ラッキー
俺の地元はそれなりの都市だった。
何でも数十年前に都市計画に基づいて、建てられた計画都市というものに当たるらしい。
そのために、地元には工業団地とか軍需工場とかが多く、働き口もそれなりにあるところだった。
だから、俺の地元は地方でもそこそこ規模のある都市だったのである。
そんな都市にこんなところがあるとは俺は知らなかった。
回りはアパートはあるものの、山とか河川とかが流れていて、とても都市って感じはしないところ。
そんなところに俺は飛ばされたのである。
しかも、大隊からつれられてきて、家までの距離がどれくらいかも知らない状態。
本当にその時は絶望するしかなかった。
元々は家近くで徒歩で通うことを想定していたから尚更である。
「おい、ついてこい。」
「あ、はい。」
俺は上司の言葉でやっと精神を取り戻した。
言われた通り上司の後ろについて歩いていく。
上司はそのまま近くの建物の中へと入った。
その建物には○○洞事務所と掛かれていた。
日本で言う区役所みたいな場所だった。
俺はどうしてこんなところにと思ったが、上司は歩みを止めずにそのまま階段を上がっていく。
俺は黙々とその後に着いていった。
そして、2階に上がって、ある扉の前に止まった。
表札を見るとそこには○○洞予備軍事務所と書かれていた。
「ここが君の働く場所だ。」
「はい!」
そう言って、上司は扉を開いた。
すると、そこには縦長な部屋があった。
大体12メートルくらいはなりそうな部屋。
そこにパソコンデスクが2つと食卓みたいなテーブルが一つ。
そして、回りには鉄のロッカーが3つくらいある。
奥の方は少し横長な空間があったものの、そこはほぼデッドスペースになっている。
そして、ドアがもう一つだけポツリとあるところだった。・
あまりにも粗末な環境に、俺はこんなものかと思った。
だって、大隊の人事課よりはましだったのである。
「う、は!忠誠!お疲れさまです!」
中から声が聞こえた。
というか、兵の一人が上司に敬礼をしてきた。
「ああ、お疲れ。こいつがお前の先任だ。」
「はい、よろしくお願いいたします!」
俺は軽く自己紹介をした。
どうやら、先任はまだ状況がつかめてない様子だった。
何といか寝起きという感じだった。
「はああ......お前また寝てただろう......」
「いえ!断じてそんなことは!」
一応、否定する先任だったけど、誰がどう見ても寝てそうだった。
上司は慣れたことのようにしているから、これはいつものことのようだ。
俺は黙ってその光景を見ていたけど、特に大事になるとかはなかった。
先任に小言を一つ二つくらいしてからのこと。
「よし、じゃあ後は二人で話してくれ。」
それだけを言って上司は奥の部屋へと消えていった。
奥の部屋は上司の部屋らしい。
それからは先任と色々と話をした。
俺の出身地とか、どこの高校の出身なのかとか。
色々質問されたものを普通に返していく。
そんな会話の中で不思議なことに、仕事に関する内容は全くなかった。
俺がその点について質問すると。
「それがないんだよな......」
「は、はあ......どういう意味でしょうか?」
要領を得ない先任の言葉に俺は聞き返した。
それってどういう?
「だから、仕事がないんだってここ。」
「え?」
そんなことある?と思った。
そもそもこれから何の仕事をすることになるかは分からないけど、そんなことはないと思ったからである。
だって、仕事があるから、こんな役職が存在している訳で......
「今日は全部処理したからな。明日から教えるって、言ってもそれも直ぐ終わるだろうけどな!」
本当にないんだ......
俺は先任の言葉にあ善となった。
そんなことあり得るんだ。
「皆こんな感じですか?」
「いや、そうでもねえ。この地域が特集なんだ。」
何もこの洞隊が位置している地域はまともな社会人しかない上、人口も少ないらしい。
それで洞隊のもっとも大きい仕事をしなくても良いとのことだった。
「おめでとう!こんやろう!お前はこの地域で一番クル(蜜)洞隊に入ったんだよ!」
笑いながら言う先任の口許には拭ききれてないよだれがピカピカと光っている。
俺は本当にラッキーだった。




