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拾壱.転入生

六花が桜刄姫道同好会に加入して、数週間が経ったが、中々メンバーが集まらず、3人は途方に暮れていた。


「はー、なかなか集まりませんねえ…」

「うん…後、1人入ってくれれば、会長も考えてくれるって言ってるのにね…」

「ま、そんな簡単な話じゃねえだろ。んなことより、稽古けいこ!稽古!続きしねえと体がなまっちまう!さっさと始めんぞ!!」


3人は不知火家の道場に来ていた。

そう、六花の実家の道場である。

最近はもっぱら彼女達の溜まり場になりつつある。


「ほっほっほ。可愛い刄姫サムライさん達、稽古は捗っとるかのう。」

3人が稽古の続きをしていると、1人の老爺ろうやが道場に入ってきた。

黒い道着を身に付け、厳格な雰囲気を醸し出している、細目の老人だ。

「あ!師範!お邪魔してます!」

「うむ、雨千夏ちゃん相変わらず元気ハツラツじゃのう。」

「あ、お爺ちゃん…いつも道場貸してくれてありがとうございます。」

「気にせんでええ。まくらちゃんは奥ゆかしいのう。また、このじゃじゃ馬の事頼むぞい。」

「は、はい!」

「おい!じじい!」

「誰が爺じゃ!この青二才が!」

「稽古の邪魔に来たのかよ。」

「ふん、可愛くない孫じゃのう!またボコボコにしてやろうかの?」

「んだと、コラ。」

老爺の名は 不知火しらぬい 源蔵げんぞう

不知火道場の師範代であり、六花の祖父である。

同好会で活動の場が無かった3人に、快く稽古の場を提供してくれたのも彼であった。

六花は、最初、この提案に渋い顔をしていたが、他に場所も無いので最終的に折れた。

お互い顔を合わせると嫌みの応酬が始まり、同好会の活動で道場に集まると、2回に1回の頻度でこのやり取りを、雨千夏とまくらは見せられていた。

六花曰く、今の自分では、悔しいが彼には遠く及ばないとの事。

「それじゃあ、新たな時代を担う、若き刄姫達、邪魔したの!せいぜい稽古に励めよ!後、この馬鹿を頼むぞ。ワシはテレビドラマの再放送でも観てくるかの。ほっほっほ。」

そう言いながら、源蔵は道場を後にした。

「けっ。あの爺。さあ、気持ち入れかえて、稽古だ!稽古!防具付けたか?」

「は、はいぃ!」

「付けたよ、六花ちゃん!」

「よし。…あ!雨千夏!この間の試合の事、爺には言うなよ。防具付けてない奴に不知火流使った事バレたらぶっ殺されるからよ。」

「本当だよ…六花ちゃん。雨千夏ちゃんがたまたま捌いたから良かったものの…当たってたら、最悪骨折してたよ!」

「へ…骨折…?」

みるみる顔が青ざめていく雨千夏。

あの時は1種のハイテンションだった為、何も考えなかったが、冷静になってみると、なんと恐ろしい立ち合いをしていたのだろうか。

「あばばばばばば」

「雨千夏ちゃん?雨千夏ちゃあああぁん!!!」

雨千夏はそのまま崩れ落ちて、立ち上がる事はなかった。



────。


「あれ、私…一体…」

周りを見渡すと一帯が火の海だった。

「ああ…そっか、またあの夢…」

雨千夏はいつの間にか夢を見ていた。

定期的に放り出される火の海。

吸えば喉が焼けそうな炎の揺らめき。


「あああああアアあああアアっ──!!!!!!!」

突然、近くで誰かの叫び声が聞こえた。

慟哭にも似た絞り出すような叫び。

雨千夏は声のした方向へと歩く。

そこには人が3人いた。

いや、訂正しよう、人が2人と、人だったものが1人、地面で朽ちている。

「これは…あの夢の…続き?」

妹を殺された姉と、妹を殺した冷たい目の少女が向かい合って立っている。


「…やる…」


「…してやる…っ」


「──殺して…やるっ!!!!!」

突然、激昂した姉は、落ちていた刀を手に取り、自らの仇に襲いかかった。

冷たい目の少女は、斬撃を刀で弾いた後、相手の右腕を掴み、思いっきり地面に振り下ろして叩きつけた。

「かはっ…!!」

満身創痍の状態で地面に勢いよく叩きつけられた少女はそのまま気絶していた。

冷たい目の少女は電話を取り出し、どこかにかけ、すぐに電話を切った。

