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1話 いざ冒険者ギルドへ



 周りがガヤガヤと騒がしい。

 耳に意識を集中させると、金属の擦れる音や野太い男たちの声が聞こえてくる。



 もはや聞き慣れた喧騒だ。

 少し時間をずらして、あまり人がいなさそうな昼過ぎあたりを選んだのだが、変化したようには思えない。

 あまりの変化のなさに安らぎすら覚えてしまいそうだ。



 …………いや、やっぱそれは嫌だな。

 こんなところでリラックスなどしたくない。



 再び意識を目の前に移して、掲示板に貼られている紙に目を通す。



 やはり悩んでしまうな。

 果たしてどれが良いのだろう。

 一番良いのは楽で多く金を稼げる依頼だが、残念ながらそんなものはほとんどない。



 危険なものほど報酬は高くなるし、逆に安ければ誰にでもできそうな物が多い。

 なので、少しでも割りの良い依頼を受けようと、こうして吟味する毎日だ。



 良さそうな物に手を伸ばそうとするが、途端に周りの方が良く見えてしまい止まってしまう。

 これを数回繰り返す。

 ここまでが俺のルーティンだ。


 


「………よし」



 ようやく決まり、依頼書を剥ぎ取る。

 この依頼書選びが最も難しいと思うのは俺だけだろうか?



 そんなバカなことを考えていると、後ろからトントンと背中をつつかれる。

 なんだろうかと思い振り向くと、頬に何かが当たって顔が歪む。



 細く、白い指が映る。

 見なくても不細工な顔になっているのが分かる。

 こんなイタズラをしてくるのは一人しかいない。

 ため息をつきながら、顔を見ようとしたところで、一つに纏めた真紅の長髪に誘導される。



 燃え盛る髪は美しい。

 だから、ムカつく。


 髪から視界を外し、視界を広げて犯人の全体像を収める。

 白を基調とした服を着込んでおり、腰に携えた剣が異様な程に様になっている。

 冒険者より騎士様の方がしっかりとくる少女は、まるでイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべていた。



 やめろと目で訴えるが、一向にやめる気配は感じられない。



「あはっ。また引っかかったね」


「………お前は相変わらずだな。ルージュ」


「久しぶりだね。ヨウル」



 ルージュ・リリアーデ。

 会って早々だが、既に俺の頭の中はどうやって逃げようか考えるのでいっぱいだ。



「あ、今どうやって逃げようか考えてるでしょ?」


 はい、その通りです。

 

「悲しいなぁ。普通はこんな美少女に話しかけられたら、もっと喜ぶでしょ」



 相手がお前じゃなけりゃな。

 そんな思いを飲み込み、ぐいぐいと指で頬を押してくるルージュを見る。


 さっさとやめろと分かりやすいように半目にして訴えかける。

 もう俺の気持ちは察しているはずなのに、やめるどころかより強く突いてきた。



「はいはーい。こんな美少女に構っていただいてとてもウレシイナー」


 とりあえず、さっさと解放されたいので、こいつがほしがりそうな言葉を吐く。

 これで、満足してくれただろうか。

 


 どうやらダメだったらしい。

 俺の返答が気に入らなかったのか、ルージュはつつくのをやめくれない。



 なんだよ、一体なにが気に入らないんだよ。

 早く解放してくれと願っていると、周りから舌打ちや歯ぎしりが聞こえた。

 周りの冒険者がすごい剣幕で俺を見ている。



 あー、まずいな。

 嫌な注目のされ方だ。

 こうならないように時間をずらして来たのに、なんでこうなるかなぁ。

 


「へぇ〜?」


 

 ルージュは横目で周りを見て、ニヤリと笑い始めた。 

 嫌な予感がする。



「ひどい! 前の時はあんなに優しかったのに! 私のことはもう飽きちゃったの?」


「お、おま……!」



 こいつはなんて人聞きの悪い言い方をするんだ。

 遊んだって俺が街をぶらついていたら、お前が勝手に絡んできただけだろ。


 

 しかし、そんなことを言う暇もなく。

 ルージュがよよよと嘘泣きを始めると、至るところから殺気のようなものを周りから感じる。

 チラリと見ると、ルージュは俺にだけ見えるように舌を少しだけ出していた。



 絶対に確信犯だ。

 こいつは俺が悪目立ちするのが嫌だと分かった上でやってる。

 いつもこうだ。

 俺が困るのを見て楽しんでるサディストなのだ。

 まじで早く帰ってくれ。




「あれ、その紙。クエスト受けるの?」



 すんっと、何事もなかったかのように平常運転に戻って俺の右手を見る。

 うげっ、見つかった。

 咄嗟にルージュの目に入らないように紙を隠す。

 

 

「ねぇ、どんなやつ? 教えてよ」


「絶対に嫌だ」


「え〜、別に良いじゃん。減るもんじゃあるまいし」


「減るんだよ」


「何が?」



 主に俺の精神力が。

 こいつの場合、何かに利用しそうで怖い。

 どう利用するのかは分からないが、何かされそうだ。

 



「人の好意を無下にするなんて、酷いなぁ。そんなんだからソロ、じゃなくてぼっちなんだよ〜」



 おい、なんで悪い方に言い直した。

 普通はマイルドな言い方に直すんじゃないのか?

 いや、まぁぼっちじゃないことを否定はできないが。

 


「……お前だって、パーティ組んでないだろ」


「いやいや、私はちゃんと幾つもお誘いがあるからね。なんせ、Aランク冒険者ですから」



 ルージュが胸を張り、渾身のドヤ顔をする。

 相手がこいつだからだろうか。

 ドヤ顔がめっちゃ腹立つ。

 あの顔、こねくり回して矯正しても許されるかな。


「ならそんなA級冒険者様には、こんなどこにでもいるC級冒険者に構っている暇はあるんで?」


「あるよ〜。なんたってA級冒険者様ですから」



 そう言いながら、俺の頬をつついてくる。

 うっぜぇ。



 本当にこいつはなんなんだろうか。

 なんで俺に構うんだろうか。

 理由は分からないが、早く飽きてくれることを心から願う。



 じゃないと、俺のイメージがどんどん悪くなる。

 周りの冒険者からの視線が凄いのだ。

 こいつに絡まれ、もとい話している時は大抵他の冒険者に睨まれている。


 

 俺は何にもしてないのに。

 あれ、けどさっきより視線の数が少ないような気がするな。



 他の冒険者を見ると、入り口付近を見ている奴らが多い。

 なんだろうかと思いながら入り口を見ると、金色の髪の青年がギルドへ入ってきていた。



 金髪なんてこの世界ではありがちなので目立つことはないが、その男には目を向けてしまう。

 細身で長身、歩くだけで絵になるような気品溢れている。

 おおよそ人から嫌われる要素がなに一つないイケメンだ。



 後続には三人の女性がいた。

 イケメンのパーティメンバーだ。

 なんで、俺へのヘイトが少なくなったのか理解できた。

 


 そりゃ、あいつらがきたら自然と向こうへ目が行っちゃうよな。

 



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