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カノウコウチク~吉野翔太の怪事件ファイル~  作者: 広田香保里
怪7 蛍火館の性悪
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狙われた盲目少女

 車は迷い無く一本道を走っていた。

「家族以外の方と会うのは、新鮮です」

 雅さんの車に同乗させて貰い、車内に入ると直ぐに目に入ったのは白杖だった。

確か……視覚に障害のある人が使う……。

そっか。

真っ白な肌の女の人からどこか儚さを感じたのは、白い服を着ているからだけではなかったみたいだった。

私は鮎川由佳ですと自己紹介をすると、女の人は両手を握って来た。

「由佳さん……ですね。館華星と言います。星って書いてせいです」

「俺は吉野翔太って言います」

「翔太さん……ですね」

 翔太の手も両手で握り、星さんは安心したように深く息を吐いた。

「不思議ですね。お二人からは、音しか感じられません」

 音?

機械的、って……事なのだろうか。

星さんは首を静かに横に振った。

「私にとっては、良い意味です」

「はぁ……」

「ごめんなさい。この子、目が見えないから、独特な感性で話しかけて来ますから」

 嫌な感じは一切受けないから、別に良いけど、音と言う表現が何か気になった。

「それにしても、あそこまで歩いて行こうとしていたのですか?」

 驚いたように星さんは尋ねて来た。

1時間位だから、遠いけど、行けないような距離じゃ……そっか。

それが重労働だからって事か。

初めはタクシーで行こうと思ったけど、いくら駅前で待ってても来なかった。

仕方無くバスと歩きできたのは内緒だけど。

「丸三日はかかりますわよ。あそこまで」

 ……こう言う所に地図は意味が無い事を学んだ。

星さんは、屈託無く笑った。

「良かったです。お陰で翔太さんと由佳さんにお会いできましたから」



 名前の為だけに用意したのだろうか。

農業で発展した財閥とは聞いていない。

目の前にはどれ位の広さがあるのだろうか、緑の水田が広がっていた。

周りを囲むように木が植えられていたが、気になるのは木の葉がどの木も一枚も無かった事。

時期は9月だが、北へ行く程見れる季節が遅くなる話をどこかで聞いた気がする。

蛍の為に用意されたかのような敷地の中央に、2階建ての館は建っていた。

まだ時間ではないから飛んでいないが、夜にここを見たら、どんな景色になるのだろうか。

「ここが……」

「蛍火館ですわ」

 現代の機械的雰囲気からはかけ離れた館でこれから起こるだろう殺人事件に、胸が詰まる想いだった。

そして奴が何を企んでいるのか。色々な事が頭を過ぎった。



 帰りの電車に押し込まれた帰り道、考える。


1、兄さんに似た方と黒いノートには密接な関係がある。

2、翔太さん達がノートを手にするのは最低でも2回。

3、私をそこから遠ざけようとしている。

4、翔太さんにわざわざ予告状を出している。


 整理するとそんな所だと思う。

でも、1つ疑問が浮かぶ。

あの方が翔太さんに予告状を出す理由は分からない。

けれど、それに翔太さんが警察に連絡せずに応える理由がいまいち納得出来ない。

宿命?

