拾弐.クール+ラーメン=バトル!?
ちょっとテンションだだ下がりイベントがあったので、投稿できてませんでした(´・ω・`)
申し訳なーい
突然、瑠璃が発した、雫という言葉に、教室内が静まり返った。
しばらくして、あちこちから「え?何て言ったの?」、「しずく?って言った?」、「しずく?って何の事だろう」とざわめきが起こった。
パァン!!
突然の音に教室内が再び静けさを取り戻す。
瑠璃が柏手を打ったのだ。
「失礼した。」
瑠璃は一礼して謝罪の言葉を口にすると、何事もなかったかのように、雨千夏の後ろの席へと歩き出した。
雨千夏をガン見しながら。
雨千夏も不思議と視線を外せなかった。
彼女を見た時、何故かあの夢が一瞬フラッシュバックした。
「ごほん!!はい!お前ら授業始めるぞ!!」
担任が両手を叩きながら生徒達に授業の準備を促す。
雨千夏も教科書の準備をする為に鞄を漁っていると、後ろから肩をトントンと叩かれた。
瑠璃だ。
「はひっ!」
「そんなに驚かなくてもいいだろう。」
「い、いえ…いきなりだったので。」
「そうか。それは悪い事をしたな。さっきもすまなかった。重ね重ね謝罪しよう。」
「い、いえ…こちらこそ、これから宜しくお願いしますです。」
「ああ。」
会話が終わった後も、雨千夏は後ろから浴びせられる突き刺すような視線のせいで授業どころではなかった。
1限、2限の終わりは、瑠璃の席にある程度の人だかりが出来たものの、淡白な受け答えや、威圧的な雰囲気のせいか3限終わりには誰も近付かなくなっていた。
雨千夏は思った。天羽さんもこっち側の人間だと。ぼっち的な意味で。
リンゴーン、リンゴーン。
午前の授業の終わりを告げる鐘が鳴る。
ガララララ!!!
勢いよく教室の扉が開く。
「雨千夏ー!!飯食おうぜ!!」
「ウッチー!早くしろよー」
六花と千明だ。
後ろの方にまくらと、エリカもいる。
「はわわわわ!!!!」
一気に教室内の視線が雨千夏に注がれた。
注目されるのに耐えきれず、ペコペコとお辞儀しながら雨千夏は慌てて教室から出た。
食堂に移動した一行は、席につき、各々が注文した料理に手をつけながら会話に花を咲かす。
駅前の行列の出来るクレープ屋の話、昨日の歌番組の話等々…
昼休みも半分を消化した頃、話題は雨千夏のクラスに来た転入生の話になった。
「ほー、クール系が来たのか。で?勧誘はしたのか?」
六花が食いついてくる。
「もう、六花ちゃん…まだ、転入生の子が刄姫と決まったわけじゃないんだから…」
まくらは困り顔だ。
「どうしたんだい?ウッチー、難しい顔してさ。」
「ウッチーの癖に細かいこと考えてんじゃねえよ。」
心配そうなエリカとは正反対に笑いながら雨千夏の背中をバシバシ叩く千明。
「いててて。」
「あ、わりぃ。」
「いえ、大丈夫です!」
「どうかした?雨千夏ちゃん。」
まくらが心配そうな顔で雨千夏を覗き込む。
「なんと言いますか…」
雨千夏は4人に、瑠璃が雨千夏の顔を見た瞬間に発した「しずく」という言葉と、瑠璃を見た時に、既視感を覚えた事を、夢の話も交えて話した。
「なんか、すげえ夢だな…」
いつになく真面目な顔で話を聞く六花。
「その夢に出てくる女の子の内の1人が天羽さんに似ていたんだね?」
まくらの問いに、雨千夏は静かに頷く。
「はい…。幼いんですけど、面影は残ってて…」
「あー、ウチら、そういうオカルト話はパス!行こーぜ、エリカ。」
「え?ちょっと千明?あー…みんな、ごめん!また!」
