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昼休みの騒動1

 イリューナが教師の呼び声で教室へと入ってきたときからクラス内は騒々しくて隣の教師からも注意をされるほどだった。

 クラス担当の教師までだいぶ怒らせて朝から騒々しい一日は始まっていた。

 昼が始まると、イリューナを中心としてさっそく輪ができていた。

 当の俺は隣の席のためにすっごく居心地悪く、彼女の輪は全員が女子で構成されていた。

 まるで、害虫を見る目で俺らのような男から守っている布陣だった。

 その中心には雪日と倉本の姿が見えている。


「おい、変態紳士。お前さんの嫁がガードしているんだ。俺らもイリューナさんとのお近づきのおすそ分けをもらえないか交渉しろっしょ」

「そうだね、君はそれを担う役割があるはずだね」

「いや、マジそう。それだな」

「はよ行くんだドン」

「おめぇらは俺に死ねというのかよ」


 悪友たちの容赦ない言葉の推し進めに呆れながら頬杖をついて隣の席にいるイリューナを見ていた。

 彼女は今は魔法で人間の姿をしているがいつエルフだってバレてもおかしくはない。

 雪日がいるから安心もあるけれど、クラスの女子を全員に相手にぼろを出していないのだろうかと一種の不安もある。


「おい、聴いてるっしょ?」

「だぁー、うっせぇぞ。何でも俺に縋ろうとすんな童貞ども!」

『どどどどど童貞ちゃうわ!』

「そこだけ、息ぴったりかよ!」


 その瞬間横から何かが飛んできて俺の机の上で力強く音を上げ跳ねた。

 数秒間、悪友たちと顔を合わせり、硬直する。

 床に落ちたものを拾うと筆記用具類の入った金属の筆箱。

 中にはコンパスも入っていたから当たればケガですまない。

 ゆっくりと隣を見ると――


「おい、変態共うせろ」


 怖い怖い鬼たちがそこにいた。

 般若の様相でこちらを睨んでいて俺らはそそくさと教室から退散する。


「まったくもって君が俺っちらの気持ちを代弁しないからこうなるんだね」

「マジ聡の言うとおりっしょ」

「ああ、マジ変態紳士使えねぇーさ」

「いっそ爆発しろだドン」

「おめぇらマジクズだな」


 悪友たちのとんでもない誹謗をその身に受けながらも軽く受け流して教室が駄目ならと場所を変えて移動を始めた。

 その場所は言うまでもなく暗黙の了解で決まっていた。

 一つの教室の扉に『二次元愛好オカルト研究部』と書かれている。


「まぁ、ここしかないっしょ」

「そうだね」

「僕ちんも納得さ」

「さぁ、早く入ってお宝観賞だドン」

「いや、飯を食おうぜ。つか、お前が一番食うだろう!」


 扉を開ければ中は痛々しいオタクグッズに混じる珍妙な幾何学模様の何かが描かれていて、床にもびっしりと書かれている珍妙な教室。

 普段の俺らのたまり場ともなっている部室だ。

 中央にある席にそれぞれが座って俺が座団長の席へと腰を下ろした。

 教室の隅っこにある冷蔵庫へと寿が向かい何かを取り出す。

 手には2リットルペットボトルのお茶と紙コップを手にしていた。

 それを机の上において人数分を注いだ。


「お前ら昼食はどうする?」

「オレは教室の中っしょ」

「俺っちもパンを教室に置いてきたんだね」

「僕ちんも右に同じさ」

「わいもだドン。あの状況で慌てて出たから……」

「つまり、男がこれだけ集まって全員手元には飯なしかよ」


 呆れて何も言えなくなる。

 だが、全員の目はわかっていた。

 残り昼終了まで40分はある。

 教室に戻って飯をとる時間もあるというわけである。

 だが、こうして全員で戻るとまたどやされるのは覚悟のうえであり、一人でも戻れば殺されてもおかしくはない。


「ここは誰か一人が犠牲になるしかないっしょ」

「そうだね」

「僕ちんはお断りさ」

「わいもドン」

「俺もお断り」


 全員が拳を引いて構える。


『最初はグー』


 決めるにはこれしかない。

 じゃんけんである。

 唐突なじゃんけん大会が始まる。

 全員で一斉に――


『ポン』

「ポン」


 場が一瞬静寂に包まれた。

 徐々に全員の視線が後で追加された一人の手の先に目を向けられる。


「これは何ですか!? 何をしようとしているんですか! 戦ですか!?」

「お、おい、全員俺の見間違いか確認っしょ。今目の前に美少女転校生がいるのは気のせいっしょ?」

「いや、君の目が節穴だと俺っちも認めたいところだけど事実俺っちの目にも見えるんだね。目の前に彼女が」

「あははは、みんな馬鹿だな。これは僕ちんの夢に見んが影響されたんだな。これこそ隠していた僕ちんの超能力!」

「約一名土地狂ってるドン……って――」


 全員が喚いて暴れる前に俺はイリューナの手を取って部室を飛び出していた。


『あ、あの変態紳士――!』


 慌てて手を引きながら彼女がキラキラした目で尋ねる。


「やっぱり、戦の開始何ですか! 私魔法で支援を行いますか?」

「魔法で支援もいらねぇよ! つか、なんでタイミング悪くあそこにいるかなぁ!」

「雄馬さんが気になってしまいましたので」

「え、それって……」

「雪日さんが」


 俺は思いっきり肩を落とす。


「雪日さん、雄馬さんに渡したいものがあったのに渡せなくってそれで私に頼んできたのです。倉本さんと雪日さん一緒に用事があって先生に呼ばれたので代わりにこれを」


 イリューナが手渡したのは俺の弁当だった。


「はぁー疲れる。だけど、ありがとうございます! ったく、どうしてこうトラブルを呼び寄せるんだよ」

「?」

「くっそ、かわいく首をかしげるなよぉおおおお!」


 雄馬は全力疾走しながら彼女の手を引いていった。



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