違和感の正体
死亡推定時刻は、昨夜の午前2時から2時半の間。
死因は絞殺。
部屋のベッドで眠っている由佳と楓に感謝しつつ、いつもの格好で考える。
寝なければなんて、もう言ってる場合じゃない。
下では倉田さんが黒田さんと最上さんと一緒に待機している。
この間に、何としてでも殺害方法を考えるしかなかった。
容疑者は2人。
黒田さんか最上さん。
しかしそんな事、まるで意味を成さない事は分かっている。
方法が分からない限り、追い詰める事は不可能だから。
エレベーターが使用できない状況で起こった2つの殺人事件。
……他に思い出せる事は無いか……。
俺が最初の殺人事件で呼びに行った昨日の朝。
今日の朝。
常識に捉われるな。
そうだ……あの時……。
1つだけ。
本当に花弁が偶然指先に触れる位の僅かな穴。
あと少し。
その意味さえ分かれば!
「もうお昼なのね……」
「ふあー。ごめん眠くて」
煩い鐘の音に、目覚めた由佳と楓。
そんな事気にしなくても良いが、楓は服を着なさい。
話を聞く事も無く、楓は起きがけの紅茶を飲むための、紙コップを取り出していた。
……楓。
変わった開け方するんだな。
楓はカップの飲み口の方からではなく、持ち手の方から封を開けていた。
「ああ、これかしら。森田さんから色々教わったのよ。飲み口に手で触れるのは失礼だから……って。だから私はこう開けているわ」
勉強熱心なんだなぁ楓は。
エロいけど。
「メイドの鑑ですね」
はは……。
由佳は納得行かないみたいだ。
「あら、ありがとう」
下から開ける?
……そうか!
一刻も早く確かめる必要があった。
花畑から、花園塔を見た。
テトリスのzブロックが縦に重なった建物。
奇数階が左側、偶数階が右側。
そうか。
やっと分かった。
これが感じてた違和感だった。
繋げないと分からなかったのか。
ああもう堪らなかった。
何を思いついたのか。
私をきっかけにして思いついてくれたのなら尚嬉しい。
花畑を、花園塔を見上げ、今度はガーデニング用の小屋まで向かった。
楽しみ過ぎてどうにかなりそうだった。
思った通りだった。
だとすると、細かい所はアロマキャンドルで……。
アロマの香り。
おかしな所。
エレベーター。
僅かな違和感。
「何が分かったのかしら?」
今までよりきつく、抱き締められた気がしたが、今はそんな場合ではない。
ゆっくりと楓を引っぺがす。
犯人と、花蓮さん殺害の方法が分かったのだから。
「本当に!?」
まだ確信が持てなかった。
恵さん殺害の方法が残っていたから。