千明はエリカを引っ張って、食堂を後にした。
相変わらず騒がしい2人組だ。主に千明が。
「出ていくのはいいけど、食器片付けていけよ…」
六花がぼやく。
「ははは…」
雨千夏が苦笑いしながら、2人が出ていったドアに目をやると、丁度、瑠璃が横切る瞬間がドアの小窓から見えた。
「わ、私も、ちょっと用事を思い出しました!!食器お願いします!!」
そう言うと雨千夏も立ち上がり、食堂から出ていった。
「…お前もかーーい!!!!」
六花のむなしいツッコミを聞いた、まくらは静かに六花の肩をポンポンと叩いた。
「はあ…はあ…天羽さん、どこ行ったんだろう…」
瑠璃を見失った雨千夏は、ぼっちが寄りそうな場所を片っ端から探したが、どこにも瑠璃の姿はなかった。
「むむむ…。後はぼっちの定番プレイス、屋上ぐらいでしょうか…」
屋上へ続く階段を駆け上がり、ドアを勢いよく開ける。
辺りを見回したが、どうやらここにも瑠璃はいないようだ。
「はあ…はあ…ここにもいませんか…」
雨千夏は項垂れながら、来た道を戻ろうとした時、後ろから声がした。
「誰かを探しているのか?」
「はひっ!?」
驚いた雨千夏が振り返ると、そこには瑠璃が立っていた。
カップヌードルを手に持ちながら。
「天羽さんを見掛けたので、ちょっとお話でもしようかなと思いまして…」
「…そうか。それは悪い事をした。私なら、ずっとお前の後ろにいたぞ。」
「あわ!そ、そうだったんですか!?」
「ああ。」
「あ、あの…」
「なんだ?」
「そ、その…ラーメン伸びてませんか?」
雨千夏は、自分の後を着けていたという、瑠璃の発言から、持っていたラーメンが伸びてしまっているのではないかと懸念していた。
「そうだな、そろそろ頃合いか。」
そう言うと、瑠璃はカップ麺のふたを剥がした。
現れたのは、汁を完全に吸って、伸びきったラーメンだった。
「あ、あの…スープが…」
「ああ、美味そうだろう?私は、汁を吸って伸びたカップ麺が好きでな。では、いただきます。」
そう言うと、瑠璃は麺を啜り始めた。
その表情は憂いを湛え、どことなく哀愁を帯びていた。
雨千夏は一体自分は何を見せられているのか、そう考えながらも、目を離す事が出来なかった。
時間にしておよそ、2分弱。
意外と食べるのが早かった。
「ふう…馳走だった。」
「た、食べるの早いんですね…」
「当たり前だ。戦場で食うのにもたついていては命取りになるからな。」
天羽は食事を済ませると、雨千夏の頭をポンポンと叩いた。
「ふえ!?」
「おっと…すまん。これはその…。とにかくだ。お前は、私に話があったのではないのか?」
「あ、あの!もしかして、天羽さんも刄姫だったり!」
「…も?ああ、確かに私は刄姫だよ。お前も刄姫なのか?」
「は、はい!」
「そうか。しかし、この学校には無いだろう?桜刄姫道部は。」
「は、はい。桜刄姫道部は残念ながら今はありません。ですが、同好会ならあるんです!でもって、そこからメンバーを増やしていって、いつかは桜刄姫道部を復活させてやるんです!」
雨千夏の熱のこもった言葉に、瑠璃はふふっと笑った。
「何か、おかしい事言いましたか…?」
「いや、すまないすまない。気を悪くしないでくれ。私の知っている人物によく似ていたものでな。あいつも、今のお前みたいに熱くなる事があった。」
「もしかして、雫って人ですか?」
瑠璃の眉がピクリと動いた。
「ああ。お前に結構そっくりでな。聞いて思ったが、声も似ていて正直驚いている。」
