走馬灯 ―終―
パーンッ
何かが弾けるような
ヘルメットをコンクリートに叩き付けたかのような
乾いた音で目を覚ました
ピッ ピッ
と、電子音が鼓膜を揺らす
きつい消毒薬の臭いが鼻をついた
体に軽く力を入れると全身に鋭い痛みが走る
目玉だけを動かして周りを見回す
俺は白い部屋に一人、ベッドの上に寝かされていた
窓の外から暖かく明るい光が差し込み
何やら騒がしい人の話し声や車の走る音が流れてくる
コン コン
とノックの音がすると
白いドアがガラリと音を立ててスライドされる
部屋に入って来たのは 仲の良い友人と両親だった
目が合う。と
暫しの沈黙の後に大きく息を吸う音が部屋の壁に染み込んでいく
俺の顔を見るなり母は泣き崩れた
友人が血相を変えて医者を呼びに行く
泣きじゃくる母を父が泣きながら抱き締めていた
目頭が熱くなり 鼻の奥がツンと痺れる
喉が低く鳴り、繋がれている呼吸器からヒュー ヒュー と苦し気な音が出る
鳩尾を押さえつけられているような感覚に陥り
もどかしさが込み上げてくる
しゃくりあげる自分の嗚咽が漏れ
あの時の自分と重なった
何時ぶりに本気で泣いただろうか?
親しい人の顔を見、声を聞いて
安堵する自分がいる
自分はまだ生きているのだと
まだ生きていても良いのだと
誰かに許されたかのような
そんな気持ちになっていた
止まらない涙がきつく巻かれた包帯に温かく滲んでいく
― 俺は… もっと生きたかったのに。
あの声が繰り返し頭の中で流れている
しゃくりあげる声はより大きく苦し気に聞こえた
―― 生きたい。
生きてみたい。
包帯に滲み、広がっていく暖かさを感じながら
心の底からそう思った。
遺書とかって、、書いてみて初めて気付くものがあると思うんですよね。
生きているうえで
死と向き合って初めて気付かされるものがあるんじゃないかと思って書きました。
ちょっと臭いですね(笑)
お恥ずかしい……