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カノウコウチク~吉野翔太の怪事件ファイル~  作者: 広田香保里
怪3 自動人形の願い
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間抜けな強盗犯

 最近料理に凝っていまして、色々自分で作ってるのですが、

その中から思い浮かびました。

ああ。

翔太の姉ちゃんのキャラにも合ってるじゃないかと。

後付け設定ではありませんのでご了承ください(大真面目)

何を作っているのかと言いますと、ラーメンとかです。

ええ。

スープから作りました。

チャーシューと味玉も。

流石に鶏に産ませてはいませんが(笑)

と言うか何の話を・・・笑


では、本編をどうぞ。

 オーダーメイドで作った人形を、4体用意した。

種はもう蒔いた。

期間を完璧なまでに計算し、願いを人形に込めた。

後は、どう言う結末を迎えるか、見届けるのみ。

しかし、一つだけやらなくてはならない事があった。

非情に拙い事になった。

握り拳を強く握った。

もう家は調べてある。

狙うのは、吉野と言うマンション。

鍵の問題など、どうにでもなる。

密室は、密室にする直前が一番油断しているものだ。

しかし急がなければならない。



 オーソドックスな一軒家に、早朝の雀の鳴き声が聞こえる。

蓮見紫音は、眠たそうによろよろと歩いて来て、ポストの手紙や新聞を取り、家に入って行った。

入れ違いで眠そうな宅配員が、一つの小さな箱をポストに入れ去って行く。

このすれ違いが無ければ、果たして殺人は起きなかったのかも知れないと。

後悔できる者は、いなかった。



 ゲームは至高だ。

だからこそ時間を忘れると言うもの。

魅力的なものは、大抵時間と言う概念を忘れさせるものだ。

反動が後に来るのはしょうがない。

人間だから。

「吉野!」

 迂闊だった。

魅力が起きている振りすら忘れさせてしまうとは。

激しい不覚。

すみません擬態し忘れてました。

もう遅かった。

「お前には特別な問題を出してやる」



「500本のワイン瓶に1本、毒が入ったワインがある。それを1回の試飲で特定するのに必要なのは最低何人だ! 吉野!」

 先生だってこんなの解けないでしょ……。

無理難題を吹っかける数学の先生と、寝ていた翔太に呆れ、自業自得と傍観を決め込む事にしたが、翔太は両小指を絡め、手を口元に当ててからものの数秒もかからない内に姿勢を解いた。

「そのワイン、1滴入ってたら判る?」

「そうだ」

「9人だろ?」

 ざわつくクラスメイトとポカンとしているあたし。

何事も無かったかのように授業を再開したけれど、相当悔しそうねあれは……。



「何で答えが9人なの?」

 ふぁー眠い。

だからジャガーだろそれ止めて止めて止めて!

何でそんなに動物画像豊富なんだよ分かった答えるから止めて!

まだ震えている下半身に必死に力を入れて起き上がる。

暴力以上に暴力だろ。

……2の0乗から8乗の合計はいくつ?

「え?」

 急いで由佳はスマホの電卓を使って答えを511と弾き出す。

うん。

だからそう言う事。

「分かんないって!」

 裏拳痛いって!

何で女の子が裏拳なんてするの!?

ちょっとは自分で考えて欲しいが、宿題を毎回見せてもらっているから何も言えない。

……ムカつくんだあの問題。

 ワインとグラスに番号を振っといて、1のワインを1のグラス、2は2って。

それで3のワインは1と2のグラスに入れれば、後は分かるか?

「……2進法!?」

 そう言う事。

んで、9個のグラスを9人で一斉に飲む。

それで毒入りワインを飲んだ番号の人を2進法に換算。

数字を合計すれば分かる。



 それを一瞬で考えたの?

……徐々に翔太の推理力が、想像もつかない域に行っているのを感じた。

2つの信じられない事件を解決して、論理思考能力が……。

「でも実際にあんなのやりやがったら、俺は全部のワインを叩き割る」

 ……うん。

そうだね。

翔太なら絶対そうするよね。

能力は上がっても、翔太の芯は変わらなくて安心した。

そうしていつもの帰路。

あたし達が住んでいるマンションに差し掛かると、パトカーと人だかりが見えた。

何かあったのかな?

「俺達のマンションだよな? あれ」



「泥棒に入られたらしいわよ吉野さんの所」

「帰ってきてすぐだそうよ嫌ねぇ」

 え?

帰ってきてすぐ。

吉野さん……姉ちゃん!

俺は警官が止める間も無く、急いで4階までを駆け上がった。



 息を切らせ、マンションの4階に辿り着く。

優子さんがビエーと泣き叫んでいた。

いや、まあ聞こえていたんだけど……。

翔太が駆け寄るや否や、胸倉掴んで往復ビンタしてる。

「遅いわよ翔太怖かったのよどこほっつき歩いてたのよこのバカ穀潰し!」

「いででででであだだだだだ!」

 ……うん。

無事で良かった。

はは……。

そしてすみません倉田さん。

少しの間無視してしまって。

必死で優子さん宥めて頂いてすみません。



 強盗に入られたにしては、余りにも片付き過ぎているのが気になった。

リビングだって和室だって。

いつも通りの光景の中、俺達4人はテーブルについていた。

まさか君の家だったと倉田さんに驚かれたが、俺も姉ちゃんに何も無くて良かった。

……本人には死んでも言わないが。

両頬も激しく痛いが、姉ちゃんに何も無くて良かった。

いつか殺す。

「……帰って来てすぐ、誰かに縛られて、何か盗まれたみたい……」

 その、何かって何を盗まれたんだ?

