14.魔法教育編:魔力循環3
設定話は続くよ、どこまでも・・・・・
こういう話が好きな人っているのかと、いまさら心配中。
ちなみに、私は大好物です。
設定集を何度も読み直すタイプですので。。。
(シナリオは気にならない)
僕達の挑戦は続いていた。
既に、魔力循環の修練に挑戦してから3日目。
教官達が、そう簡単にできるものでは無いって言っていたのも無理が無いね。
基本的に、ブリアレス教官が判り易くやっている魔力循環を見ながら、僕達は自分の遣り方で魔力循環を試している。
どうやら、この辺りの術技は習うより慣れろでやる方が成功しやすいらしい。
とにかく、挑戦してみろとの事。
リサ教官にアドバイスとか尋ねてみたけど、そういう返事だった。
でも、いろいろ自分の遣り方でやっている内に、修練のやりかたにも個性が出てきている。見ていると面白い。
「こーやって、ばーんとやって、どーんと出して、だーっと戻す!。
駄目だ、戻らねーぞ」
完全な感覚派のアル。
「えとえと、さっきは凡そ3の魔力で放出して、4の魔力で戻そうとして失敗したから、もう少し戻す魔力に力を注いだらいいのかなあ」
理論派っぽいレラ。
「レオ、早く出来るようになるのだよ。そして、手取り足取り、アンに教えるのだ」
殴ってもいいよね派のアン。
「本当に、個性がでるなあ」
「そういうレオは随分と余裕のようだが」
あ、暇そうにしていたリサ教官だ。
「誰が暇そうだ、そういう事を言う悪い口は、この口か」
あれ?また口に出していたみたい。正直者って辛いよね。
「いえ、ちょっとやり方を変えてみようかなと思っていまして」
口元を摘まもうと腕を伸ばしてくるリサ教官に対して、僕は慌てて答えた。
「ほう、やってみせろ」
まだ、考えがまとまりきってなかったけど仕方がない。
僕は思いつきを試すことにした。
まずは、魔力を放出。これは特に精神を集中しなくてもできるようになっている。
放出する方向は真横。
放出された魔力は、必ず自分の体の中心から反対方向に向かって出る。
今までだと、この魔力を自分に戻すことができなかった。
なら、ここは発想の転換だ。
僕は放出された魔力の先端をその場に固定する。
お、できた。
…なんか、固定した魔力が塊になって大きくなっている。これは予想外。
風船に空気を入れたような感じだ。
おっと、いつまで固定できるか判らないから急がないと。
僕の発想の転換、
「戻ってこないのなら、自分で取りにいく」
僕は自分で固定した魔力の塊に向かって歩いた。
いつの間にか、体全体を包むようなサイズにまで大きくなっているけど。
塊の中に飛び込んで魔力を回収すれば……
変則的だけど循環したことになるよね?
魔力じゃなくて、僕が循環している気もするけど。
「お?」
体の奥が暖かくなるような不思議な感触がした。
それと同時に膨らんでいた魔力の塊が萎んでいく。
ゆっくりだけど確実に。しばらくすると魔力の塊は完全に消えた。
今までの様な魔力の消耗も、疲労も無い。
これが魔力循環の感覚なんだ。おおー。
成功した!と、感動しているのに、リサ教官から反応が無い。
「リサ教官、これも魔力循環の内に入りますよね?」
「あ、ああ。放出した魔力の回収に成功しているし、魔力の消耗も無いのだな?」
「はい!」
「なら、それは魔力循環に間違いない。間違いないのだが…」
リサ教官が頭を抱えている。どうしたんだろ?
