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朝の会話

 就寝時間、イリューナは客間で雪日と眠ることになって俺も一人で自室で安眠できることになった。

 イリューナに付き合っていたら安眠なんてできないと心底思っていたのでその時は安堵に涙を流してしまうほどにうれしかった。

 イリューナはなぜか雪日には逆らおうとしない傾向が明らかに出ていて客間に二人きりの時も大人しく従うように夜は騒々しさは薄れていった。

  そのおかげもあってか、その日は安眠につけた。

 だが、明朝に騒々しい朝がまっていた。

 朝の騒がしさに目を覚まして部屋を出ていく。


「なんだよ朝から騒々しいな」


 リビングに向けて階段を降りていく。

 すると、誰かに追突されて思わずよろめいた。


「いてて、大丈夫か?」


 反射的に謝罪を口にして目の前の尻餅をついた人物に手を差し出した時に硬直する。

 そこにはどんな着方をしたらそうなるといえる、開けてしまった制服を淫らな感じに着飾ったイリューナが涙目で座っていた。


「うぅ……うええええええん!」

「え、え?」


 急に泣きだした彼女に俺は戸惑いしかなく、どうすればいいのかと右往左往とする。

 そして、またしても絶望の音がゆっくりと聞こえていた。

 リビングルームの扉が軋んで開いてその光景をゆっくりと見下ろす悪魔。


「あ、あのですね俺には状況がさっぱりで! ほら、寝起きでただリビングに向かおうとしていただけで決して何かをしたわけではないんだよ!」

「朝から何欲情してんの! この馬鹿雄馬ぁあああ!」


 雪日の蹴りが鋭く俺のマイソンに目掛けて飛んでくる。


「ちょっ、まッ――あぎゃぁあああああ!」



 その日の朝は最悪の目覚めを迎えたと心底思った。


 ******


 痛む下腹部を抑えながら、リビングでイリューナが制服を着ている理由の説明を聞いていた。


「はぁあ? 学校へ転入させる!」


「そう。昨晩、親には話をつけたわ。私たちの傍に置いておくのにはこれが一番ベストだと考えたは判断よ」


 昨晩の牛乳の時に雪日は客間で用事を済ましていたという件はまさにその要件であったのだ。

 笹美家はあの学園の理事会の一人を行っている大物だからそれくらい容易にできうる存在。

 娘の彼女がねだれば理事長の母親が動いて諸々の手続きは動かせるという話だった。

 だとしても、闇的モノがいろいろ動いているはずだろう。

 簡単に転入させたとしてもそうなっとくできうるものでもなかった。


「いやいや、そうだとしても昨日の今日だぞ!? みんなあの騒ぎのことを知っているしそれにイリューナの耳はどうやって隠す!?」

「ソレね。イリューナさん」


 雪日が軽く指示を出すと彼女の耳が急に光だす。

 思わず目をつぶってしばし、光に目が慣れて俺も目を開けた時にはイリューナの容姿は普通の人間のそれと変わっていなかった。


「嘘だろ……耳は?」


 思わずその耳に不作法に触れる。

 イリューナも思わぬ行為に頬を赤らめて艶のある声を出してしまう。


「なにしてんの!」

「うぎゃっ」


 すぐに見とがめた雪日の拳が俺の顔面を強打し、手を止めた。


「まったく、セクハラ行為もたいがいにしなさいよ!」

「いや……気になってしまって」

「ソレはイリューナさんの専売特許でしょ」

「え、私ですか?」

「そこに反応しなくていいからイリューナさん」


 話の方向性がしばし脱線しかけて咳払いをして雪日が方向を修正する。


「彼女の魔法。それくらいわかるでしょ。それに昨日も大体の人には魔法で記憶も操作できるようだから学園について早々に行ってもらう予定よ」

「そんなことまでできるのか」

「昨晩少し話をしたのよ。まぁ、今後は彼女も学園で多くを学んで人間の生活になじんでもらう必要もあるし。どこぞの変態よりは教え方がうまい学園のほうが理にかなってると思うわ」

「誰が変態だ! 俺は紳士だぞ!」

「どこがよ……。って、こんな長話をしていたらもうこんな時間ね」


 雪日は手にした腕時計を見て時刻を確認して、先走るようにソファから立ち上がるとキッチンへと向かう。

 お盆に乗せた食パンなどの朝食類が乗っていた。


「もう朝食用意していたのか?」

「当たり前でしょう」

「今日はあまり食べたくないんだが」

「何を言うの! 力が出せないわよ」

「母ちゃんかよ」

「何か言った?」

「いえ、なんでもありません!」


 目ざとくその言葉に敏感に反応を示して妙な圧をかけてくるのは恐怖そのものだった。

 その光景を近くで見ていたイリューナもびくびくしているのを俺は見逃すことはなかった。


(そりゃぁ、イリューナさんも上下関係理解してしまうわけだ)


 なんてことを思いつつ彼女の先導で朝食をとりはじめるのであった。

 そんな時にもイリューナの知的好奇心をくすぐったのは言うまでもない。

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