貴重品の管理は全て姉ちゃんに任せている。

仕事帰りを狙われたのなら、手荷物が一番危ないと考えられる。

「……分からないんだ」

 ……はい?

「だって貴重品はあたしが全部持ってるし、それは全部無事。部屋だって綺麗なままなのよ!」

 もう1度自分の家を見回した。

食器……は100均。

冷蔵庫……持ち出されてはいない。

……後は調理器具?

「……我々が来た時のまま。かつお姉さんが家を出た時のままだ。犯人の顔も見ていない。何が盗られたかも不明」

 埋蔵金なんて無い……よな?

あるわけ無いでしょと姉ちゃんに突っ込まれる。

……まあ遺産は全部持ってってもらったしな。

なら一体何を?

何の為に?

「とりあえず失礼して後日お伺い致します。戸締りはしっかりと」

 間抜けな強盗犯もいたもんだな……。

だが、顔を見られていない間抜けな強盗犯と言うのが気になった。

気にし過ぎなら良いんだが……。

倉田さんの言う通り、戸締りなんかはしっかりしておこう。

「由佳ちゃん! 今日は泊まって!」

「えぇ!?」

 いや、戸締りしとけば大丈夫じゃないか?

って言うか、俺にやるみたいに暴力で解決すりゃ良いのに……。

「だってこいつじゃ頼り無いし!」

 本人目の前○rz。

「ここに泊まるの久し振りですね」

 ……小学生以来か。

少しだけ、遠い昔を思い出した。

秀介が浮かんで、すぐに消えた。


 あたしの料理には、拘りがある。

何をするにも、味見を欠かさない事。

一応プロの料理人(見習い)とは言え、油断してはいけない事を、武道を通して爺(父親)から教わった。

婆(母親)からは女は料理やと、訳の分からない事を教わった。

当時はふざけんなと思ってたけれど、今思い返せば、それが今の形を作っていた。

何をしてもダメと言われた翔太は、パズルや知恵の輪ばっかりやるようになっていた。

……色々あったけれど、あたし達は元気だから。

爺。

婆。

濃い口ソースの味見をする。

……うん。

いつも通りに調味料を作るって、やっぱり凄い。

キッ○ーマン。

そうして出来た、普通のお好み焼き(味はまあ、市販だから変わらない)を由佳ちゃんは美味しそうに食べてくれた。

 穀潰……翔太は普通とか言いやがったから十文字固めをかけておいた。

由佳ちゃんが手伝ってくれたから効率が良い。

もう一人、たまに来て笑っている子、有村君って子も昔はいたはずだったけれど、今日はいなかった。

「いででででギブギブ死ぬ死ぬ!」



 作るのが姉ちゃんなら、必然的に片付けるのは俺の仕事だった。

やらないと豊富な技が飛んでくるだけだから、やらざるを得なかった。

更に今日は由佳もいた。

2人のやくざに監禁されている気分だった。

そんな事を考えながら片付けを終え、由佳が差し入れと言って持って来てくれた食材を冷蔵庫に閉まって行く。

冷蔵庫の中には、何となく用途が分かる調味料から、レモスコ、ヌクマムと言った首を傾げたくなるような調味料が顔を出す。

姉ちゃんの趣味だ。

まあ、仕事と趣味が合っているのは良い事だと思う。

冷蔵庫以外にも、どこから買って来たのか調味料ケース(円筒の入れ物に、スパイス系の調味料が入ったものが50はあるのか)も、壁にずらりとかけられているのだから普通の家ではない。

そして風呂に入り、ゲームをして就寝。

……何も起きなくて良かったとは言え、顔を確認できなかった間抜けな強盗犯……か。

止めておこう。

俺がやるべきは、もうここに強盗が入らないように何が出来るのかを考える。

それだけ。



 あたしがベッドを使わせて貰って申し訳無かった。

断っても優子さんにゴリ押されてしまったから、大人しく従う事にした。

「由佳ちゃん、ありがとう」

 昔は良く泊まりに来ていた。

小6位からだろうか。

色々と意識するようになって、部屋に上がると言う事は無くなった

「こんな形で何て思ってなかったけど。 ……本当に色々あり過ぎた。あたしも、翔太も」

 有村君の事件だけじゃなかった。

翔太達は、本当に色々あったけれど、いつも楽しかった。

でも、姉弟は何も言わないから。

幼い頃から、2人だけで人生の困難を解決してきたのだ。

言う、言わないでは無い。

言わないのが当たり前。

姉弟の絆は固かった。

……姉弟の絆?

……違う。

多分、人は助け合って生きていくものと言う、当たり前の性質だけかもしれない。

その無機質な関係の中に、溢れんばかりの有機的思いが詰まっているのを感じた。

……目を閉じ、眠りに着く。

今思うと、束の間の休息だったのかもしれなかった。



 テーブルの上に、食べかけの麻婆豆腐が置いてあった。

「この時密かに幕は上がっていたのだ」

 テーブルに突っ伏している蓮見紫音の姿があった。

気になるのは、彼女が動かない事と、口から血が出ている事だった。

「悲しい連続殺人事件の幕が」

一部、本文を変更したりしています。

内容自体に変化はありませんのでご了承頂ければ幸いです。

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