違うと思う。

そんな考え方の人ではない。

お墓の前で翔太さんと会った時の事を思い出してみる。

あの方が来て、良く分からない会話をした。

その後、翔太さんは兄さんに誓って……。

そうだ。

私は兄さんに似ていたからと言って何も思っていない。

だけれど、翔太さんには思う所がある。

反応にここまでの差が出ているのは、心理状態が違うから。

あの方が犯した犯罪を翔太さんが解決しただけで、絶対捕まえるなんて思うのだろうか。

だからこそ、そうする何かあった。

十分な根拠だと思う。

でも、追い返されてしまった以上、他の方からの情報に期待するしかない。

そこをどうするか。

自宅に着くまでに考えようと思ったけれど、まだ体力が戻っていない体が、強烈な眠気を訴える。

少し無理をし過ぎているみたい。

でも、動けなかった時間を少しでも取り戻したい気持ちが強いのだ。


ズキン。


頭が痛くなるのは、眠気のせいに他ならない。

せめて翔太さん達が帰って来るまでには、考えておこう。



 あたし達は星さんに付き添い、館の入り口をゆっくりと移動した。

どうして雅さんは手伝わないのか。

「星。早くなさい」

「はい。お姉様」

 早くって……何て人……。

怒りを通り越さなかったのは、星さんがいたから。

「私も独り立ちしないと。と言う配慮です」

 翔太だって同じか、それ以上に怒りを覚えたに違いない。

こう言う人も、誰より大切にする翔太だから。

「にしたって手伝う位出来んだろ……」

「お二人共、お優しいのですね」

 そんな事を気にしていないかのような、星さんに、複雑な気持ちになった。

これ位当たり前だと思っているのは、あたしの周りだけなのだろうか。



 久遠の結婚後の事を調べようと思った時に、ふと疑問が浮かんだ。

久遠詩鶴が違法カジノを経営しているのは事実だった。

そして事件をきっかけに、カジノは摘発された。

事実は事実。

だが、奴が久遠詩鶴を妻に選んだのが、仮に殺す為だと仮定しよう。

だが、何故久遠詩鶴を選んだ?

殺人動機だけを見るのであれば、彼女じゃなくても良い筈。

考えたくも無い事だが、他にも何かをしているだろう人はいた筈なのに。

そこから奴の足取りが追えるとは思えない程に、捜査は行き詰っていた。

だが、無い可能性から探るしか、もはや方法は取れないのだ。



 外観とは裏腹に、中は中世欧州を連想させた。

入り口正面の広い階段、ここから見える2階の廊下。

目を見張ったのは、鎌を持った天使が描かれた大きな絵と、高い天井から吊り下げられた大きな槍。

そんな外観に見とれているのも程々に、星さんをイスに座らせた。

「お2人ともありがとうございます」

 雅さん……はどこかへ行ってしまったようだが、何だあいつ……。

「当たり前の事です」

 そう。

ホントその通り。

だが、星さんはそれが嬉かったのか、口がニコニコしていた。

「そんなお二人に、クイズをお出ししても宜しいですか?」

 いきなりどうしたのか。

疑問をよそに、星さんは続けた。

「私のこの全盲は、先天的か、後天的か」

「え?」

 素っ頓狂な声を出す由佳。

俺が吹き出すと腹パンされた。

理不尽……。

「どちらだと思いますか?」

 まあ、後天的だけど。



 何で分かるの!?

いきなり過ぎると思ったら、そのいきなりに即答する翔太は何なの……。

「どうしてですか?」

「車の中での会話」

 車の中?

何かあっただろうかと記憶を辿るけど、大した話はしてなかったと思う。

「あそこまで歩いて行こうとしていたのですか? って言った。 ……先天的な全盲なら、距離って言う概念を持つのは難しいと思う」

 そっか……。

生まれてから、一度も『見た』事が無い。

想像してみる。

遠近感なんて概念、とてもじゃないけれど作れそうもない。

近くにあるのにあそこと言ったり、遠くにあるのにこれと言ってしまいそう。

物質的な距離ではなく、心の距離で、推し測るしかないのかもしれないと、ぼんやりと思った。

「……続けて下さい」

 星さんが、尚も翔太の先の言葉を促したのは、楽しいから?

「記憶の中の距離を頼りにした言葉だとするならば、辻褄が合う」

「素晴らしいですね。翔太さん」

 星さんは拍手して見せた。

……何気ない事を、翔太は更に細かい所までを観察し、より深い推理まで出来るようになっている。

本気で久遠を捕まえようとしている。

そうだ。ここでこれから殺人事件が起ころうとしている。

あたしは翔太がそうしたいって言った。

だから、

「いやぁそれ程でも」

 って何鼻の下伸ばしてんのよあんたは!