心なしか瑠璃の表情が少し曇ったような気がした。
「ふえー、そんなことあるですねー」
目を丸くしながら驚いている雨千夏を見ながら、瑠璃は続けた。
「ところで、私からも質問があるんだが、いいかな?」
「は、はい!何でしょう!」
「名前を教えてくれないか。私だけお前呼びでは申し訳ないからな。」
「はひ!ええっと、東雲 雨千夏と言います!よろしくです!」
雨千夏はとっさに手を差し出した。
「ふっ…ああ、よろしく。」
瑠璃も雨千夏の手を取り軽く握手した。
「それと、雨千夏。お前の所属する同好会にも少し興味がある。放課後、案内してもらってもいいか?」
「ええ!?」
「なんだ?駄目か?」
「い、いえ!駄目というわけでは…。」
「なら、決まりだ。それじゃあ、放課後な。」
そう言うと瑠璃は屋上を後にした。
屋上に1人残された雨千夏が呟く。
「もしかして…入ってくれるんでしょうか…」
リンゴーン、リンゴーン。
空は朱に染まり、終業の鐘が1日の終わりを告げていた。
場所は変わり、不知火道場。
「ったく、おせーな。雨千夏のやつ。」
「まあまあ、六花ちゃん。昼間に話してた転入生を案内してるから仕方ないよ。」
「ふん。」
到着の遅い雨千夏に、イライラする六花を、まくらがなだめる。
「今日はビシバシ鍛えてやるからな。」
「ははは…」
ガララララララ。
道場の扉が静かに開く。
「お。来なすった。」
「六花ちゃん…言い方…」
道場の入り口に目をやると、そこには2人の少女が立っていた。
「す、すみません!遅くなりました!」
雨千夏が勢いよく頭を下げる。
後ろに立っていた瑠璃も軽く会釈。
「ほう、そいつが例の転入生か」
「いらっしゃい、雨千夏ちゃん。えっと…」
「あ!彼女は天羽さん!天羽 瑠璃さんです!」
「…天羽 瑠璃だ。宜しく頼む。」
「天羽さん、よろしくね。」
「けっ。何か辛気くせえなあ」
六花が鼻を鳴らしながら、瑠璃に絡む。
「暑苦しいのは苦手でな。」
瑠璃も六花を殺意バチバチの眼光で睨む。
「お?何だよ。やるのか?聞いてるぜ、お前も刄姫なんだってな。」
「ちょっと、六花ちゃん!何ですぐに喧嘩売るの!」
「はわわわわ!!2人とも仲良くしましょうよお!!」
「…ふん、くだらん。雨千夏、お前が所属する同好会だと聞いたから興味があったんだが。興が削がれた。こんな、お遊び茶番同好会だったとはな…悪いが、帰らせてもらう。」
雨千夏の眉がキリッとあがった。
「あの!!」
雨千夏が言いかけた時だった。
「おい!!!!今なんつった?もっぺん言ってみろよ!!」
それを遮るように怒声が道場内に木霊した。
「ああ、お遊びチャンバラ同好会って言ったんだ。」
「ぐっ…!さっきと言ってる事が違ってるじゃねえか!!それにウチらは遊びでやってんじゃねえ!!!!本気なんだ!!!!」
「ほう。その怒りは演技か?それとも、本気か?」
「…チッ。もう怒髪にきたぜ。おい、テメェ、ウチと勝負しろ。遊びかどうか教えてやる。」
「それを言うなら、とさかだよ…六花ちゃん…」
「ふっ…。雨千夏、鞄を頼む。」
瑠璃は道場の中央に進みながら、鞄を後ろに放り投げた。
「はわわわわわわ…」
慌ててキャッチする雨千夏。
道場内の空気が一瞬にして張り詰める。
雨千夏とまくらはため息しか出なかった。
そんな2人をよそに、今、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。




