりなさいですわ」
魅力的なボディを持つ赤髪エルフが、茶髪エルフを迎える。
いつの間にか、赤髪と緑髪の二人の拘束が外れていた。
「バグログ! 勝手に拘束を解いたな?!」
『だ、だって2人の拘束を解いたら、素敵なことをしてくれるってバグ……』
うらやまけしからん。
いいぞもっとやれ!
「それで、グノームがえらそうにしてるってことは、首尾は上々ってことでいいのかしら?」
「はいですよ。そこの豚!
さっさと荷物をシルフィーンとイフリアに渡すですよ!」
「豚って……ほれ、夕食だ」
俺は袋を地面に置き、中身を並べる。
魔導イカリング、暴れ男爵コロッケ、大ウシガエルの唐揚げ。
マンドレイクの煮物、スライムこんにゃく、怪魚のちくわフライ。
コカトリスのロースト、魔法樹ドングリパン、小竜種のピリカラ和え。
熱帯トドの串焼き、トトンカツ、ムラサキグリの煮物。
合計12種類を4つずつ。
どれが当たりかわからなかったので、手当たり次第購入した。
……買いすぎたから、余りは明日の朝食に回そう。
「豚! 今後は私だけでなく、シルフィーンとイフリアの命令にも従うことですよ!」
茶髪エルフのグノームは、さっきまでの大人しい態度が豹変し、俺を豚呼ばわりし続けている。
「よろしくですわ」
アマンサに劣らない胸に、おしりも大きい大人な体の赤髪エルフのイフリアが、俺に挨拶した。
「魅了魔法の餌食になるなんて、さっきの男と同一人物とは思えないほどのマヌケっぷりね」
見た目12歳くらいの、色んな意味で小さな少女の緑髪エルフのシルフィーン。
彼女は、さきほどの攻撃的な態度から一変、むしろ俺を憐れんでいるような視線を向けてくる。
「はははは! さあ、私達の解放を記念して、この豚が買った飯で宴を開くですよ!」
『俺様のことを忘れてないバグ?』
「何だですよ精霊体。お前の主はあの少年。
少年が操られているということは、お前も操れるということですよ」
『遊角にかかっていた魅了魔法なら、とっくに解けているバグよ?』
「……」
「わー! バラすなよ!」
切り出しにくいから、黙っていたというのに! バグログの裏切り者!
「……い、今までのは、ほんのジョークですよ?」
「そして、すがすがしいまでの態度の変わり様だな?!」
グノームが、とんだ猫かぶりのだ女ということが分かった。
「ああ、コカトリスのローストが美味ですわ」
「いや、このスライムこんにゃくもなかなかいけるわよ」
「こっちはこっちで飯を食い始めてるし! マイペースだなオイ!
ちょっとは仲間の心配しろよ!」
シルフィーンはモグモグしながら、何で? という表情をしている。
「心配? どうしてそんなことする必要があるんですの?」
「そうそう。どうせアンタ、私達を殺すつもりないんでしょ?」
「……あれ? いつの間に俺への警戒心が解かれたんだ?」
出発前は、俺に殺す殺す言っていた緑髪のエルフ、シルフィーンに一体どんな心境の変化が?
「私達エルフは、精霊体と心を繋げることができるのよ。
さっきイフリアがしていたみたいに」
「バグログさんの記憶を通して、あなたのこれまでの行動を見ましたわ。
それで、どうやら無害そうだと判断したわけですわ」
あの濃厚な百合シーンにはそんな意味合いが?!
「アンタの行動の中には、ドラゴンを討伐した実績があるらしいじゃないの。
私達を囲おうってのなら、当然、分け前を貰えるんでしょうね?」
「国王直々の報酬なら、少なくとも1億MAは下らないですわ。
4等分しても2500万MA。薄い本がたくさん買えますわ」
「そうね。それにコイツの利用価値はそれなりにありそうだし。
蓄えがたまったらトンズラすればいいわね」
「……そういう作戦会議は、本人の前でするなよ?」
俺がちょっと外出している間にバグログを騙くらかして、記憶を覗き見るイフリアの抜け目なさ。
そして先ほどのグノームの魅了魔法。
シルフィーン以外は、かなり狡猾で油断ならないことが分かった。
「ちょっとアンタ! 今、私に対して失礼なこと考えたでしょ!」
怪魚のちくわフライを食べながら、シルフィーンは俺に言いがかりをつけてくる。
よほどお腹が空いていたのだろうか。3人は次々とおかずに手を付ける。
「口に合ったようでなによりだ」
「私の質問に答えなさいよ!」
シルフィーンの糾弾を適当に流しつつ、俺も夕食に手を付ける。
今日この時、俺のハーレムは始まった。