アイアンクローとリス塗れの画像をお見舞いしてやった。

「さ、ここで話すのもなんです。空き部屋で申し訳ありませんが、ご案内させて頂きますね」

 星さんはゆっくりと立ち上がり、迷い無く部屋の方へと白杖を使い、ゆっくりだが器用に歩いて行った。

「痛い痛い痛い死ぬ死ぬリスらめえええええええええええええええ!」



 溜息をつき、デスクから立ち上がった。

今頃翔太君達は、無事に館に着いただろうか。

それとも、深い森の中、野宿……なんてけしからぬ事はしていないと思い込む事にする。

人の心配をするのは、こちらの進展が何も無かったから。

これだけ調べて何も出て来ない理由は1つ。

ネットワークを一切使っていない可能性が非常に高い。

ネットワークを調べて得られる情報にも、限界はある。

全くネットワークを使わない人の情報は、それ相応に曖昧になる。

その欠点を上手く利用して事を進められてしまっている。

ましてや私は警察ではない。

ネットワークを使わない捜査においては、警察には及ばない。

 けれど、翔太君達が向かった館華家の事は少しだけ分かった。

大資産家である館華清が、先日癌で亡くなっている。

そしてそのタイミングでの殺人予告。

丁度良い。

私は頭と気持ちを切り替え、情報を再度収集する事にした。

今度は今から起こるかもしれない舞台に必要な情報を。



 主張し過ぎず、且つ質素に見えないような絶妙な按配の調度品が部屋には並んでいた。

ベッドが1つと言う事は、俺はソファーで寝るの確定だな……。

由佳は訝しげな表情で俺を見ていたが大丈夫だ。

俺は殴られると分かっている状況でそんな事は出来ない。

膝蹴りを喰らった理由は分からないが、あんまり腹を蹴らないで欲しい。

お願いだから。

そんな冗談は置いといて、単刀直入に星さんに聞いてみた。

ここで、一体何が始まるのかを。

「何がとは、どう言う事でしょうか?」

 俺達が殺人予告を貰ったから来た事を率直に告げた。

ここ、蛍火館に来た理由、

「翔太!」

 由佳は多分言わない方が良いと判断したのかもしれない。

でも、今の状態では何一つ状況は変わらない。

状況が変わらない事は、イコール殺人を防げないと同義だった。

出来る事があったのにやらないで、ただ殺人犯が立てた計画通りに人が死んで行くのを見るのは。

嫌だ。

だから、ここで何が始まるのか、それだけでも知りたい。

星さんは俯いた。

目を閉じたままだったから、表情は読めなかった。

「……父が先日、亡くなったんです」

「まさか、殺されたんですか?」

「いいえ。悪性のガンでした」

 癌で父親が……聞いてはいけない事を聞いたのかもしれなかった。

星さんは首を横に振った。

何も見えないのに俺の考えていた事が分かる程度の長い沈黙。

殺人事件だろうが病気だろうが、人が死ぬのは慣れない。

「父の遺言が発表されるんです」

 遺言。

……遺産相続、か。



 遺言の発表は明後日。

けど、久し振りに家族で集まりましょうと言う提案を雅さんからされたと。

星さんから聞いた。

荷物を置いて、あたし達は蛍火の館を3人でゆっくりと歩いていた。

星さんを手伝おうとしたが、大丈夫ですと断られてしまった。

その為、星さんは壁に手をつき、白杖を使い、ゆっくりと歩いている。

玄関前のフロアまで歩いて来ると、2階からあたし達を見ている女の人が、雅さんといるのが見えた。

「一同に介するこの時を狙って、誰かが殺人を犯そうとしている……って訳か」

 そして正面には、煙草を吸っているこっちも女の人だった。

ギャルっぽいメイクに、令嬢と言う言葉は似合わないなと思った。

「星。あんたも来てたんだ」

「その声は、愛お姉様ですね」

 僅かに音が聞こえた。

金属が擦れるような音?