その後、気絶した少女をおぶさりながら火の海へと消えていった。

「やっぱり、あの女の子は…私の…」




「…か…ちゃん!」


「…ん?誰です?」


「ちか…ちゃん!」


「はわわ?」


「うちかちゃん!!」



──木の天井だ。



「雨千夏ちゃん!!よかった、目が覚めて…」

「あれ…ここは?」

「六花ちゃんの部屋のベッドだよ。雨千夏ちゃん、いきなり気絶したからびっくりしちゃった。」

「ほら、ウチの言ったとおり大丈夫だったろ?」

「もう!六花ちゃんが変な事言うからだよ!」

「いや、悪かったって。いてて。」

「あれ?六花さんその顔どうしたんですか?」

「爺にバレてしばかれて、拳骨もらいました。後、ぶっ殺されずに済んだから生きてます。」

何で敬語?と思いながら雨千夏はボーッと天井を眺めた。

「あーあ。にしてもよ、ずっと木刀だと物足りねえな。やっぱ刀だよ、刀!」

「部活に昇格したら、雷舞らいぶ対応の施設使えるんだけどね…その為には早くメンバー集めないと…」

「えへへ…そうですねえ…」

「あーあ。都合の良さそうなのいねえかな。転入生とかよ…」

「六花ちゃん、さすがに転入生に期待するのはどうかと思うよ…」

六花の、望み薄な発言に、まくらは冷静にツッコミをいれる。

「ちぇ…まくらも最近ツッコミが冷たくなったよなあ…」

「六花ちゃんが変な事言ってるからだよ。」

2人のやり取りを聞いていた雨千夏はベッドからゆっくりと起き上がった。

「雨千夏ちゃん、もう大丈夫なの?」

「そうだぞ、無理すんな。」

「へへっ、もう大丈夫です。少し休んだら、元気いっぱい雨千夏ちゃんです!」

2人の心配をよそに、雨千夏は気取られないように空元気で答えた。

「じゃあ、そろそろ帰りましょ!まくらちゃん!」

「う、うん。じゃあ、六花ちゃん、また明日。」

「おう、また明日。2人とも気を付けて帰れよ。」


こうして、また1日が過ぎていく。

一体いつになれば残りのメンバーが見つかるのだろうか。





──朝。


リンゴーン、リンゴーン。

始業の合図の鐘が鳴り響き、少女達の1日が始まる。

雨千夏は昨日の疲れがまだ取れていないらしく、机の上で突っ伏していた。

「はあ…変な夢のせいですかね…憂鬱というやつでしょうか。」

ブツブツ呟いていると

ガラララララ!!!

勢いよく教室のドアが開いた。

「お前ら、始業の鐘は鳴ってるぞ。席につけー。」

そう言いながら、担任が教室に入ってきた。

席についていなかった生徒は慌てて自分の机に向かう。

「よし。みんな着席したな。実は、我がクラスに転入生が入る事になった。それじゃ、入ってきなさい。」

教室内がざわつく。


(あわわわ…どうしましょう、六花さん、まくらちゃん!転入生来ちゃいました!)


担任の言葉の後に、ゆっくりと女生徒が教室へと入ってきた。

なかなかの長身に、吸い込まれるような、長めの黒髪。

何人かの生徒は小声でワーキャー言っている。

クールな雰囲気が女性受けしそうな感じだ。

「じゃあ、転入生君、自己紹介を頼む。」

そう言って担任は転入生にチョークを渡した。

転入生は黒板に自分の名前を書くと、再び生徒達の方に向き直り、口を開いた。

「私の名前は、天羽あもう 瑠璃るり。以上だ。」

教室内が水を打ったように静まり返った。

担任も凍りついている。

「お、おい、天羽。他には何か紹介する事はないのか?」

「ありません。ありませんし、知ってもらう必要ありませんから。」

なんと、バッサリ。

「じゃ、じゃあ、天羽の席だが、東雲の後ろの席が空いていたな。あいつの後ろに座ってくれ。」

そういうと担任は雨千夏をの後ろを指差した。

瑠璃は気だるそうに雨千夏の後ろの席を…

雨千夏を見た。

目が合った。

既視感。

私はこの転入生をどこかで…

次の瞬間、目を大きく見開いた瑠璃は大声で叫んだ。


「───しずくっ!!!」



「……へ?」


5人揃って、やっとスタートラインだとすると、まだスタートにも立っていないんですね…

絶望した!

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