あ、ブリアレス教官の所に行って相談し始めた。
やっぱり、正規のやり方じゃなかったのが駄目だったのだろうか。
結果が一緒ならいいと思うんだけど。
その後、何度か同じことを繰り返しているうちに、わかってきた。
魔力の消耗が無いから、いくらでも修練を続けられる。
魔力の放出と回収。この二つのやり方を組み合わせると、魔力の流れを操作できる。
むしろ、操作をするためには魔力回収の方が大事みたい。
最初は遅かった魔力回収の速度もだんだんと早くなってきた。
「あ、できた」
そして、魔力回収の放出と同じように集中しなくても出来るようになると、ブリアレス教官のやったように、その場から動かずに魔力を循環させることができた。
経路は一本しかないけど。
これなら、さっきみたいにリサ教官を困惑させることもないよね。
「レオだけずるいー。あたしにも教えろー」
アンが絡んできたので、精神集中に失敗。
失敗すると、循環させていた魔力が放出されて消える。
ああ、勿体ない。
「アン、邪魔」
「教えろ―教えろ―」
「どーやったんだ。俺にも教えろ」
アルまで加わってきた。
暑苦しい。教師役は教官達なんだから、そっちに教わって欲しい。
「レオくん、凄いね。どうやったらいいのか、教えてくれると嬉しいなあ」
レラに可愛く頼まれたら仕方がないね。
子供同士の方が、感覚も似ている筈だから教官《大人》達のやり方より参考になるかもしれないし。
「レオ、酷い」
何故かアンに詰られた。不思議。
─レオの魔力循環講座─
「まずは魔力を出す」
「「「ふむふむ」」」
「ぎゅっと空中に止める」
「「「……」」」
「止めたら、魔力の塊が大きくなるからそこに飛び込む」
「「「………」」」
「そうしたら、魔力を回収できる」
「「「…………」」」
「回収するコツを掴んだら、魔力の流れを操作して魔力循環の出来上がり!」
「「「できない!?」」」
何故か、皆、最初の魔力を放出して空中に止める段階で挫折した。
でも、魔力回収を意識することが大事だという事はわかってくれたみたいなので、よしとしよう。
─異能者・アン─
「大体、レオだけずるいのだよ」
「ずるいってことは無いと思うよ。アンちゃん」
アンは不機嫌だった。
不機嫌だったので、レラの部屋で愚痴をこぼす。
迷惑極まりないが、それを受け入れるところが、レラという少女のいい所でもあった。
「レラにだけ優しいし」
「そんなことないよー」
ことんと首を傾げるレラ。柔らかい金髪のポニーテールが揺れる。
アンからみても可愛かった。
「あざといくらいに可愛いし。この『萌え要素』持ちめー。」
「ありがとう?」
アンちゃんって、時々判らない事、言うよね、とレラは思った。
一応褒めてくれているらしいから礼を言う。可愛い。
「でも、そんなに焦らなくていいよー。リサ教官だって、もっと時間が掛かるのが普通だって言っていたし、ね」
宥めるレラ。
「レラの優しさが五臓六腑に染み渡るのだ。それに比べてレオのやつめー」
そして、アンは散々愚痴を言った後、寝落ちした。
「ごめんね、レオくん。わたしじゃ運べなくて」
「大丈夫だよ。ごめんね、アンが面倒をかけて。レラのベッドの上でいいのかな?」
「うん、アンちゃんの部屋まで運ぶの大変だし」
仕方ないので、レオを呼んでアンをベッドの上に運んでもらう。ちなみにアルは既に爆睡中で起きなかった。
「こいつも、寝たら起きないしな…あれ?」
「どうしたの?レオくん」
「アン、寝ながら魔力循環やってる……」
「えぇ?!」
「本当に、訳の分からない生ものだよね、アンって」
呆れたように語るレオ。
二人とも、どっちもどっちって気がするけど。とは言えなかったレラだった。可愛い。
─本日の教官達─
「一巡りしない内に魔力循環に成功とは…」
「むしろ、問題は魔力操作の方であろう」
「空中で止めていたな」
「ああ、止めていた」
魔力は流動し拡散するものだ。それが世界の理である。
流れを操るのではなく、流れを止める。
それがどれだけ難しい事か。やってのけた本人は判っていないようだったが。
「魔力操作の制御力は、そのまま魔術の制御力に反映する。魔力を止めるほどの制御力で魔術を制御した場合、どうなることか」
魔法という法則を知る事で、魔術という力が行使される。
行使に必要な代償が魔力で、そのために魔力の量と制御力は魔術の威力と精度に直結するのだ。
「共振効果が一番怖い。完全に停止させられるという事は、重ね掛け効果を完全に発揮できるという事。
理論上でしか無いと思っていた現象が、現実に起きる可能性があろうとは」
「自傷事故に繋がる危険が高くなる。とにかく魔法障壁を完璧に覚えさせる必要があるな。
しかも、常時展開は当然として、高強度自動展開まで出来ないと、魔法の基本すら教えることが危険だ」
「常時展開はともかく、高強度自動展開は最終年に覚える術技であるが…
儂がおる間に覚えさせるしか無いであろう」
「半年で、か。クレハ様に頼んで貴様の任期を伸ばしてもらうべきか…」
「状況によるであろう」
「ああ、周囲の被害を防ぐ方法も考えねば。ん、なら、いっそのこと貴様も担任教官にしてもらうべきか。魔法障壁の一人者で、他に手の空く者など思いつかないし」
「儂も、部隊を残してきておるのだが」
そう言いながらも、満更嫌そうでも無いブリアレス教官だった。