天井を見上げた時には吊り下げられた大きな槍が落ちる所。

反射的に星さんを庇うように抱き、同じ事をしようとした翔太と同時に倒れこんだ。

大理石に槍は刺さる事無く、床に傷をつけて大きな音を立てて落ちた。

一瞬の出来事だった。

星さんは……無事のようだった。

何が起こったのか、分かっていないような表情だった。

「い、今の音は何ですか?」

 翔太はゆっくりと起き上がった。

雅さん達は、ただ目を見開いていた。

その様子を、ただあたしは睨んだ。



 危うく寝過ごす所だった駅を降り、私は誰もいない家に帰った。

マンションの1室だったけど、今の私には広すぎた。

電気をつけ、目に飛び込んできたのはお手伝いさんが作ってくれた夕食(初老スマイルが特徴的な、所謂執事って言うのだろうか)と、『S.A』とイニシャルされたヴァイオリンケース。

本体と弦を取り出し、誰もいない部屋で1人弾く。

兄さんは、どんな気持ちでヴァイオリンを弾いていたのだろう。

ただ、寂しい。

引っ越して来て友達がいないわけではなかった。

だけど、空っぽになってしまったような。

私1人だけがここに取り残されたような。

だからヴァイオリンを弾き、もういない兄さんを心で掴もうとする。

頭がずきりと痛む。

それでも弾くのを止められない。

空っぽの私には、痛い位が心地良い。



 狙われたのは、間違い無く星さん。

「何で槍が落ちて来たの?」

 星さんは体を震わせた。

「槍が落ちて来たのです……か? 私に?」

「星も運が悪いねホント」

「愛!」

 3姉妹と母親……だろうか。

だが、許せない事があった。

十中八九、星さんの目が見えないのを利用して殺害しようとした外道がいるって事。

そっぽを向いて再び煙草に火をつける館華愛。

姉妹だろ?

