表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/48

第47話 土の神殿崩壊から1週間、そして──

仲間が次々に倒れた絶体絶命の中、世未の秘めた力が覚醒。

圧倒的な力で敵将ローテンスを退け、ついに土の石を手に入れる。

だが神殿崩壊の中、世未だけが瓦礫の中に取り残されてしまい──。

 ルロンドたち3人は、モンスターとの闘いを極力避けながら、警戒して街へと戻る。

体力こそ限界寸前だったが、休むことなく国王に救助要請をしに城へ赴く。


「なんと、土の神殿が崩れたと!?」

「はい、しかも仲間がまだ瓦礫の下に居る可能性が高いので、救援をお願いしたいのです」

「わかった、急いで手配しよう。樹木の様子も気がかりだ」

「樹木のエネルギー供給は止まったままなのですか?」

「そうじゃの……。お主らも仲間のことが気がかりじゃとは思うが、体を休めなさい」


 謁見の間で話を終えた後、戦いの疲れもあってかルロンドはふらついている。


「アタイたちも、一度宿屋で休もう。今できることは、もうやりきったさ」

「あたしがもっと回復できれば、皆辛い思いをすることがなかったのかも……」

「悔やんでいても仕方ない。ローテンスは強すぎた、人類を越えた力を持っている。

(そのローテンスの力を越えた世未の力もとてつもないが……あの力については、今後サージェと詳しく調べていかなければな……世未、無事でいてくれ……)


 重い足取りで宿屋へ着き、体を休めることに専念した。

魔力を回復出来たユリアは、ルロンドとアディの治療に取り掛かる。

回復自体はそれほど時間を取らないため、怪我の治癒もすぐに終えることが出来た。


「これからまた神殿のあった場所まで行くことになる。ユリア、世話になったな……。今回のことは俺たちが片付けるから、帰ってもいいぞ」


 ユリアは目を見開いて、首を横に振った。


「そんなの無理だよ……。世未ちゃんがあんな目にあってるのに、あたしだけ帰るなんてできない!」

「……本当に一緒に来るのか? 辛い思いをすることになるかもしれないぞ?」

「大丈夫! あたしだって、少しは皆の役に立ちたいの! 学校はあるけど、それ以外の時間で絶対に関わらせて。お願い!」

「アディも賛成か?」

「ユリアは何言っても聞かないと思うよ? アタイは何の問題もないよ」

「わかった。それじゃあ準備を整えたら向かおう」


 街の武器屋で新品が売っていたため、それぞれ新調した。

道具屋ではアイテムの補充を念入りに済ませた。

もう一度、土の神殿へ向かうのであった。


 一方その頃、ジョーたち3人は1つ1つ岩や瓦礫を退ける作業に専念していた。

戦闘で体力を削られた後の作業のため、中々進まないのが現状だった。


 しかし、そこに土の国から救援部隊が到着して、大人数での撤去作業が始まる。

それに加えて国の兵から物資を頂き、体力を回復することが出来た。


「よし、俺は作業に戻るよ」

「待って。ジョー、全然休んでないじゃない? それじゃ体力がもたないわよ?」

「この瓦礫の下にいる世未と比べれば……俺は全然大丈夫だよ……

今だって痛みで苦しんでいるかもしれないのに、動かないなんて俺にはできない」

「ジョー兄ちゃん、いつの間にそんなに世未お姉ちゃんのこと好きになったの?」

「なっ!? 今はそんなこと言ってる場合じゃないっつーの!」


 顔が真っ赤になるジョーを見て、ラトとディーンは笑い出す。


「良かった、いつものジョーに戻ったね。心配してたのよ♪」

「悪かったなっ!」


 そう言い残し、兵たちと一緒に作業へ戻ったのだった。


 


 3日後、土の国の救援部隊がモニタールームらしき残骸を見つけたとの知らせがあった。

その情報を聞きつけ、ルロンド隊長はディーンと一緒になって、足場の悪い中その場所まで向かう。


 見る限り、魔導装置の破損パーツや絡まった配線などが散乱し、現場は酷い有様だった。

更に奥まで掘り出したところ、樹木の太い根っこがあったため、モニタールームであることは間違いなさそうだった。


 周辺の瓦礫をどかす作業を一通り終えると、今度はモニタールームの部屋を再構築させる工事も始めることとなった。

だが、時間は待ってはくれない。焦る気持ちを押さえながら、彼らは手を止めることなく瓦礫を撤去し続けた。


 魔導装置や配管の設置も兵たちと皆で行うことにしたのだ。

瓦礫だけでも相当な量を取り除かなければならないので、モニタールームの復旧には時間がかかりそうだ。


 ルロンドは無言で手を動かし続けていた。

その目には、疲れよりも強い焦りと祈りが宿っていた。


 そして、土の神殿が崩壊してから1週間を迎えた。

皆交代で作業をしたり、休んだりを繰り返していた。


 瓦礫もかなり少なくなってきて、地面が見える程になっていた。

そんなとき、1人の兵の大きな声が響いた。


……静けさが戻った現場に、ひときわ大きな声が響いた。


「おーい!人の手が見えたぞ!」


 周囲が一瞬静まり返り、誰もが息を飲んだ。


……次の瞬間、皆が一斉に駆け出す。

手、肩、そして見慣れた魔道服の袖。


「世未……!」


 誰かがそう叫んだ瞬間、救出の作業にさらに力が入る。


 1人の兵が呼んだ後、皆が駆け付ける。

なるべく丁寧に周辺の物を取り除く。


 すると、少しずつ足や肩が見えてきた。


 だんだん全身が見えるようになった時、発見されたのはやはり世未の姿だった。


 だが──その瞳は、まだ閉じたままだった。



ここまで読んでくださったあなたに、心からありがとうを届けたいです。

登場人物たちの想いを、少しでも感じてもらえていたら嬉しいです。

世未の運命と、仲間たちの願い……ぜひ見守ってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