第47話 土の神殿崩壊から1週間、そして──
仲間が次々に倒れた絶体絶命の中、世未の秘めた力が覚醒。
圧倒的な力で敵将ローテンスを退け、ついに土の石を手に入れる。
だが神殿崩壊の中、世未だけが瓦礫の中に取り残されてしまい──。
ルロンドたち3人は、モンスターとの闘いを極力避けながら、警戒して街へと戻る。
体力こそ限界寸前だったが、休むことなく国王に救助要請をしに城へ赴く。
「なんと、土の神殿が崩れたと!?」
「はい、しかも仲間がまだ瓦礫の下に居る可能性が高いので、救援をお願いしたいのです」
「わかった、急いで手配しよう。樹木の様子も気がかりだ」
「樹木のエネルギー供給は止まったままなのですか?」
「そうじゃの……。お主らも仲間のことが気がかりじゃとは思うが、体を休めなさい」
謁見の間で話を終えた後、戦いの疲れもあってかルロンドはふらついている。
「アタイたちも、一度宿屋で休もう。今できることは、もうやりきったさ」
「あたしがもっと回復できれば、皆辛い思いをすることがなかったのかも……」
「悔やんでいても仕方ない。ローテンスは強すぎた、人類を越えた力を持っている。
(そのローテンスの力を越えた世未の力もとてつもないが……あの力については、今後サージェと詳しく調べていかなければな……世未、無事でいてくれ……)
重い足取りで宿屋へ着き、体を休めることに専念した。
魔力を回復出来たユリアは、ルロンドとアディの治療に取り掛かる。
回復自体はそれほど時間を取らないため、怪我の治癒もすぐに終えることが出来た。
「これからまた神殿のあった場所まで行くことになる。ユリア、世話になったな……。今回のことは俺たちが片付けるから、帰ってもいいぞ」
ユリアは目を見開いて、首を横に振った。
「そんなの無理だよ……。世未ちゃんがあんな目にあってるのに、あたしだけ帰るなんてできない!」
「……本当に一緒に来るのか? 辛い思いをすることになるかもしれないぞ?」
「大丈夫! あたしだって、少しは皆の役に立ちたいの! 学校はあるけど、それ以外の時間で絶対に関わらせて。お願い!」
「アディも賛成か?」
「ユリアは何言っても聞かないと思うよ? アタイは何の問題もないよ」
「わかった。それじゃあ準備を整えたら向かおう」
街の武器屋で新品が売っていたため、それぞれ新調した。
道具屋ではアイテムの補充を念入りに済ませた。
もう一度、土の神殿へ向かうのであった。
一方その頃、ジョーたち3人は1つ1つ岩や瓦礫を退ける作業に専念していた。
戦闘で体力を削られた後の作業のため、中々進まないのが現状だった。
しかし、そこに土の国から救援部隊が到着して、大人数での撤去作業が始まる。
それに加えて国の兵から物資を頂き、体力を回復することが出来た。
「よし、俺は作業に戻るよ」
「待って。ジョー、全然休んでないじゃない? それじゃ体力がもたないわよ?」
「この瓦礫の下にいる世未と比べれば……俺は全然大丈夫だよ……
今だって痛みで苦しんでいるかもしれないのに、動かないなんて俺にはできない」
「ジョー兄ちゃん、いつの間にそんなに世未お姉ちゃんのこと好きになったの?」
「なっ!? 今はそんなこと言ってる場合じゃないっつーの!」
顔が真っ赤になるジョーを見て、ラトとディーンは笑い出す。
「良かった、いつものジョーに戻ったね。心配してたのよ♪」
「悪かったなっ!」
そう言い残し、兵たちと一緒に作業へ戻ったのだった。
3日後、土の国の救援部隊がモニタールームらしき残骸を見つけたとの知らせがあった。
その情報を聞きつけ、ルロンド隊長はディーンと一緒になって、足場の悪い中その場所まで向かう。
見る限り、魔導装置の破損パーツや絡まった配線などが散乱し、現場は酷い有様だった。
更に奥まで掘り出したところ、樹木の太い根っこがあったため、モニタールームであることは間違いなさそうだった。
周辺の瓦礫をどかす作業を一通り終えると、今度はモニタールームの部屋を再構築させる工事も始めることとなった。
だが、時間は待ってはくれない。焦る気持ちを押さえながら、彼らは手を止めることなく瓦礫を撤去し続けた。
魔導装置や配管の設置も兵たちと皆で行うことにしたのだ。
瓦礫だけでも相当な量を取り除かなければならないので、モニタールームの復旧には時間がかかりそうだ。
ルロンドは無言で手を動かし続けていた。
その目には、疲れよりも強い焦りと祈りが宿っていた。
そして、土の神殿が崩壊してから1週間を迎えた。
皆交代で作業をしたり、休んだりを繰り返していた。
瓦礫もかなり少なくなってきて、地面が見える程になっていた。
そんなとき、1人の兵の大きな声が響いた。
……静けさが戻った現場に、ひときわ大きな声が響いた。
「おーい!人の手が見えたぞ!」
周囲が一瞬静まり返り、誰もが息を飲んだ。
……次の瞬間、皆が一斉に駆け出す。
手、肩、そして見慣れた魔道服の袖。
「世未……!」
誰かがそう叫んだ瞬間、救出の作業にさらに力が入る。
1人の兵が呼んだ後、皆が駆け付ける。
なるべく丁寧に周辺の物を取り除く。
すると、少しずつ足や肩が見えてきた。
だんだん全身が見えるようになった時、発見されたのはやはり世未の姿だった。
だが──その瞳は、まだ閉じたままだった。
ここまで読んでくださったあなたに、心からありがとうを届けたいです。
登場人物たちの想いを、少しでも感じてもらえていたら嬉しいです。
世未の運命と、仲間たちの願い……ぜひ見守ってください。




