↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カノウコウチク~吉野翔太の怪事件ファイル~  作者: 広田香保里
怪3 自動人形の願い
PR
32/190

凶器を回収せよ!

 翔太君からデートのお誘いが来たのかと思いきや、違っていて落ち込んだ。

けれど緊急事態のようだったから勿論協力した。

容疑者全員の家から調味料を押収するなんて何事かしらね。

不謹慎ではあるけれど、とてもワクワクした。

まずは言われた通り、扇原翼さん、平野湖夜美さんの家に向かう事にする。

翔太君は、きっと殺人を防ぎたいと思っているから。

その考えには、大いに同意するから。



 殺人の細かい方法の検証なんて後回しだ。

だって、この連続殺人の方法が分かったのだから。

やるべき事が、あったから。

容器の底に毒が盛られ、それを被害者が自分で入れてしまう。

まだ殺人が続くのだとしたら、同じ方法が使われるはず。

容疑者が使っている調味料を残らず回収するのが先決!

毒殺が行われれば証拠が残らない可能性が高い!

「堀川さん宅が一番近い! 行くぞ!」

 倉田さんがアクセルを強く踏んでくれた。

一刻を争うと思った方が、気が楽だった。



 吉野君には確かに事件解決を頼んだ。

しかし、彼は別の所で動いていた。

殺人を防ぐ。

地球に存在する凡そ70億の何分の一が、この殺人を犯そうとしているのか。

皆目見当がつかなかった。

途方にくれるような数字を、0にするとでも言うつもりなのか。

そこまで考えているかは分からなかったが、そう思わせてくれるスケールを感じた。

出会ってさえしまえば、彼はやってのけるのかもしれないと言う、泡沫のような、荘厳な期待を。

堀川篤美の自宅は、豪邸とも言えるような、言えないような1戸建てだった。

こんな所に嫁さ……今は良い。

とにかく妙に長い曲調のインターホンを押すが、反応が無い。

今日は休みと伺っていたから、在宅ではあると思うが……。

 吉野君が郵便受けを覗き、小さな箱を手にした(犯罪行為ではあるかもしれないが、そんな場合ではない)。

入っていた人形を見て吉野君は大仰な門をよじ登り、敷地内へ入って行ってしまった。

自動人形の願い。

意味を考えずにはいられなかった。



 間に合っててくれ!

階段を上って行くと、横には庭があった。

庭があると言う事はベランダへの扉も。

食い入るように閉まったカーテンの隙間から、閉まった窓から覗いた光景に、絶望した気がした。

外からでも分かる高級な家具や絵画の部屋。

テーブルに突っ伏している女性の姿があった。

誰かだなんて考えなかったと思う。

倉田さんがやって来て急いでスマホを取り出したから。

「大至急堀川篤美の部屋に救急車を! 急いでくれ!」

 怒っている暇は無かった。

まだ容疑者。

標的は沢山いるのだから。

「急ごう!」

 何としてもこんな事がこれ以上起こって欲しくなかった。



 翔太……。

絶対に防ぎなさいよ。

頭に入らない授業をよそに、外を眺めた。

あんたはただの……。



 堀川篤美以外の容疑者は、幸いな事に死ぬ事は無かった。

流石翔太君と言った所ね。

夕日に映える翔太君の横顔は、ちっとも嬉しそうではなかったけれども。

「楓。助かった」

 そんな事はどうでも良いのよ。

翔太君に抱きつき、たっぷりと堪能させて頂く。

良い所に来てしまうのね由佳ちゃん。

貴女は。

「由佳!? どうしてお前が」

 翔太君の行動のきっかけだった……と言った所かもしれないわね。

……いつでも頼ってくれて良いのに。

「防げたの?」

「……1人は、間に合わなかった」

 翔太君は謝った。

由佳ちゃんは何も言わず、ただ翔太君を優しく見ていた。

……2人の間に、いつか割って入りたいと思う。



 1人は間に合わなかったと言う事は、救えた人もいたと言う事。

……良かった。

救えた事に、まずはホッとした。

最初から完璧になろうとして、なれない自分に絶望する。

それが、心が折れる基本構造だから。

守れなかった事を責めるなんて出来なかった。

リアルタイムで起こっている殺人を防ぐなんて、それこそ不可能だと誰もが思う事だから。

「俺はただのバカな高校生だ」

 うん。

その通り。

でも、殺人を防ぐ事が出来るバカ。

だから、そのバカを貫け!

応援なんて安いもの、いくらでもしてあげる。



 由佳に心から感謝した。

言わなかったが目線で何となく分かって欲しかった。

……俺はただのバカな高校生。

そんな奴が出来るのはまずは救う事。

由佳には敵わなかった。

ワザとらしく咳払いする楓に、気まずそうにやって来る倉田さん。

いつの間にか近付いていた距離を慌てて離し、倉田さんに向き合った。

「扇原翼、石崎聡子が所持していた甜麺醤から、毒物が検出された。それと、蓮見宅の例の人形だがな、事件直前に届いていたそうだ」

 直前か……。

篠崎さんの時は事件後に届いた。

確証は無いが、恐らく日程を大まかに合わせ、人形を贈ったと言った所だろう。

両小指を絡め、手を口元に当てた。

今度は、曲がりなりにも。

俺1人ではなかったけれども。

救う事に成功した。

なら、後は犯人と殺害方法を暴く事に専念しよう。

2つの事件を解く事で、殺人を防ぐ力をつけられた。

そんな気がしたから。

……手段なんて、選びたくなかった。


 容器、見せて頂けますか?


 自動人形の願い。


 手紙の文言までも、全部暴いてやろう。


 両小指を絡め、手を口元に当てた。


 俺がやる必要は無いかもしれない。


 でも俺がやらなきゃ俺が納得できない。


 この不可能、俺が可能に変えてやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=666177893&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。