その時、玄関扉が開き、大学生らしき人が入って来た。

「すみません、遅くなりました」

「岳! あんたはいっつも!」

 顔色1つ変えない家族の茶番に吐き気を覚え、槍を調べる事にした。

槍には釣り糸が結ばれていた。

そして……なるほど。

「何か分かったの?」

 俺は頷いた。

予め天井の槍に細い糸を壁伝いに通しておけば、それに触れた人間の頭上に槍が落ちる。

「そんな……」

「ちょっと待って。それじゃあ私達も狙われてたって事?」

 人間が家の廊下を、手を壁に着きながら歩く訳が無い。

それに、壁伝いに歩けば嫌でも気付く。

だが、条件が揃う人間が1人だけいるのだ。

「私……と言う事ですか?」

 俺は星さんを見た。

信じられないような表情だった。

酷い方法を考える。

俺はここに呼び出した人間を、許さない。

握り拳を握った。



 何も起こらなければ、犯罪は決して、生まれない。

だが、生きている全員が深層心理で、分かっている。

全員が、幸せになれる、ようにと。

準備を、進める。

何かが起こってからしか、動けないのだ。

だが、それを防ごうとしている、者がいるようだ。

大財閥。

複数の追跡者。

しかし、まるで分かって、いない。

まあ、時間はまだまだ、ある。

それまでは、せいぜい、やってくれ。

吉野、翔太。



 館華雅は、ただ窓の外を眺めていた。

枯れ木に蛍が止まっていく。

そして、一斉に光り始める様子が見える。

北へ行く程に、見られる期間が少しずつ遅くなる。

その蛍をジッと見つめ、館華雅は思った。

誰が一体……と。



 館華岳は、何故か震えながらPC画面を見ていた。

インターネットを閲覧しながら、只管に震えていた。

偶然に見せかけるんじゃなかったのか。と。

蛍が神々と光る様子が見えた。

少しぼやけて見えるのは、ガラスのせい。



 幻想的だった。

田んぼを飛び交う沢山の蛍は、まるで星のようだった。

何故か枯れ木に止まる蛍。

理由は知る由も無い。

だが、それはさながらイルミネーション。

由佳は無言で見入っていた。

歩いて行く先には、ただ空を見上げている星さんがいた。

眩しい程に明るく、電灯は全く必要無かった。

「出歩いたりして大丈夫ですか?」

 由佳が言うと、背を向けていた星さんは、ゆっくりと俺達の方へ向いた。

「地面の大理石を40、歩きながら叩けばここに着きますから」

 人が通れるような幅の道は、確かに大理石で出来ていた。

「そうじゃないですよ! 命を狙われたんですよ?」

「意地悪をしてしまいました」

 星さんはただ笑い、1回転して見せた様子は、まるで妖精だと思った。

「記憶の中の、映像を、どうしてもここで想いたかったんです」

 蛍が一斉に発光を止めると、今までの空間が嘘みたいに真っ暗な世界が広がった。

そして次の瞬間には、沢山の蛍が不規則に発光をする様子は、芸術だった。

「いつか、この世界をまた見たい」

 ……その目は、治るのか。

それとも治らないのか。

聞く事さえ憚られた。

「あの木は特殊な造木です。そして、蛍が一斉に求愛をする、神聖な造木」

「……凄い」

「人工の天然美、と言った所でしょうか」

 蛍が木に止まるなんて話、聞いた事が無い。

人が作ったものによって、自然が更に引き立つ姿は、姉ちゃんが考えている料理に似ていると思った。

日本に、こんなにも美しい所があったとは。

そんな所で、残酷にも目の前の星さんを狙った犯人がいる。

絶対に許せなかった。

「翔太さん。助けて下さって、ありがとうございます」

 俺達は殺人を防ぐ為に、由佳とここに来た。

救えたのは、星さんで3人目だった。

多くの犠牲を防ぐ事が出来なかった中、数少ない、結果と言える事実。

だが、事件が起こる事無く救えたのは初めてだった。

「本当に、何事も無くて良かったです」

「……良い音です」

 まただ。

音?

何の事だろうか、見当がつかない。

そんな事はお構い無しに、星さんは蛍が留まっている枯れ木に顔を向けた。

「もう少しだけ、私にとっての過去。お二人の今の映像を、見たいです」



 殺されそうになった星さんが、1人で出かけるのも度胸があると思った。

だけど、警察を呼ばない家族が信じられなかった。

翔太は両小指を絡め、只管に考え込んでいるようだった。

翔太は人一倍、家族を思う気持ちが強いと思う。

幼い頃に両親が死んだと聞いている。

あたしの両親は、今も元気。

だから翔太には何も言えないのが悔しかった。

寝返りを打ち、まどろみの中、翔太の声が聞こえた。

「遺産を巡る殺し合い……か。くだらねえ。本当に」

 ……あたしだってそう思う。



 館華愛は、かなりのヘビースモーカーだったが、自分の部屋に煙草の匂いがつくのを何よりも嫌った。

長女に長男、父親に気に入られていた3女。

比べられるのに嫌気が差し、イメチェンをする事にしたが、3女への嫉妬の思いは止まらなかった。

そんな思いの中、愛は思った。

計画が台無しだ。と。

館華愛は、外に光る蛍になど、興味がまるで無かった。

希望なんて、遺産以外に無いから。

鎌を持った死神の絵は、実際は鎌だけは本物だった。

館華愛は、鎌をジッと見ていた。

何かが切れる音がした。

館華愛はただ目を見開いた。

落ちてくる鎌は、死神の鎌のようだった。

悲鳴をあげる間も無く、ただ血飛沫が上がったのに、暗いせいで黒かった。



 くしゃみと共に目を覚ますと、いつの間にか朝だった。

ソファーで寝たせいか、体の至る所が痛かった。

由佳はまだ寝ているようだったからそっとしておいた。

楓がいたら間違い無く下着姿でソファーに潜り込んで来たが、今回はそれが無かった。

少しばかり残念な気持ちにさせられた。

部屋の外に出て、散歩しながら考えを纏める事にしよう。

俺は立ち上がり、大きく伸びをした。

 部屋を出て、静けさ以上に匂いを感じた。

噎せ返る程の血の匂い。

血の気が引く思いだった。

まさか……。

俺は走った。

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